第4話 悟
…で、そのバーベキューの日です。
ぼくは、あまりの空腹で、まったく思考がまわっていなかったのです。
「バーベキュー」という甘い言葉の前に……あった言葉を………。
それは、「合コン」という言葉です。
3対3の合コンです。
どうも、友達のひとりが、どうしても、来れなくなったみたいで…。
その代役で、呼ばれました。
ピンチヒッターというやつですね。
理解しました。
そのピンチヒッターに……
餓死寸前のぼくに……
運転手として呼ばれました。
まぁ…そのことは、いいです。
こっちは、タダでバーベキューが食べられるから、そのくらいの奉仕活動は、なんの問題もありません。
お酒は、飲めませんけど……
代わりに、お肉をたくさん食べるぞ~!
これで、また1週間くらいは、生き延びることができます。
ほんとうに、感謝します!
…で、問題は、こっちですよ!
「合コン」……大学で、よく耳にした言葉だったですけど……。
ぼくは、一度も合コンに参加したことがないのです。
あたりまえです。
オタクなぼくが、合コンに呼んでもらえるわけがありません。
それ以前に、大学には、数えるほどしか友達がいません。
その友達は、ぼくが女性恐怖症だということを知っていますから。
ですが…今日……この日です。
相手は、女の子ですよ!
女の子…その存在は、知っています。
昔…後悔しましたから……。
ぼくたち男とは、違う種族。
身近では、お母さんと妹が…その「女の子」です。
まぁ…ふたりは、家族という関係がありますから、対人関係において、あまり支障は、ありません。
若干、妹が…ぼくをオタクとして、乱雑に扱いますけど、それほどヒドくは、ありません。
だから、ふつうに接することができたのですけど………。
今回は、他人です。
友達でもなんでもありません。
顔見知りでも、ありません。
初対面のアカの他人の大学生の女の子です。
…くどくなって、すみません…。
いわゆる「女子大生」というやつですよ!
「女子大生」…ウワサは、聞いたことがあります。
高校を卒業した…言い変えれば……
高校という檻から脱走した…いえ、出所した女子高生。
ただでさえ、暴虐武人な女子高生が…
その「カセ」を外されて、野に放たれた存在。
現存する女子高生よりも、さらに数段パワーアップした存在。
スーパーサイヤ人にも、匹敵する存在。
…ウワサでは、法治国家であるはずの日本において……
日本国憲法が適用されない…治外法権生命体……。
想像するだけでも…恐ろしいです。
その生態は、ぼくが考えている以上に、危険な存在でした。
最近…友達の友達というやつが、その女子大生という存在に抹殺された!
…と、聞きました。
同情します……ぼくも、昔に………
おっと?
その話しは、おいておきましょう。
…で、そいつは、そのショックで、3か月ほど、大学に来れなくなり、留年の危機に面している…と。
しかも、本人の存在意義を完全に破壊されて……廃人状態だと……聞きました。
ゾッとします!
他人ごとでは、ありません!
平然と人の人生を狂わせるほどの存在。
はっきり言って、怖すぎです。
まだ…お岩さんの方が、人の話しを聞いてくれそうな気がします。
それからは、ぼくも、いっそうその存在には、注意していました。
おそらくは、ぼくたち…「オタク」と呼ばれる存在には、容赦なく牙をむいて、襲ってくるのです。
世の中は、弱肉強食ですから…仕方がありませんけど……。
その理由は、明白で…
女子大生にとって、オタクとは、
「ただ気持ち悪い存在」……
「ただひたすらに気持ち悪い存在」……なのです。
そんなにキライなら、無視するとか、関心を持たなければ、いいかと、思うんですけど…。
そう…うまくは、いきません。
女子大生たちは、獲物に対して、徹底的に攻撃してきます。
群れをなして、攻撃してきます。
そして…容赦なく、踏み潰すのです。
まるで、その行為が…正義であるかのように……。
ぼくたちオタクは、ただ…好きなことにハマっているだけです。
別に、女子大生に対して、敵意もなければ、関心もありません。
はっきり言うと、関わりたくないのです。
そう言うと、語弊に聞こえますが…
ただ…お互いに、距離を保って、不用意に接しなければ、いいのです。
それなのに…女子大生は、平気でぼくたちオタクを抹殺しに、やってきます。
まるで…ゴキブリを踏み潰すように…たのしそうに……。
学内で、すれ違うだけでも、その視線は、怖いです。
オタクを人として認めない!
死ね!
そういう視線を平気で、ぶつけてきます。
ほんとに、恐ろしいです。
授業のとき、ぼくは、絶対に女子大生という人種には、近づきません。
席は、いちばん前のいちばん真ん中に座ります。
この位置は、女子大生がキライな席らしく、ニアミスの確率がいちばん低い席なのです。
かなり安心できる席でした。
まぁ…そのおかげで、授業に集中できたし、成績も良くなりました。
両親からの圧力も、柔らかくなりました。
ある意味、感謝しないといけない存在なのですが……やはり、怖いです。
その……視線が………。
ぼくの存在意義のためにも、絶対に関わっては、いけない存在だと、確信しています。
ぼくたちオタクにも、悪いところは、たくさんあるでしょう。
でも、ぼくたちは、基本的に平和主義です。
争いごとは、好みません。
……というよりも、争えば…必ずこちら側が滅ぼされると、わかっていますから。
だから…関わりたくないのですけどね…。
また、そういう態度も、あちら側をエキサイトさせる原因なのでしょうか?
……わかりません……。
まさに…負のスパイラルですね。
解決策がありません。
だから…ぼくも、女性恐怖症になってしまったのですけど…。
まぁ…その原因は、中学のときにあるんですけど……。
まぁ…トラウマ…というやつですね。
それ以来…高校では、女の子と話した記憶は、ありません。
業務連絡の「ハイ。」程度です。
そんな…ぼくが……今さら合コン?
まぁ…仕方がありません。
すでに、この場所に立っているのですから…。
本音としては、タダバーベキューには、かないません。
空腹にも、そろそろ限界です。
生命の危機を感じました。
ここまでくれば…餓死するか?
…女子大生に殺されるか?
ですけど…ぼくは、まだ死ねないのです!
セブンをひとり残して、死ねないのです!
死ぬときは、あの子といっしょだと、心に誓っています。
それに、今回…女子大生の相手は、彼らがしてくれるでしょう。
(おねがいしますね。)
…では、ぼくは、ドライバーとして
…運転代行業者として……
初体験されてもらいましょう。
合コンというやつを!
まぁ…ぼくも、20歳だし…
それなりの人付き合いができるということを……
少しは、オトナになったところを……
友達にも、お見せしましょう。
ぐだぐだと、色んなことを考えていますね……オタクって。
はっきり言って、笑えます!
まぁ…オタクには、オタクの…
女子大生には、女子大生の…
言い分があるのでしょうね。
それがわからないから、争うのですよ。
話し合わないと…。
…って、それができれば、誰も苦労は、しないね。
しかし…浩司くんの女子大生像には、笑います。
そういう女子大生もいるけど、
ふつうの女子大生だって、いるんですよ。
そんなことで、恋愛できるかなぁ~?
これって、いちおう恋愛小説なんだよ。
がんばりなさい!
でも……相当なところまで、追い詰められたんですね~。
女の子に……。
同情します。
では、次回は…そんな浩司くんに…
おもしろい女の子が現れますよ~。
お楽しみに。