寝ている間に異世界へ
俺は利根川夢人
夢を追いかけて欲しいという両親の願いはともかく、夢人などという名をつけるものだから俺の唯一の特技は寝ること。趣味も寝ることだ。
そんな俺だが、今日は珍しく寝坊せず遅刻することなく教室にたどり着いた。
こんなことは一年に数回あるかないかだ。
何か悪い事が起こらないと良いのだが。
時計を見ればまだ授業開始まで時間がある。もうひと眠りするか。
俺が教室でいつもの居眠りスタイルを取ろうとした時、
「あー、夢人君。また寝てるー」
俺の安眠を妨害する厄介な奴がやってきた。
渡辺優奈、愛らしいルックスと人懐っこい性格で、校内のマスコットとして絶大な人気がある。
静かにしていれば確かに可愛い、どこぞのアイドルグループに所属しても活躍できそうだ。
ただ幼馴染ということで、妙に俺の世話を焼きたがる困った奴だ。
そもそもこいつが側に来ると
「優奈、またその居眠り君を相手にしているのか」
やっぱり、優奈といつも共に行動している藤原楓がやって来た。
短い髪にボーイッシュな美顔で、男子以上に女子から人気がある。
見た目通りに性格もクールで、カッコイイという形容詞がピッタリ。
「朝からなにを騒いでいるの、優奈さん、藤原さん」
さらにもう一人、現れたのは一条麗香、俺達より一学年上の高校2年にも関わらずに既に生徒会長を務めている。
そのまま少年誌の表紙を飾ってもおかしくない容姿でスタイルも抜群という非の打ちどころ無いお嬢様、加えて成績も学年トップという完璧超人だ。
彼女に優奈と藤原楓を加えた3人が、この学校の三大美少女として校内はおろか市内でも有名で、よく他校の生徒が見物にやって来たりしている。
「あ、麗香さん。いい所に来てくれました。夢人君がまた居眠りをしていたんですよ」
「またなのですか、ゲームのやりすぎではないのですか」
「いえ、この居眠り君は夜更かしして睡眠時間を減らすなんて、もったいない事はしないはずです」
優奈が俺に構うと、仲の良い二人も自然と近くにやって来る。
その結果、居眠りをしている俺のすぐ側で、三人の美少女が俺の話題で盛り上がるという意味不明な状況が生まれてしまうのだ。
しかも本人の前で本人の事なのに、本人は全くの蚊帳の外というのもどういうことなのか。
クラスメイトの白い視線が俺に降り注ぐ。
まあいい、いつものことだ、俺には関係ない。
俺が再度眠りに入ろうとした時、いきなり教室がグラグラと揺れ始めた。
「キャア!じ、地震?」
「これは、大きいな」
「皆さん、落着いて、机の下に隠れてください」
「夢人君も早く・・って、寝てる場合じゃないでしょう」
次の瞬間、教室全体が崩れ落ちると、俺達は真っ逆さまに暗闇の中に落ちて行った。
こちらは現在書いている作品とは別に書いてみました。
何話か書いてみて、反響があれば続けるつもりです。