6.掃除屋
ペティちゃんは掃除屋って聞いたことあるかい?
そう、テオのことだね。
掃除屋ってのは通り名みたいなもんさ。
この町の人なら冒険者でなくとも大抵の人が耳にしたことがある。周辺の村でも掃除屋って呼ばれる雑魚狩りがいると知っている人は多いだろうね。
掃除屋は雑魚狩り専門の冒険者。依頼を大量にこなしてギルドにごまをすった結果、ランク2の橙色の冒険者になった卑怯者。
そんなふうにいう冒険者もたまにいるね。
……ただ実際はちがうんだ。
テオは雑魚狩り専門なんかじゃあない。
テオがやっているのはその名の通り掃除さ。
ギルドには毎日大量の依頼がくる。
ドラゴンの討伐や遺跡、ダンジョンの調査。モンスターからとれる珍味の納品に商人の護衛。そして人に害をなすモンスターの討伐。内容から報酬まで本当に様々だ。
……冒険者というのは冒険を求め、夢を見た人がなるものだからね。ゴブリンやスライム、そして今回のビッグラットみたいなのは彼らのお眼鏡には適わないのさ。
戦って倒したところで自慢にはならないし、報酬も少ない。その割には数が多くて面倒。そんな依頼はやっぱり人気がない。新人の冒険者が受けるけれどそれじゃあ数が足りない。
受けられなかった依頼はそのまま。依頼をだした村や人は放置される。それで消えていった村はたくさんあるだろう。
ああ、間違っても冒険者を責めちゃいけないよ。彼らだって商売なんだ。命をかけて戦っても報酬が少ないなら、誰だって受けたくないだろう。
どうしても助けて欲しいなら報酬をたくさん出せばいい。それなら誰かしら依頼を受けてくれる。
ただ、どこの村だってそんなに裕福なわけじゃあない。その日の晩ご飯を食べるので精一杯な所もある。村中の金目のものをかき集めてやっと依頼を出せたという話もよく聞く。
そこでテオの出番だね。
テオは残された依頼を受ける。それがどんなに割に合わないものでも、危険なものだろうとね。
テオが訪れた後はギルドの掲示板に依頼は無い。だから掃除屋さ。
掃除屋を雑魚狩り専門と言う人はテオのことをよく知らないんだろうね。
残された依頼なら何だって受ける。実際に誰も手が出せなかった砂竜の討伐依頼を受けたし、ちゃんと依頼は達成した。
テオは冒険者ギルドが認めたれっきとした橙色の冒険者さ。