第14話 近(3)
意を決した里美さんのクチが 開きます。
「わたし……大のニッサンのファンでして……。」
「日産ですか? へぇ~すごいです。だから、ハコスカなんて知っているんですね。」
ここまでくると、ぼくも自然に話すことが、できているようです。
やっぱり、同じ趣味というのは、偉大ですね。
このぼくが…5年以上ぶりに、女の子と話しているのですから。
「はい。…でも、いちばん好きなのは、
14のシルビアなんです。
…13のシルビアもカッコイイんですけど
14のちょっと、まるっこいところが、とってもかわいくて……。」
「ぶっ!」
思わず吹き出しました!
だって、こんなかわいい女の子のクチから…
14(イチヨン)シルビア!
…おまけに、13(イチサン)シルビアの名前が、出てくるなんて…。
「イチサン」とか「イチヨン」って、型式ですよ!
しかも、その言い方は、車オタクのマニア系の表現ですよ!
里美さん…あなた、正気ですか?!
…と、言いたいくらいです。
「ミウたちからは…「あんたの趣味は、ヘンだ!」…って、言われて……だから今日も…ほぼ強制的に参加させられて……。」
なんてことでしょう!
神様は、残酷ですね。
こんなに、かわいくて、やさしい女の子を…
オタクの道へと、引きずり込むなんて…。
「いえいえ。恥ずかしいことなんてありません。 立派な趣味です! 里美さんみたいな女の子がいて、日産の技術者さんも、よろこんでいると思いますよ。」
「…えっ? 技術者さん…?
あはははっ!
先輩って、ほんとにおもしろい人ですね~。」
(…おもしろい? ……ぼくが?)
「今日、来てよかったです。 もっと、先輩と、お話ししたいです。」
だから……そんな眼差しは、やめてください!
ほんとに、ドキドキしますから…。
ぼくは、戸惑って、フリーズしてしまいました。
ほんとに、不思議です。
こんなにも、この娘と会話できるなんて…
しかも、ぼく的には、3人の中で、いちばんかわいい…と思う女の子と。
その娘と、趣味がいっしょということは、すごい奇跡です!
ほんとに、すごい!…と、思いました。
「先輩の車って、なんですか?」
里美さんは、もう一度 質問してきました。
今度は、少し真剣な眼差しで……。
ぼくには、もう……
里美さんを拒否する力は、ありませんでした。
この人だったら、話してもいいかも……
と、考えました。
「……マツダのRX-7です。 SA22Cという通称サバンナって、古い車です。」
「えっ? 知ってます!
RX-7…ロータリーエンジンですよね?
ちょっと、アマガエルさん…っぽい……
あっ? ごめんなさい。」
マジですか?
セブンまで、知っていますか。
おまけに…ロータリーエンジンって……。
「いえいえ。気にしないでください。その通りですから。 でも、よくロータリーなんて、知っていますね?」
「はい…。ネットで、調べています…車のこと……。」
…おっと?
これは、もう…ホンモノですね。
「昔…ハコスカの連勝記録を マツダのロータリーエンジンが止めた…って。」
「へぇ~。すごいですね~。
よく調べましたね。」
そうです。
当時の日産最強のエンジン…S20型ツインカムエンジンを積んだハコスカは、連続優勝中でした。
レースの出場マシンが、ほとんどハコスカの中…マツダが送り込んだマシン…
ロータリーエンジンを積む RX-3(初代サバンナ)が、優勝をかっさらいました。
それはそれは、衝撃的だったそうです。
「…あっ? 里美さんは、日産のファンでしたね?
…じゃあ、ぼくのセブンは、天敵ですね。」
…この女の子と話すの……楽しいかも?
「いえいえ。敵…だなんて……。
セブンもカッコイイですよね。…FDとか。」
またまた出ました!
FD…このかわいい女の子のオクチから…。
もう…ぼくは、断然に、里美さんのファンに、なりました!
よかったね~こうじくん。
たのしそうだね~。
いいよ。いいよ。
ハコスカの連勝記録を止めたマシン…って、RX-3だっけ?
ロータリークーペ(RX-2)じゃなかった?
…どっちだっけ?
まぁ、なんにもしろ、マツダのロータリーエンジンが、ハコスカの天敵なんですよ!
さて、次回は…
そんな楽しいバーベキューも、終わりを迎えます。
お楽しみに。




