#16【君ノ名ヲ】
「あの…」
雅は言い辛そうに口を開く。
「ユーマさんの名前なんだけど…発音出来ないにしても、私達でも発音出来る音とかはないの?」
「何故だ?」
突然の雅の言葉に私もUMAも不思議そうにする。
「やっぱり…UMA(未確認生物)だからユーマさんって…安直過ぎると言うか…」
流石は常識人の雅さん。初めから呼び名について言及してたし、余程気になるのだろう。でも…呼び名なんて……何でもよくない?
「別に良いんじゃない?」
私が素っ気なく答えると雅は呆れたように言って来た。
「あんたねぇ…逆の立場になって考えて見なさいよ。宇宙人に発音出来ないからって、ヒトとかニンゲン呼ばわりされるの何だか嫌じゃない?」
(っ!確かに!というか、雅さん?UMAを何気に地球外生命体で括っちゃってますけど?)
「…確かに…名前くらい付けてもらいたいかも」
私は雅の言葉に納得する。しかし、UMAは心底どうでも良いといった様子で答える。
「別にお前達に何と呼ばれようが構わないがな」
そんなUMAを見ても雅は引き下がらない。
「私は嫌なの。名前を付けたり呼んだりする事で愛着が湧くでしょ?それに、もしかしたら発音出来る音もあるかもしれないから、ちょっと名前言って見てくれる?」
UMAは面倒臭そうに口を開く。
「————————だ」
(はい、無理〜。一音も聞き取れなかったよ?)
雅もそう感じたのか少し焦ったように言う。
「あ、じゃ、意味は?名前の由来とか意味とかで、同じ意味合いの名前を発音出来る言葉で付けたら良いんじゃない?」
「あ、成程!それ良いね!」
私も雅の提案に賛成する。「名前の由来カモンっ!」と手の平を上にして指を折りまげるジェスチャーをし、UMAに返答を促す。私の所作を心底不愉快そうなに見ながらUMAは答える。
「俺達は髪と瞳の色で個体を区別していた。両方共に同じ個体は存在しなかったからな。」
「つまり、髪色と瞳の色をかけ合わせて呼んでいた?」
「そうだ」
「日本語で言うと金銀ってこと?」
「そうだ」
私と雅は思わず口をつぐむ。その沈黙にUMAが口を開く。
「何だ?」
その問いかけに私は即答する。
「いや、そんなんで良かったんかいっ!」
———
それから私と雅はスマホで世界の金と銀の呼び方を検索する。
「日本語と英語と、あとウチらが発音しにくい言語は省こう。」
「そうだねぇ。じゃー、
フランス語でオール・アルジャン、
ドイツ語でゴルト・ズィルバー、
スペイン語でオーロ・プラータ、
ロシア語でゾーラタ・シリブロー、
中国語でホアンジン・イン、
韓国語でグム・ウン。っと、こんな感じ?」
「良いんじゃない?ユーマくん、気に入った響きの呼び方あった?」
雅の問い掛けに全く興味なさそうにUMAが答える。
「最初ので良いんじゃないか?」
適当だなー、貴方の名前よ?まぁ、話からして[名前=個体識別用]の感覚しかないようだし、本当に興味無いんだろうな…しかし、雅は気にせず続ける。
「じゃ、フランス語のオール・アルジャンね。」
「それは長いなー」
私の言葉に雅は顎を指で抑えて、視線を上に向けて答える。
「じゃぁ、合体させてオルジャンとか?」
私は脳内で「オルジャン」とUMAのことを呼ぶ自分を想像してみる……
(……無いわー…)
「ごめん、オルジャンは…何か…無いわ。UMAと響きが似てる方がしっくり来るかも…」
「そうだね、あんたは何ヶ月も読んで来た訳だし、違和感ない呼び方が良いよね?……ユーマ……じゃ、オージャン、オーアル、ルーア、アール…」
「あ!アール、良いかもっ!あんまり違和感ないっ!」
「よし、じゃ、アールで!」
私と雅は満足そうに頷く。その様子にUMA…もとい、アールはやはり興味のないように呟く。
「別にどんな名でも構わないが…お前の読んでいるような小説で結構見たことある名だな。」
(本当だっ!過去に読んだ小説の登場人物に何人かいるわっ!)
「だから、違和感なかったのかー」
私は納得したように呟く。そんな私に雅もUMAも目を細めて遠くを見つめる。
「てへっ」
と、首を傾げて上目遣いで笑うと、今度は二人に冷ややかな視線を向けられた——




