6話 似たものどうし
「へえ!じゃあ、私と同じ理由じゃない!」
しかし、彼女は俺の理由を聞いて、うんうんと頷き、嬉しそうにニマニマ笑いかけてきた。
「……はぁ?一緒って何がだ?」
俺は呆れたように返す。だが、彼女は真っ直ぐな視線で自信満々に胸を張って、
「だって貴方は、父親みたいにカッコいい人になりたいんでしょ!なら私と一緒じゃない!」
反射的に否定の言葉を投げかけようとする。しかし、ふと思いとどまった。
確かに、俺は父のような立派な領主になりたいと思っている。なぜなら、俺は父の強さや志に憧れを持っているからだ。領民からの信頼を一手に引き受けた父の姿を尊敬しているからだ。
そんな父のようになりたい。それは言い換えれば、確かに俺は彼女と同じような目的を抱いているのかもしれない。
強くて、優しくて、頼りになる――そんな格好の良い人間に。
「そうだな……。俺もお前と同じかもな」
同意する俺に、
「かもじゃないわ!一緒よ!」
彼女は左右に首を振ると、とことこ近づいてきて、ギュっと両手で包むように俺の手を握った。
「お、おい……」
思わず顔を赤くする俺だったが。彼女は表情を変えずに手をブンブン振ると――やがて、俺をキラキラした目でじっと見つめて……。
「――そういう訳で、明日も決闘よ!!明日の放課後、ここに集合にしましょう!ね、いいでしょ?」
「……は。ハァッ!?ちょっと待て!!」
慌てて止めようとする俺に、彼女はなにかに気づいたようにふと、時計を目を留めると、
「あっ!もうこんな時間!? ゴメンなさい……私もう帰らなきゃ。今日は本当にありがとう!じゃあねっまた明日!!」
俺の制止の声も聞かずにバタバタと走り去って行ってしまう。
「ちょ……おま……だから……」
しかし、彼女はもう既に声の届く範囲から消え去っていた。
日が暮れて、ヒグラシの鳴き声が響き渡る中、俺は引き留めように伸ばしていた手を引っ込める。そして、
「ふざけんなーーーーー!!そんなもんお断りに決まってるだろうがーーーーーッ!!」
黄昏に染まる空に向かって、俺は雄々しく思いっきり声を張り上げた。