第42話 太陽の世界
お久しぶりの更新です。
ホント、そろそろ真面目に書かないとラストスパートになっちゃいそうです^^;
「――――お前ら、なんでそんな状況なんだ……?」
目が覚めたコウリンな言った最初の一言はこれだった。
…当たり前だろう。今、和也の体はズタズタのボロボロ。あちらこちらから血が出ているし、まさに擦り傷切り傷どんとこい状態だ。一方ジュンガは泣いていたのか頬が濡れているし、眼が腫れている。しかもジュンガの爪には血が付いており、和也を傷つけたのはジュンガということになる。というかその通りだ。
さらにはっきり言って、和也はジュンガを押し倒している。
まさか自分の眠っている時にジュンガがもがき苦しんで叫び声をあげていたなど、普通は分からないだろう。むしろそれが分かった人はある意味凄いと思う。夢にでも出てきたか?
とにかくコウリンは状況がつかめずにいるわけで。
「いやぁ〜、ちょっとジュンガとお話をしていて……」
「オレは、その、何も、して、して、して、な、ななななななななな、ない、よ、よ??」
ジュンガは現在精神ともに動揺中で、言ってることも動揺中。表情がいかにも「何かあったぜ☆」と言っている。…というか、ジュンガはもともと隠すことは苦手なタイプだろうし。
「隠すなよ…?ジュンガ、君は一体なぜ泣いていたんだい?君は一体なぜ和也の下にいるんだい?君は一体なぜ血で汚れているんだい??」
「あああああああああああぁぁぁぁぁぁ……!!!!何でもないんだよぉぉぉ、今回は見逃してくれぇぇぇぇぇぇ……!!」
ぐちゃぐちゃだ。
今、ジュンガに何を言っても意味が分からない返答しかしないだろう。そんな彼をコウリンは怖い眼で睨んでいるが、和也はとにかくツボって笑いが治まらなかった。
楽しい。
なんて、なんて、楽しいんだろう。
すごく幸せ。
これで外が明るければ、もっと良かったのになぁ。
そう思いながら、和也は窓の外を見た。そこには真っ暗闇しかなく、たった今さっきまであっただろう太陽の姿はなかった。
――――その時。
「幸せなんて、こんな世界では生まれない」
どんっ!!
地震が起きた。雨が降った。雪が降った。霰が降った。風が荒れ狂った。雷がとどろいた。暑くなった。寒くなった。
ほんの数秒。
その間に自然現象が、一気に襲いかかった。
「カズヤ。束縛者が近くにいるぞ」
「わかってるコウリン。さっきの声は、女だった、よな…?」
「ちょっと待て、オレはまだ心の準備が……」
お前は何もしなくていい。
和也はそう心で言いながら、笑う。それは現在ジュンガがパ二くっているからではなく、やっと本当の自分に出会えたのだから、ゆっくりしてほしいと思ったからである。これ以上、誰も危険な目にあわせたくはない。
いろんな人が傷付いた。
今は幸せだ。
こんな世界で幸せは生まれない。
そんなことない。
おれは今、すっごく幸せなんだから。
「出て来いよ、束縛者!!おれが主人公なんだから、おれに勝負を仕掛けて来いよ!!」
「カズヤ!お前は怪我が…っ!」
「関係ないよ、コウリン。おれはここにいるんだ。おれだけを、攻撃してこればいいんだ」
和也はコウリンに呟くと、バンと勢いよくドアを開けて部屋から出ていく。それをコウリンとジュンガはぽかんとした表情で見送る。
どうやら彼は、成長したらしいが。
なんだかますます危なっかしくなったらしい。
「お前に任せるわけねぇよ。だったオレは、《相棒》だろうが」
オレらなら、出来るだろ?
和也は外へと出た。
真っ暗闇では綺麗なこの世界も見ることが出来ない。まだ風は強く、まるで嵐が来たような感じだ。
束縛者は、和也の目の前にいた。
「お前だな、太陽を消したのは」
ジッと和也が見つめると、少女も強い意志を抱いた眼をして見つめ返してきた。
「気付かせるの、私は。太陽がどれほど大切なものかを。この太陽を、自然を、壊しているのは誰かなのを」
暗闇の中で、8人目との戦いが始まった。




