第53話 私、死にたいの!
おとうさん、おかあさん!
わたし、死にたいの!
死んでうまれかわって、このせかいへといきたいのっ。えへへ、どう?いいかんがえだとおもわないかなぁ。
――え?そんなことしちゃいけない?
……じゃあ、だったらどうするのよっっ!!!!
ほんきなんだから、わたし。もうこのほうほうしかないんだから、しょうがないじゃんかっ!!ほかになにかほうほうでも、あるっていうの…?
死ぬのはこわいけど、ここへといくには、いのちをすてなきゃいけない。わたしのせかいとここのせかいは、つくりがちがうから。おんなじせかいでも、まったくちがうから。だから、もういちどいちからやりなおさなきゃいけないの、わたしが。
だからふたりとも、わたしを殺してよぉ…。
べつにいいでしょ?
かわいいむすめがいってるんだからっ♪
それに、さぁ……。
死んでほしいんでしょ?
わたし。
私は、両親に嫌われていた。
両親も、お互いを嫌っていた。
なぜ早く離婚してくれないのか、それだけが不満で、不満で。幼い私にはとても苦痛だった。
しかも互いが仲悪いのを隠そうとする。苦痛でもあったけど、憎かった。
腹が立った。
私のことが嫌いなの、と尋ねたら…。
そんなことない、私たちはあなたをとても愛していますよという。
憎い。
嘘つき。
そんなのが通じるほど、私は子供じゃないの。
死んでほしい。
なぜは私が死ななければならないの?
こんな奴のために。
私は生きる。こんな両親のいない世界で生きる。
でも、両親がわざわざ死ななくてもいい方法があった。
この前、部屋を整理していたら見つかった本。
読んでみたら、泣けてきた。
辛いことがあっても、支えてくれる仲間たちがいるって素敵で…。
ここに行けば、私は、私を幸せにしてくれる人がいると思って、ここに行こうと決めた。
でも、問題があった。
物語の世界に行くには、自分が死ななければならない。
魂になって、ここの世界に行って、生まれ変わらなければいけなかった。
親にとっては都合のいいことだ。
だから私は殺してと、両親に頼んだ。
なのにいけませんと言われた。
私も負けじと殺してと言っていたら、部屋に閉じ込められた。
…そっか。
せめて最後に、両親の笑っている姿、見たかったのに。
しょうがないから、自分でやろう。
私はこうなることを予想して、小さな包丁を隠していたのだ。
これで、私は。
幸せになれるんだと思って―――――。
突き刺した。
そして気がつけば、200年生きた魔女として、ここにいたんだ。
そこでコウリンの話は終わった。
つまりコウリンは、現実世界では死んでいるということになる。
「まだ彼女の話は終わりじゃないんだ」
「…何?」
涼の一言で、コウリンは顔を上げて涼の方を見つめる。
「なぜ彼女の頬には、束縛者の印とは違う印が付いているのか。これはこの本が選んだからなんだ」
突然意味のわからないことを言い出す。今日だけで、良く分からないことをたくさん聞いているような気がする。
「初めてこの本に来たのが、彼女だ。それも自分の命を捨ててまでここに来たんだから、彼女の思いはとても強い。…本は彼女を本の力の源とした。だから本と同じ印がつき、そのあとから束縛者は次々と来た」
初めて彼女と出会ったとき、「私は特別なんだ」みたいなことを言っていたっけ、なんてふと和也は考える。
「特別だから、彼女は俺らと同じでもとの物語を知っていた。しかし、この本の重要キャラということで、それは全て消されていた。…たまに、予知夢なのかと疑うようなやつ、見たでしょう」
それ聞いて、コウリンはハッとする。
「だからお前は、私になぜそんなものを見るのかと問いかけてきたのか」
涼は頷きながら、まぁあの時に今のことが分かるとは思わないけどね、なんて言う。
ちょっとした意地悪だったのか。
「…でも、私はもう現実では死んでいるんだ。思い出した今、もう私は消えてしまうのだろう」
「そんな!!」
コウリンの手を握りしめていた手の力が強くなる。それに驚いてコウリンは和也を見たが、和也はむ無意識らしく気付いていない。
それにコウリンはため息交じりに笑った。
「まぁ、最期に自分をしれて良かったし…」
「え、死なないよ?」
静寂が訪れた。
「な、涼先輩?」
「コウリンは、死んではいないよ?」
死んではいない……?
「彼女は、意識不明のまま病院で入院中だよ?」
な、な、な!!
「なんですとぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」
「さっきまでの感動は一体…」
「カズヤなんだ、私に死んで欲しかったのか?」
「違う違う。でもちょっと、“王道”じゃん、みたいな…」
「禁句」
久しぶりのやり取りかも、何と思いつつ2人は顔を見合せて笑う。
「ホント。何でこんな“王道”展開になったのか、俺も知りたいよ」
「え…?」
聞き覚えのある声。
でもこの声は、この場面に似合わない、というかありえない声…である気がする。
和也の背筋に、ぞわぞわと寒気が襲った。
「こっち向いてよ、和也。お前の考えていることま間違ってないぜ?」
既にほかの者は向いているのか、ジュンガやコウリンからは「嘘…」、双子からは「誰だ?」、涼とライガは無言…、バラバラな反応だが、それだけで和也は分かってしまった。
なんで、どうして?
どうしてお前がここにいるんだ?
おれの背を始めて支えてくれた人。
親友だった………………。
「和也」
「と、刻、なのか……?」
彼、刻は。
いつも通りのイケメン顔で笑って、こっちを見ていた。
なぜ、彼がここにいるのか。
それは次回明らかになります。
まぁ、この前の裏話を読めば薄々気付く方もいるんではないでしょうか?
本当にこれで最終回間近、でいいんでしょうか?
意味分からないですよね、この展開…(泣)