第13話 近(2)
「ガソリン代?……パーツ代? …って、もしかして、車ですか? やっぱり先輩も、車好きなんですね! あの運転…理解できました。」
里美サマは、ぼくに関わることをやめるどころか、目をランランに輝かせて、まるで、子犬状態です。
その仕草は、やっぱり、かわいかったですけど…。
(…ん?)
…先輩も?
…って、ことは…里美サマも、車が好きなのかなぁ……?
まぁ、思いあたるフシは、ありますね。
「あのぅ……。里美さんも…車が?」
「はい! わたしも、車が大好きでして…
まだ免許は、とれていないんですけど…
もうすぐ仮免で……。」
モジモジポーズの里美サマ。
ほんとに、かわいいです。
この女子大生も、車が好きだそうです。
ぼくは、少し安心しました。
…たぶん、車好きには、悪い人は、いない……と。
だから、ぼくは……銀でいいです。
「もうすぐ、仮免ですか? …じゃあ、今は、3段階ですね。」
「はい。来週が検定試験です。とっても緊張します…。」
……なんか、この娘…いい人かも?
「 ふふ。 大丈夫ですよ。検定試験なんて、いつも通りに…教習通りにすれば、大丈夫です。」
「 そ…そうですか……?」
「はい。大丈夫です。実技よりも、筆記の方がやっかいですよ。」
「あっ? そうですよね~。あの問題…なんか意味がよくわかんなくて…?」
クビをかしげる里美サマ…いえ、里美さんは、やっぱり、かわいいです。
「ほんとですね。あの問題を作る人って、絶対いじわるですよ!」
ぼくも、二輪と四輪で、2回試験を受けましたから…あの、クセの悪さは、実感しています。
「あはははっ! わたしも、そう思います!」
ぼくたちは、共感したように、笑いました。
…不思議です。
どうしてぼくは、こんなにも、ふつうにお話しができるのでしょうか?
自分でも、よくわかりません。
ほんとうに、不思議です。
「でも、もう少しですね。 がんばってください。
…あっ? そうだ!
免許が取れたら、お祝いしましょう!」
「…えっ? いいんですか?」
「はい。 食事くらいだったら招待します。」
「わぁっ! ありがとうございます!」
こんなことも、平然と言えたぼくです。
…すっかり、大人のフリが身についたのですかね?
でも、なるほどですね。
それで…あのセリフですね。
ほんとに、ホッとしました。
それでも…あの表現は、ただの車好きとは………。
「先輩は、なんの車に乗っているんですか?」
さらに、ピコピコの里美さんです。
はっきりと、耳が生えているのがわかります。
さらに、かわいさ炸裂しています!
「えっと……。ぼくの車は…古い車ですよ。 ボロの安い昭和の車です。」
「…えっ? 昭和って…旧車ですか?
もしかして…ハコスカとか?」
な…なんですと?
そのかわいいオクチから「ハコスカ」なんて、言葉が出てきました。
どびっくりです!
里美さんも……マニアかも?
「いえいえ。 そんなにカッコイイ旧車じゃありません。 もっと、マイナーな車ですよ。」
……あっ? しまった!
また、いらぬことを口走りました。
これでは、ぼくが、旧車に乗っていることをバラしてしまいました。
……いや。大丈夫です。
話題を変えましょう!
そらしましょう!
3車線道路のいちばん左から、いちばん右へと、ぶっ飛ぶように…。
「里美さんは、ハコスカが好きなんですか?」
……どうです!
「……えっと…。笑わないで、聞いてくれます?」
里美さんのモジモジが発動しました。
ナイスです! ぼく!
フリは、バッチリでした!
「はい。もちろんですよ。 笑いません。」
「絶対に、笑いません?」
「はい。絶対です。」
「絶対の絶対ですよ?」
……かわいいけど…なんか、うっとうしいです。
「絶対の絶対です。それに、ぼくは、人の趣味を笑えるほどの人格者では、ありませんから。」
「……ふふ。」
と、微笑んだ里美さんの笑顔は、ほんとうに、天使のようでした。
はっきり言って………マズいです…。
うん。うん。
なかなか、がんばっていますね、こうじくん。
いい感じですよ~。
こうじくんの心で…
「サマ」から「さん」へと、変化したのは、だいぶいいことですね。
しかし…里美ちゃんは、天然でかわいいんですね。
あの女性恐怖症のこうじくんに、ここまで会話させるなんて……
ただモノじゃないですね!
さて、次回は、まだまだ、ふたりの会話が続きますよ。
どうなるのかな?
では、お楽しみに。




