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5.魔法の才


 テオについて行くと、ギルドの裏手についた。


 どうやら馬車乗り場のようで多くの馬や御者、そして冒険に出かけるであろう冒険者たちがいた。

 人族にエルフ、竜人、ドワーフ、獣人、小人族など多くの種族が入り乱れていた。


 そんな中からテオは人族の男に向かって迷い無く歩いて行く。


 「トムさん、今日もお願いします」


 トムという名らしいこの男は。

 中肉中背で年齢は四十路といったところだろうか。白髪交じりの頭髪の上から帽子をかぶっている。口元にはたっぷりと蓄えた髭。


 トムはテオの声に気づくと帽子を外しながらぺこりと頭を下げる。

 頭を上げたときには目尻を下げた温和そうな笑みを浮かべていた。


 「おはよう、テオ。ギルドから手配はもらってるよ。今日は東の村だね。……おや、後ろの子は?」


 「この娘はペティ。今日から冒険者になったんです。今日の依頼に同行してもらいます」


 「えっと、はじめまして。ペティです」


 はい、よろしく。と言いながら再び頭を下げるトム。それに合わせてペティもちいさな頭を下げる。


 「とりあえず二人とも乗りなさい。こいつら早く動きたくて仕方ないらしい」


 トムの横に待つ二頭の馬を見ると、一頭は鼻息荒く、もう一頭はトムに頭をこすりつけている。

 鼻息はともかく、頭をこすりつけるのが催促なのだろうかと頭を捻るペティ。まぁ御者が言うのだから間違いは無いのだろうが。


 ともかく二人は馬車に乗り東の村を目指すことにした。




 「ペティ。今回の依頼の説明をしておく」


 「は、はい!」


 馬車に乗り東の村を目指す最中。ついにきたとペティは身構える。


 「今回の依頼は東の村からだ。東の村のすぐそばにある森があるんだが、そこにいるビッグラットの数が増えているらしい。村の作物に少し被害はでているけど、人的被害は今のところなし。これ以上の被害がでる前になんとかしてくれっていうものだ。……ビッグラットはわかるよな?」


 こくこくと頷きながら頭の中でビッグラットの事を思い出す。


 ビックラット。

 端的に言えばでかい鼠だ。どこにでもいるしなんでも食べる。外敵がいなければすぐに数も増える。今は無き故郷の村でもたまにでていた。特徴としては大きな歯としなやかな尻尾だろうか。歯は固く、顎の力も強いようで木の幹なども囓りとり、尻尾で打たれればまるで鞭打ちをくらったかのように腫れ上がる。


 「分かってるだろうけど気をつけるのは歯と尻尾。それから突進だ。奴らはでかいしそれなりに重い。結構な威力があるから、鎧を着ていない君は注意が必要だ」


 「わ、わかりました」


 「よし、次。使える魔法の種類と数、それからスキルを教えてくれ」


 「え、っと。回復魔法だとヒールのみで、光魔法のホーリーバリア、ブレッシングそれにホーリーライトが使えます。数は種類にもよりますけど日に五回です。……スキルはスマッシュだけです」


 「……五回か。優秀だね」


 テオに褒められ照れくさそうに髪をなでつけるペティ。

 ランク2、橙色の冒険者に褒められる。下手に周囲の人間に褒められるより信憑性は高いだろう。


 実際に魔法を日に五回扱えるのはランク4の緑色の冒険者くらいにならなければいない。緑色といえばそれなりに経験を積んだ中堅といった所だろうか。

 魔法は人が神から与えられた奇跡だ。魔力によって現実を改変する力。これのあるなしが生死を分けることになることも少なくない。使える回数が多ければ生還の確率も上がる。


 「ちなみに言っておくと俺は魔法を使えない。スキルは片手剣を一通りと盾スキルを少し使える。ここまでで質問は?」


 質問と言われペティは待ってましたと言わんばかりに声をあげる。


 「なんで橙色の冒険者のテオさんがビッグラットの依頼を受けてるんですか?」


 橙色と言えば例外を除けば上から数えて二番目の冒険者だ。本来なら大型の、それこそ酒場で誘われていたドラゴン退治の依頼を受けるような人たちだ。

 わざわざビッグラットのような初心者向けで、報酬も低い依頼を受ける必要も無い。


 ペティの質問を受け困ったなと後頭部をぽりぽりと掻くテオ。


 そんな雰囲気を感じ取ったか御者のトムがはっはっはと笑い声をあげる。


 「それについては私が話そうかね」


 たっぷりと蓄えた長い髭をなでつけながらトムは話し始めた。


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