第5話 訓
……で、現実問題が……。
ぼくが運転するべき車…そう…車種です。
あたりまえですが、ふつうの普通車です。
いわゆる、ワンボックスカーと呼ばれるファミリーカーですね。
ちなみに、けんじの家の車です。
けんじとは、中学からの…いえ、小6の終わりくらいからの友達です。
不思議と、けんじとは、大の仲良しです。
けんじは、ぼくがアウトローしても、友達でいてくれた大切な親友です。
ぼくは、彼のおかげで、今日まで、ぼくらしく生きて来れた…と言っても、過言でないくらいに……
感謝しています。
…おっと?
話しを戻しましょう。
…で、普通車ですが、シートもたくさんあって、スゴイです。
ぼくの車には、運転席しか、シートを装備していないから、驚きです。
これだったら、6人は、余裕で乗れるでしょう。
車高にしても、めちゃ高いです。
運転席に座ると、「トラックか?」というくらいに、視線が高いです。
視界も、かなりあります。
ちょっと、コワイくらいですね。
そして、サイドミラーが、良く見えます。
しかも、スイッチひとつで、調整できます。
いわゆる、「電動ミラー」というやつですね。
しかも、ミラーの折りたたみもできます。
ほんとに、スゴイです。
ぼくのセブンのミラーは、「ビタローニ」という、見た目カッコいいミラーなんですけど、あまり視界は、よくありません。
なにしろ、ビタローニは、小さいですからね。
車仲間の間では、「ベタローニ」と、呼ばれていますね。
ベタッと、ボディーに張りついている感じから、そう呼ばれています。
もちろん、手動です。
格納もできません。
…おっと?
すみません。
また、脱線してしまいました。
…で、この普通車ですが、シートもフワフワです。
いつもは、フルバケで完全にホールドされているから、ふしぎな感じです。
そして、足まわりですが、やはり、フワフワです。
フワフワですが、ちゃんと曲がります。
普通車…スゴイです。
…でも、まだ問題があるのです。
最大の問題が……。
それは…オートマなんです!
初めてですよ!
教習所でも、オートマの仕組みだけしか、教わりませんでした。
ゲームみたいな、シミュレータでしか、扱ったことがありません。
どうしましょう……。
オートマチック……シフトノブがないんです。
オートマのレバーは、あるんですけど…
なにやら、英語で表記されています。
…いちおう、習ったから、意味は、わかるんですけど……
ちょっと、わからないものもあります。
「オーバードライブ ON/OFF」
……???
なんとなく、意味は、わかります。
わかりますけど…使用方法がわかりません。
まぁ…わからないモノには、触れないことがベストでしょう。
このボタンには、アンタッチャブルですね。
では、オートマですが…
ギアチェンジが自動です!
その意味のまんまです。
クラッチもありません!
信じられますか?
ぼくの左手と左足は、なんの仕事をすれば、いいのでしょうか?
ヒマです!
おまけに、サイドブレーキが、クラッチペダルのところに、あります。
(………なんで???)
思わず、踏んでしまいそうになります。
気をつけて、運転しましょう。
走行中に踏んだら、大惨事です……。
想像したら、少し笑いますけど…。
いえいえ…。
マジメにいきましょう!
みなさんの命を預かるのですから。
そして、パワーステアリングです。
これは、スゴイですね。
ハンドルが軽いです。
…でも、なんか怖いです。
軽すぎ!
そして、窓もパワーウィンドウです。
これも、スイッチひとつで、窓が上下します。
楽ちんぽんです。
ただ…欠点としては、微調整が難しいのと、キーをオンにしていないと、作動しません。
ちょっと、面倒くさいです。
しかし、最近の車は、スゴイですね。
ほとんどが、スイッチひとつで操作できます。
手動の部分でも、パワーアシストがあります。
未来の車は、ほんとすべてが自動になるんじゃないかと……。
まぁ…ご託は、いいでしょう。
オートマ初体験です。
勉強のつもりで、がんばります。
では、いざ出発!
……って、………ちょっと待て!
なぜか、助手席に、女子大生という人種が………。
混乱するぼくとは、ウラハラに……
けんじがニヤニヤしています。
そのニヤけた表情に、一瞬…イラッとしましたけど……。
今日のぼくは、運転代行業者でした。
大人になりましょう。
大人のフリをいたしましょう。
けんじ曰く。
「くじ引きで、決まったから。」
なんだと?
くじ引きで、席を決めただと?!
中学生か?!!
まぁ…仕方がありません。
合コンですから……。
仕方がないけど…めちゃくちゃ緊張するでは、ありませんか!
まぁ…オートマだから、エンストする心配は、ありませんけど…。
でも、こんな至近距離に、女子大生がいる…というのは、なんか落ち着かないです。
おねがいですから…運転中に、襲わないでくださいね!
…まぁ、今は、そんな心配は、無用でしょう。
そんなことをしたら、自分たちの命もキケンですからね。
そこまでは、女子大生も無謀ではないでしょう。
……信じたいです。
では、気を取り直して、出発しましょう。
…ちょっと、待ってください。
オートマの運転中ですけど…ぼくの左手は、仕事がほとんどありません。
とっても、ヒマです。
左手の置き場所がありません。
オートマのレバーは、ハンドル横にありますから…。
いわゆる、コラムシフトというやつですね。
なので、ぼくは…この態勢を取ります。
オートマ初心者らしく、両手でハンドルを握ります。
教習通りに、ハンドルを握ります。
10時10分の位置で!
ぼくのうしろの席のけんじが笑っています。
(ほっとけ!)
こうじくん。
あなた…いつの時代の人ですか?
もう…車は、最先端技術の結晶ですよ。
自動ブレーキアシストなんて、あたりまえです。
高速道路の自動運転システムも、かなり確立されていますよ。
ほんとに、アナログな人ですね~。
まぁ…きらいじゃありませんけど。
わたしも、どっちかというと、アナログ派ですからね。
それよりも、はやく出発しましょうよ。
みなさん、待ちわびていますよ。
では、次回は、初めてのこうじくんと女子大生のカラミが、勃発します。
さて…こうじくんは、どうする?
お楽しみに。