第43話 告(3)
あの日……
初めて会ったあの日だって、里美さんは、ぼくに、寄り添ってくれました。
ぼくの運転が、ていねいでやさしい……と、言ってくれました。
S14のシルビアが、大好きということを教えてくれました。
免許取得に、がんばっていることを教えてくれました。
さっきだって、車オタクになったきっかけを教えてくれました。
カルソニックが、大好きなことを教えてくれました。
スーパーGTが、大好きなことを教えてくれました。
いっぱいいっぱい…………
里美さんは、自分のことを ぼくに、教えてくれました。
………そして、今………
ぼくを好きになったことを 教えてくれました。
ああ…………………………。
ぼくは、今…………
はじめて、里美さんを真正面から、見ているような気がします。
だからこそ………
ぼくも、素直な気持ちを 里美さんに、お伝えしましょう。
…………いえ。
伝えなければ、ならないのです。
「………里美さん。
ぼくは、あなたが 好きです。
大好きです。
そして、あなたのことをもっと……
たくさん………知りたいです。
ぼくと、付き合ってください。」
ぼくは、言葉にすることが、出来ました。
ぼくのほんとうに、想っていることを言葉にすることが、出来ました。
これも、すべて……
里美さんのおかげですね。
ほんとうに、ありがとうございます。
「………ほんとうですか?」
ぼくの背中には、はっきりと、里美さんの言葉が聞こえます。
「ほんとうです。」
「……ほんとのほんとに?」
「ほんとのほんとうです。」
「……ほんとのほんとの……ほんとうに?」
……ちょっと、うっとうしいですが……
里美さんならば、かわいく思えます。
ぼくは、里美さんの腕を 優しくほどいて…………
彼女を真正面から、抱きしめました。
「ほんとうです。」
「……………。
うれしい……です。」
里美さんは、泣き出してしまいました。
ぼくは、ただ………
やさしく………
壊れないように………
やさしく……里美さんを抱きしめています。
どのくらいの時間が、経ったのでしょうか?
………3分?
………それとも、30分?
もう……よくわかりません。
ただ………だいぶ、里美さんも、落ち着いたのか、すすり泣きがおさまってきたようです。
「大丈夫ですか? 里美さん?」
「えへへ………。
………先輩………
わたしのこと……
あの日のように……カヤ…って、呼んでください。」
「……………。」
なんとも、男泣かせな………
……いえ。
オタク泣かせなことを この娘は、言うのでしょう。
「ズギャンッ!!!」
もう……ぼくの「理性」という針は、
完全に、振り切れました。
レッドゾーンを はるかに……。
そして、その瞬間に、粉々に砕けました。
砕けちり……
なにかが………
新しいなにかが……芽生えたようです。
「……カヤ……。
ありがとう。大好きだよ、カヤ……。」
ぼくは、里美さんのアタマを やさしく撫でながら、その名を口にしました。
うん。うん。
よかったね。
こうじくん。
よかったね。
カヤちゃん。
………でも、ちょっと!
ふたりとも、忘れてません?
まぁ……いいです……。
さて、次回は、
お付き合いすることになったふたりです。
……ですけど、
こうじくんには、まだまだ難関が……
お楽しみに。




