第37話 触(2)
「エンジンかけてみます?」
「…えっ? ………いいんですか?」
「はい。
手順を教えますね。
ふつうの車とは、ちょっと、違いますから。」
「すっごく、ドキドキします!」
では、手順の説明です。
キャブ車だから、エンジンが、かかっていないときには、アクセルを踏んでは、いけません。
プラグが、「カブる」からです。
1度カブると、なかなかスタートしにくいです。
最悪のときには、プラグを外して、ガソリンを拭いてあげないと、いけません。
面倒くさいです。
だから、キャブ車は、エンジン始動に神経を使うわけですね。
今の季節は、割かし素直に始動できます。
やっぱり、冬場になると、苦労するわけですね。
その苦労も、楽しいんですけど…ね。
まずは、キーを「オン」にします。
オンにすると、電磁ポンプが動きます。
電磁ポンプとは、ガソリンをキャブに送るポンプですね。
この電磁ポンプには、キャブ用と、インジェクション用があるから、要注意です。
オンにすると……
「カチカチカチ………。」
電磁ポンプが、ガソリンを送っています。
3秒くらい待って、スターターを回します。
ここからが、ミソです。
セルが回って、エンジンに火が入りそうになったら、アクセルを軽く踏み込んであげます。
そうしたら……
「ボボンッ!
ボロボロボロロロロ―――――!」
エンジンがかかります。
………なんと!
一発で、エンジンスタートに、成功した里美さんです。
すごいです!
こんな娘が……
オタク度は、ハンパないみたいです。
「きゃあああ!
すごいっ!!!」
里美さんのテンションも、レッドゾーンです。
「ゴッゴッゴッゴッゴッ…………」
アイドリングも、安定してきました。
「軽く吹かしても、いいですよ。」
「はい。」
そう言って、里美さんは、軽くアクセルを踏む。
「フォンッ!」
軽やかなロータリー特有の排気音。
フライホイールを軽量化しているので、レスポンスは、けっこういいです。
「なんか感激です!
ロータリーって、すっごく軽いですね~!」
コメントもシブいです。
もはや、かわいいだけの女の子では、ありませんね。
ただの車オタクです。
しかも……ディープな………。
そのあとも、セブンくんの隅々まで、観察した里美さんです。
見ているこっちが、テレくさいです。
セブンくんは、もっとテレくさかったでしょうね。
でも、セブンくんにも、わかったはずです。
この娘の良さを………。
車を好きな人に、悪い人は、いないのです。
そして、その里美さんを乗せているセブンくんは……
心なしか……
調子が良さそうです。
ぼくの調子も、最高潮です!
「今度は、走るときに、乗せてもらっても………
あっ?
助手席が、ありませんね……。」
「……えっと……
助手席は、部屋の押し入れにありますよ。
3分あったら、付きますから。」
「ふふ。
3分って……
カップめんみたいですね~。」
クスクス笑う里美さんです。
ほんとうに、かわいいです。
「じゃあ、今度は、お酒を飲んでいないときに、おねがいしますね♪」
おねだりの里美さん………
もう……
ぶっちぎりです!
かわいすぎます!
………だから……
その表情は、マズいです!
勘違いしますよ!
…………でも……
「もちろんです。」
ぼくは、オトナのフリをします。
(…………ふぅ………。)
う~ん。
まだまだ、素直になれない、こうじくんですね。
さてさて……。
ところで、キャブ車のセブンを すんなりエンジンスタートに成功したカヤちゃん。
あなたは、すごいです。
さすがは、オタクですね。
ロータリーのキャブって、けっこうクセが強いからね~。
カヤちゃんって、機械にも、愛される女の子なんですね。
さて、次回は……
夜もふけてきました。
ふぅ……。
どうなるかな?
お楽しみに。




