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異次元邂逅  作者: ずくなし
33/42

退治屋として舞台へ

 山での修行は続き、季節は冬になり、やがて春を迎えた。

山での修行も一年近くになったある日のことである。


 ユリの父と、母が山小屋に訪れた。

時刻は午前10時頃のことである。


 「翼くん、山での修行、ご苦労であった。」

 「よく頑張ったわね、翼くん。」


 ユリの両親にそう告げられ、翼はポカンとした。

突然の言葉に、そして何をしに二人で来たのか分からなかったからだ。


 だが、(ねぎら)ってくれている事は分かる。

翼はお礼を言った。


 「ありがとう御座います。

ユリさんが一緒にいてくれたおかげで修行を続けることができました。」


 「そ、そうか・・。」


 ユリの父、公一郎はユリのおかげという言葉の所ですこし眉間に皺がよる。

それに翼が気がつき、首を傾げた。


 「あ、あのお父さん、何か?・・・。」

 「まぁ、なんだ・・、その、だな?」

 「?」

 「結婚前の娘とだな、一年近く、二人だけで生活したわけだ。」

 「はい、しましたけど?」

 「()()では無い!!」

 「へ?」


 「本当にユリに何もしなかったのだろうな!」

 「え、ええ・・、しておりませんが・・。」

 「(あや)しい・・。」

 「へ?」

 「本当にしてないのだな?」

 「はい、指一本ふれておりません。」

 「・・・ならよい。そうかそうか、それならよい。」


 公一郎が安心した様子に、翼はホッとした。

だが、公一郎は何か疑問に思ったようだ。


 「まてよ・・・、指にさえ触れておらんのか?」

 「はい。」


 「まさか!・・・、翼くん、男にしか興味が無いのか!」

 「な、何を言っているんですか! 男に興味なんかありません!」

 「そうか?」

 「はい!」

 「う~む・・・。」

 「?」


 「なら聞くが、ユリは美人だぞ?」

 「はい、その通りです!」


 「つ、翼くん・・び、美人だなんて・・。」


 ユリは翼の言葉に顔を真っ赤にする。


 「ユリは黙っていなさい!」

 「え? あ、・・はぃ、お父様・・。」


 「よいか翼くん、娘の、美人のユリに何故、手をださん?」

 「え? 手を出してよかったんですか?・・。」

 「だめだ! 手を出したら、ただではすまさん! 結婚もしてないのだ!」


 「はぁ・・、えっと、では、どうしろと?」

 「どうしろだと! だから手を出したら、ただではすまさん! そう言っているのだ!」

 「それは・・、わかりましたけど?・・・。」


 「それでだ、なんでユリに手を出さんのだ? 君も男だろう?」

 「そりゃあ、僕だって男です。ユリさんと、したかったですよ・・。」


 「まさか、したのか!」

 「してません!」

 「ならよし。」

 「良しって・・・、はぁ・・、なに、これ・・。」


 黙ってきいていた喜美が、我慢の限界とばかりに公一郎を一喝した。


 「あなた、いい加減になさいませ!」

 「え!?・・、あ、ああ・・。」

 「翼くんはノーマルです。ね、翼くん、ユリとしたかったのでしょ?」

 「はい! それは毎日毎日四六時中、思っていました!」


 「ま、毎日・・、あう、うううう。」


 ユリが翼の答えに顔を真っ赤にして(うつむ)き、ボソリと(つぶや)く。


 「私に興味がないわけではなかったのね・・、私の体って魅力がないのかと思ってた・・。」

 「え? 何? ユリさん?」


 ユリの呟きはあまりに小さく、翼には聞こえなかったため聞き返した。


 「な、なんでもないわ、翼くん。」


 「あらあら、なんでもないわけないじゃない?」

 「お母様は黙っていて!」


 「あらまぁ、()ずかしがることないじゃない、ユリ。

いずれ結婚すればすることになるのだし、ね、翼くん?」


 「へ?! け、け、けっけっけつ、けつ!」

 「けつ? お尻でも痛いの、翼くん?」


 喜美は首を傾げた。


 「けっ、けつ、けっ、結婚してすることって! あの、そ、それって・・。」

 「子供を作ることにきまっているじゃないの、やだわ、翼くん、知らないの?」

 「し、知ってます!」

 「あら、よかった、知らなければ教えないといけないでしょ、ねえ、あなた?」


 「だ、だから、ユリとそれをするなど! 許さんぞ! 翼くん、絶対にだ!」

 「は、はい!」


 「あなた! いい加減になさい! ユリと翼くんを結婚させないつもりですか!!」


 「あ! いや、そ、そういうつもりでは・・・。」

 「じゃあ、どいうおつもり?!」

 「す、すまん!」

 「謝ってすめば、警察は要りません!」

 「うっ!・・・。」


 たじたじとなる公一郎であった。

翼は、ため息を一つ吐いた。

そして・・。


 「あの・・、それでお二人は今日はどうしたのでしょうか?

今日は、お母さんからの手ほどきを受ける日ではなかったと思うのですが・・。」


 「ああ、ごめんなさいね、公一郎さんがいると話しが進まなくなるの。

最近はとくにユリのことが心配でね。

翼くんとつきあう前は、だれかいい人ができないかと心配していたのにね~。

いざ翼くんという恋人ができたら、今度は嫁にやりたくないみたいで。

本当に子供みたいでしょ?」


 「はぁ・・、それで、どうしてお二人で来られたのでしょうか?」


 「うむ、それはだな・・。」


 「少し黙っていて下さいな、公一郎さん。

あなたが話すと話しがすすみません!」


 「はい・・。」


 翼は尻に敷かれる公一郎を見て、同情の眼差しを向けた。

その眼差しを受け、公一郎はため息をついた。


 そのため息は、翼に人ごとだと思っているが、将来の君だよ、という意味合いだったのだが・・。

翼にそれを知る(よし)も無かった。


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