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異次元邂逅  作者: ずくなし
23/42

デートに誘いたいのだが・・

 翌日、翼はユリをデートになかなか(さそ)えなかった。


 ユリが退治屋の件で怒っていたからだ。

電話をかけば、確実に怒られたあげく電話を切られる可能性が高い。

でも・・デートはしたい。

携帯をかけようとしては、やめ、また時間を置いて、かけようとしてはやめた。

つまり、ヘタレなのである。


 退治屋になりユリの力になりたい。

ユリから守られているだけの立場から、ユリを守れる男になりたいのだ。

でも、ユリは退治屋になることを怒っており、退治屋になる事でユリに嫌われたくない。


 どうすればユリを納得させる事ができるか翼にはわからない。

女性とつきあった経験がない翼である。

女心など分かるはずも無く、ましてや女性を納得させなど宇宙人に会う確率より低いのである。


 説得する方法が全く思い浮かばずに悩める翼がそこにいた。


 そしてため息を吐いて電話をかけるのを(あきら)めようとした時である。

電話がかかってきた。

誰からだろうと携帯の表示を見ると、ユリからであった。


 「げっ! ユリさん!?」


 女性からの電話に、げっ! は、ないだろう。

それも(あこが)れている女性からの電話である。

まぁ、突然の電話で心構え(こころがまえ)ができていなかったから、わからないわけではないが。


 翼は恐る恐る電話に出た。


 「も・・、もしもし・・・。」

 「あのね、翼くん、今日、これから時間は()いているかしら?」

 「え?」


 予想外のユリの言葉に、翼はキョトンとした。

そして・・。


 え? これって、デートの申し込み?

やった!! 嬉しい!

ん?・・・。

いやいやいや・・待て、待つんだ、俺!

そう・・・・よく考えるんだ。

デートなどという事は、たぶん、無い。

いや、あっては欲しい!

あ~・・、でも、無い、と、思う。たぶん。

だって、昨日、あれほど退治屋の件で怒っていたんだぞ?

怒っていた人が、今日、デートに誘う?

無いよね・・・。

うん、普通は・・・無い。

・・・。

だとすると、何?

もしかして・・

お説教?

お説教か!

お説教だ!!

それは、やだ!

そうだ、それしか無い!

逃げよう!

うん、そうだ、今日は忙しいと言おう!


 そう思い翼は口を開きかけた時だった。

ユリが先に話し始める。


 「翼くん、お母様(かあさま)・、いえ、(はは)が退治屋の件で話しがあるそうなの。」

 「え!?」

 「!?・・・」


 翼のあまりに予想外だと言わんばかりの反応に、ユリは狼狽(うろた)えた。


 「あの・・、母に退治屋になるための話しを聞きに、翼くんが今日来ると聞いたんだけど。

違うの?」


 「あ!! はいっ! そうです! そうでした!」


 「もしかして・・、忘れていた?」

 「いえ! 覚えています・・です!」


 とってつけたように(あわ)てふためく翼に、ユリは疑問に思った。


 「翼くん、もしかして退治屋になる事を()めたいんじゃない?」

 「え?」


 「そっか、そうなのね!

良かった!

なら、そうして!

ね、そうしましょう!

私から、父と母にそう話しておくから。

だから安心していいわよ。

うん! 良かったわ。

安心した。」


 「わっ! ま、待って! なる! なるつもり!

じゃない、なるの! 退治屋に!

本当の本当に、なりたいの!」


 「え!・・・・、嘘・・。」

 「う、嘘じゃない!本当に、本当なの!」

 「そう・・・なんだ・・。」


 「そうです!! 神に誓って!

なんなら総理大臣に誓ってもいい!

いや、パンダに誓います!」


 「パンダ? あの、なんでパンダ?」

 「パンダ?」

 「そう、パンダ・・。」

 「え? 俺、パンダに誓わないといけないの?」


 「え? いや、だって翼くん、パンダに誓うんでしょう?」

 「え? 何で、俺、パンダに誓わないといけないの?」

 「・・・それは、私が聞きたいんだけど?」

 「え?」

 「・・・。」


 (しばら)くして、電話の向こうからため息が聞こえた。

そしてユリは気持ちを切り替えて、翼に話しかける。


 「パンダの事は忘れて。で、翼くん、どうするの? 来るの?」

 「行きます!」

 「じゃあ、時間は何時がいい?」

 「今すぐでいいです! あ、でも、歯を磨く時間を下さい!」


 「はぁ? あのね、私、今、家に居るの。

貴方のアパートの玄関先にいるわけじゃないわよ?」


 「そうなんだ? だったら顔を洗うから、待っててくれる?」

 「だ~か~ら~、1分や2分で貴方のアパートに行けるわけがないと言っているの!」

 「そうなの? それなら、よかった・・かな?」


 「はぁ~・・・、それじゃあ今は10時ちょっとすぎだから、どうしよう・・。」

 「そうだね、どうしよう。」

 「どうしようって・・・、まぁ、いいわ、それじゃあ午後にしましょ?」

 「え! 午後!?」


 「え? 何か都合が悪いの?」

 「あ、いや、その・・・。」

 「何?」

 「すぐにでもユリさんに会いたいな、と。」

 「え!・・・。」


 「だめ、だよね?」

 「そ、それは・・・、その、えっと・・。」

 「ごめん、急に言い出して。 じゃあ午後2時頃に迎えにきてくれる。」

 

 「え? バカ・・・・、誘ってよ。」


 ぽつりと、ユリが小声で(つぶや)いた。

だが、あまりに小さな声だったため、翼は聞きのがしてしまう。

翼はユリに聞き返した。


 「え? 何? 2時じゃだめなの? なら3時でも・」

 「バカ! いいわよ2時で。」

 「え?」

 「バカ!!」


 ガチャリと電話が切れ、プ~、プ~、プ~と無情な音が流れる。


 「え? え? ええええええ! え?」


 翼は何故、ユリが怒って電話を切ったのかわからなかった。

そして切れた電話に向かって、あわてて話しかける。


 「あ、あの! ゆ、ユリしゃん! え? あ、ユリしゃん? あの、その・・。」


 焦りに焦り、ろれつが回らず、電話が切れたことにも気がつかず、ひたすらに電話に話しかける翼であった。


------


ユリは時間通り2時に迎えにきた。

だが、怒っているようで必要以上に翼に話しかけず、また、話しに乗らない。

翼はそんなユリに、機嫌を直して欲しくて色々と話しかける。

だが、結局、ユリの家についてもユリの機嫌はなおらなかったのである。


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