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異次元邂逅  作者: ずくなし
11/42

突然、ご招待が届いたのだが・・・、行かなくてもいい?

 翌日の土曜日の事である。

休日で惰眠をむさぼっていた翼の携帯がけたたましく鳴った。


 眠りから半分意識を戻した翼は、頭の近くに置いたはずの携帯を目を開けずに手探りで探す。

探し当てた携帯に耳を当て翼は返事をした。


 「もひもひ、ふぁ~~ぁ。」


 盛大なアクビをしながら携帯に出た翼の耳に、鈴の()のような声が響く。


 「あ・・・、ご、ごめんなさい! まだ寝てました?」

 「え!!」


 声の(ぬし)に驚き、翼はガバリと上半身を起こした。

背筋が真っ直ぐに伸び、普段猫背ぎみの翼には有り得ない姿勢である。


 電話をしてきたのはユリであった。


 「ゆ、ユリひゃん!!」


 舌を噛んだ。

昨日、あれだけユリと親密?になれたというのに、まだ免疫がついていないようだ。

おそらく”定期的にユリと会うというワクチン”を打たないと、免疫が即座に無くなる体質なのかもしれない。


 「あ、あのごめんなさい、起こしてしまって。」

 「と、とととととと、とんでも御座いませぬ!」


 時代劇でもあるまいに、御座いませぬはないかと思う。

だが驚いて冷静さを欠いた翼は、それどころではなかった。

どもりながらユリに話す。


 「あ、ああああ、あ、あの!」

 「はい?」

 「な、何か御用でございましょうか?」

 「えっと、その・・・。」


 何か言いにくそうな気配を、携帯の向こうのユリから翼は感じ取った。


 「?・・、どうしました?」

 「あ、あの・・・。」

 「はい?」

 「よろしければ、今日、時間を(いただ)けませんか?」


 「え!! はぃ! 喜んで!!」

 「え? (よろ)しいんですか?」

 「はい! 宜しいも何も、宜しいんです!!」

 「・・・ありがとうございます。」


 「えっと、じゃ、じゃあ、どうすればいいですか?」

 「あの・・、私が翼さんのアパートに行ってもよろしいですか?」

 「え? あ、はい? はぁ?・・・はい。」


 「あの、お時間はいつがよろしいでしょうか?」

 「いつでも!! あ、今すぐでも! あ、いや、待って! 服を着る時間を下さい!」

 「あ、あの・・、お、落ち着いて下さい、翼クン。」

 「はい、落ち着いています、救急車を呼ぶのは110番です!」

 「?・・・。」

 「あ、違った! 警察を呼ぶなら119番だ!」


 「・・・あの、落ち着いて翼クン。

・・今はお昼ちょっと前ですよね。

では2時頃に伺ってもよろしいですか?」


 「いいとも~!!」


 即座に答えた翼であった。


 分かる人は、わかるだろうか?・・・

ちょっと昔に、笑っていいとも、という番組があった。

それを真似たわけではないが、ハイテンションになった翼が無意識に放った言葉である。


 そんなハイなテンションの翼に、ユリは戸惑う。


 「え? あ、ええっと・・、それで宜しいのでしょうか?」

 「はい!」

 「・・・わかりました。では2時に伺い(うかがい)ますね、よろしくお願いします。」

 「はい! お待ちしております。」

 「それでは失礼します。」

 「はい!」


 そういって電話は切れた。

だが電話が切れも、しばらく翼は携帯を握りしめたまま夢心地でいたのである。


 やがて正気に戻った翼は、重大な事に気がつく。


 「あれ? そういえばユリさんの用事って何だろう?

聞いてないような気がするんだけど?・・。

あ!? そうだよ! 聞いてない!

ど、どうしよう?

アパートの前で簡単に済む用事?

数分で終わるような用事???

・・・

いや、そんなのってないよね?

ゆっくり話したいよね、俺・・。

あ、でもユリさんの都合もあるし・・。

いやいやいや、希望を持とう!

もしかしたらユリさんからのデートの誘いかもしれないじゃないか!

そ、そうだ、そうかもしれない!

ならば、直ぐに出かけられる服装がいいよね?

何を着ていけばいいんだろう?

喫茶店に行く程度なら軽装でいいんだよね。うん。

あ、でも、待てよ・・。

もしかしたら、車でドライブでもとなったら、厚着をしていく必要があるよね?

あああああああ~!どうしよう?」


 そう言って頭をかかえた翼であった。


 --------


 そして、2時ちょうどにユリは翼のアパートを訪れた。

ミラという可愛い車で。

翼はというと、外出に備えすこし厚手の服装をしていた。

どういう状況になったとしてもも対応できる服装にしたのである。


 「すみません、突然に・・。」

 「あ、いや、僕としては大歓迎です!」

 「そ、そう?」


 翼のその言葉に、ユリの顔がほんのりと赤くなる。


 「どうします、ちらかっていますが部屋に上がりますか?」

 「え?」


 ユリは一瞬、驚いた顔をした。

それに気がつき、翼はしまった!と、思う。

慌ててユリに謝る。


 「あ、ごめん! そういうわけにもいかないよね・・。

知り合ったばかりなのに、部屋に誘うなんて・・・

失礼しました!

じゃぁ、どうしよう?

近くの喫茶店にでも行きますか?」


 「あ、あの・・。」

 「何でしょうか?」

 「私の家に来てもらえませんか?」

 「え!」


 翼はポカンとした。


 「あの・・、父が会いたいと・・。」

 「え?! ええええええ!!」

 「す、すみません、突然に・・・。」


 「あ、あの・・。」

 「・・・はい?」

 「お父さんて、怖い人?」

 「それは、どうなんでしょう?」

 「どうなんでしょうって・・。」


 「家に招待した友人は、女友達しかおりません。

ですので男性の友人を父に紹介したことはないのです。

ですので、男性からみた父の印象というのがわからないのです。

娘から見ると父はやさしいと思うのですけど、(いか)めしい印象を受けるかもしれません。」


 「そ、そうですか・・、は、はは、はははははは・・。」


 翼は乾いた笑い声を出した。


 「で、でででで、で。」

 「で?」

 「ど、どどどどどど、どんな用件でしょうか、お父様はぁ?」

 「あ、落ち着いて下さい、翼くん!」

 「お、おおおお、お、落ち着いて、い、いましゅ!」


 また舌を噛む翼であった。

ユリはその様子に困った顔をする。


 「あの、昨日、居酒屋で話したことを覚えていますか?」

 「え?」

 「覚えていませんか?」


 「・・えっと、覚えてはいますけど?」

 「私が貴方に身を(てい)して()くさないと、父に(しか)られると話したことも?」


 「はい。そう言っていましたよね?

え?

まさか、あの事、お父さんに話したの?」


 「・・・ええ、話さない訳にはいかないので。」

 「そう・・ですか・・。」

 「ですから父が貴方に(あやま)りたいと・・。」

 「ですから、それは必要ないと言ったはずですが?」


 「父としては、是非ともお会いしてお()びしたいと・・。」

 「はぁ~・・・。」

 「だめですか?」


 ユリはそう言って、なんとも言えない顔をした。

う~、そんな顔をしないで欲しいと翼は思った。


 「はぁ~・・、分かりました、お会いしましょう・・・。」

 「有り難う!翼くん!」

 「う、うん・・。」

 「じゃあ、行きましょう!」


 「あ、そうだ! 何か手土産(てみやげ)を持っていかないと・・。」

 「()りません!」

 「え? でも・・。」

 「父が謝りたいというのに、そのように気を(つか)われては困ります。

ですので手土産は要りません!」


 すこし怒った顔をし、(かたくな)なに拒否するユリに翼は何もいえなくなった。


 「わ、わかった・・。」

 「じゃあ、行きましょう。」


 翼は仕方なく、家に入りコートを取ってきてドアに鍵をかける。

ユリは車の運転席に既に座っており、エンジンは既にかかっていた。


 「じゃあ、よろしく。」


 そう行って翼はユリの車の助手席に乗り込んだ。

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