第12話 近
おほんっ!
大幅に脱線して、すみませんでした。
では、本題に戻りましょう。
現実に、戻りましょう。
そう……合コンバーベキューでした。
カンパイで、ノドも潤い、バーベキューまでは、時間がかかるから、みんなに提案します。
「ぼくが、バーベキューの準備をするから、しばらく散策してきたらいいよ。
沢沿いには、桜もあって、キレイだよ。」
「おうっ。悪いねぇ~こうじ!」
「いいって、いいって。タダでバーベキュー食べられるから、そのくらいさせてよ。」
「オッケー! じゃあ、頼むよ!」
「よろしくおねがいします~。」
「うん。いってらっしゃい。」
気持ち良く、みんなを送り出して、ぼくは、バーベキューの準備をしましょう。
飲食店でバイトをしていたから、こういうことは、慣れています。
ひとり暮らしも、2年目ですから、料理は、得意な方です。
おまかせください。
まず最初に、火を起こしておきましょう。
この加工炭は、はじめちょっと、ニオイが出ます。
おまけに、表面から炭がはじけ飛びますから。
そのあたりのリスクは、回避した方が、楽しいバーベキューになるでしょう。
炭に、火をつけている間に、仕込みをします。
まずは、野菜類から。
キャベツは、1枚ずつむいて、キレイに洗います。
もちろん、水タンクは、持ってきていますよ。
あとは、テーブルとイスと、食器類もです。
これだけの荷物を積める普通車って、エライ!
ほんと、車って……
…おっと?
仕込み中です。
料理に、専念しましょう。
キャベツは、キレイに洗ったら、適当な大きさに、ちぎっておきます。
あとは、自分の好みの大きさにちぎり、焼いてください。
そのままでもいいし、お肉をくるんでもいいし、好きなように、どうぞ。
タマネギは、輪切りにして、爪楊枝を刺しておきます。
バラバラにならないように…です。
タマネギも、好きなように、焼いてください。
バラバラでもいいし、串のままでもいいし、自由です。
ピーマンは、縦ふたつに切って、中のタネをキレイに、取り除きます。
トウモロコシは、食べやすいように、少し薄目に切っておきます。
その方が、火の通りが早いですからね。
シイタケは、ジクを取り、半分に切ります。
そのままでもいいんですけど、今日は、女の子がいっしょですから。
バイトをしていて、感じました。
女の子たちは、そのままよりも、一口サイズにカットしてある方を好む…と。
野菜類をカットしたら、ボウルに盛っておきます。
次は、お肉です。
牛、豚、鶏も一口サイズに切ります。
種類別に、バットに並べて、完成です。
ウインナーは、切り込みを入れるだけですね。
「フン~フフン~~ン♪
煮込んでしまえば、カタチもなくなる~
もうすぐ出来上がり~♪ 」
(ユーミン「チャイニーズ・スープ」より。)
「盛福先輩って、すごくですね~!」
突然の声に、振り返るぼくです。
そこに立っていたのは……
あの里美サマでした。
マルキョウで、オタクのぼくに、話しかけてきた女子大生。
ぼくの運転がやさしい…と、言った女子大生。
ぼくに、呼び捨てにされても、笑顔で許してくれた女子大生。
車のことを よく知っているみたいな女子大生。
…そして、ぼくみたいなオタクにも、やさしく接してくれるヘンな女子大生。
その……里美サマが立っていました。
「あ…あれ? 里美……サン…。どうしたんですか?」
(げっ! 鼻歌交じりでやってたの…絶対に見られたよね?)
恥ずかしい!
ぼくは、動揺を一生懸命に隠して、返事をしました。
相当、がんばったと思います!
「…えっと……。先輩のお手伝いをしようと、思ったんですけど……いらないみたいですね……。」
里美サマは、なぜかモジモジしている様子です。
その仕草は、かわいかったけど…どこかで見たことがありました。
……そうです……。
妹が、なにかをたくらんで、下心がある時といっしょです。
(…ん? …下心?)
この女子大生は、ぼくに対して、何をたくらんでいるのでしょう?
お金を持っていないことは、明白なのに…
またひとつ、謎です。
「あ…ありがとうございます。 でも…みんなといっしょに、楽しんでくればいいのに……。」
大人のフリを 続けるぼくです。
「…そうなんですけど…ミウとレイナの…邪魔しちゃ悪いかなぁ?……って…。
ご迷惑でした?」
両手を祈るように、胸の前で握る…
その仕草は……
その仕草は………
めちゃくちゃかわいいです!
かわい過ぎです!
まるで、某アニメの6号ちゃんのミラクルトゥインクルスマイルです!
そんな眼差しで見られると、ほんと困ります!
戸惑います!
勘違いします!
……でも…ぼくは、大丈夫です。
そんなことは、万が一でも…
いや…億が一でも…ないことを知っていますから。
「い…いえ。大丈夫です。 気を遣っていただいて、ありがとうございます。
でもこれは、ぼくの役目ですから。」
だから…大人のフリを続けるぼくです。
「…役目?」
「はい。 ぼくは、ビンボー学生だから……この4~5日…なにも食べることができなくて……。見かねたけんじが…おごってやるから、運転とバーベキューをよろしく!
…って。 まぁ、バイトみたいなものですよ。」
ここで、もうひとつ…ぼくがビンボー人であることをアピールしておきましょう。
そうすれば、この天使……いや、失礼。
この女子大生も、ぼくに関わることを やめるはずです。
「そうなんですね……って 先輩って、そんなにビンボーなんですか?」
かなり、目を丸めて驚いている里美サマです。
(よしよし!)…です。
これで、ぼくには、関わらないでしょう。
もう、ひと息ですね。
「はい。極貧中の極貧なんです。 自分の食べ物は、おろか……ガソリン代だけで精一杯で……パーツ代までは…………あっ? 」
ぼくは、バカです。
つい…饒舌になってしまって…
いらぬことまで、言ってしまいました。
…沈黙は、金。饒舌は、銀。
ということわざも、ありました。
この教訓を糧に、猛烈反省します!
そうですね。
口は、災いのもと…ですよ。
…じゃなくって!
こうじくん!
もっと、お話ししなさい!
ほんとに、あなたは…訓練がなっていません!
…まぁ、そう言ってもね………
急には…ならないですね…。
ですが!
そんなこうじくんにも、ひと筋の光が見えてきますよ!
がんばれば、きっといいことがあるのですよ!
…ふぅ~。
熱くなって、すみません。
では、次回もお楽しみに。




