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第40話 クライトコロ


お久しぶりです。

そろそろクライマックスに近ずいてるって感じなので、どんどんハイスピードで謎を明かしていこうと思います!

 姉、智代の夫となる人物は多少お金持ちらしい。

 来年ぐらいには一軒家を立てて家族で暮らすようだ。

 …そして和也はそこで住むことに決めた。

 夫となる彼はとても優しく、和也はこれなら大丈夫かな、なんて安心した。そんな弟の姿を見て、智世は苦笑する。

 彼に愛情のこもった姉の眼差しが向けられる。

 そして彼は笑う。


 和也はやっと。

 ――――16年経って、初めて家族というものを味わうことが出来た。


 しかし幸せな時間はあっという間だった。

 一ヶ月たったある日、気が付けば和也たちは本の世界へと強制移動させられていた。ずっと心配していたのだろうか、レントが青ざめた顔で和也たちの元へと駆け寄ってきた。「みんな無事か?」と眉間に皺を寄せて聞いてくるレントに、和也はは笑って「平気」と答えた。

 レントは、納得いったのか表情を明るくさせて、ほっと一息ついて頷いた。

 相変わらず、レントは人一倍優しい奴だと思った。それは今まで彼がひとりきりだったから、辛い思いが人一倍分かるから、そんな思いを味あわせたくないから、なのだろう。もう、彼は罪滅ぼしのためにやっているだけではない。

 ちゃんと自分の意思で。

 そう思うと、和也は自然に口元が緩んだ。


 重たいモノがなくなった気分だ。


 これまでずっと抱え込んでいたモノが、全てなくなったからなのだろうか?

 世界が輝いて見える。太陽の光が暖かくて、ゆったりと流れるように吹く風が心地よくて。初めてここに来たときも思ったが、やっぱりこの世界は自然にあふれる綺麗なところだ。

 ただ、モンスターや束縛者がいることが、唯一危険なことだろう。

 束縛者はあと3人。もうモンスターを生み出すだけではない。ハルマのように人の内部、心まで見てしまうような強い力を持つ者もいる。…正直言って、何でも出来るような。

 さすが“王道”。


「カズヤ君」

「…涼先輩…」

 宿の外に出ている和也に、笑いながら涼が歩み寄ってきた。いつものように笑っているが、なぜか今日は嘘臭くない気がした。

 ちょっとだけ違和感がある。

 嘘臭くない先輩の笑顔は、なんだかちょっと悲しそうにも見えた。

「どう?今まで自分を縛ってきた苦しみから、解放された気分は。束縛者たちはね、みんなこんな思いでこれまで生きてきて、君に解放されたんだ。君もある意味、束縛者たちと同じ思いを味わってたんだ」

 そう涼に言われたが、和也はいまいちピンとこない。こんなにいいことをしていたのだろうか?こんな、すがすがしい思いを、あまりにも心が軽くなって、なんだか堪えていた涙をこぼしてしまいそうな、こんな凄い思いを、自分はしていたのだろうか。

「解放されたってことは、そうなんだよ?」

「あ……」

 和也の心を呼んだかのように、涼は笑いながら言った。それを聞いて、う〜んと唸りたい気分だが納得した。

 もし、そんな気持ちにさせていたのなら、それは嬉しい。自分にそんな力があるのなら。

「でも、まだ油断はしないでね」

 一瞬の静寂。

「え――――??」

 和也は涼の眼を見た。涼は自分を見ておらず、どこか遠くを見ているような、そんな表情をしている。


「まだ君の回りには、救わなければいけない人がいる」


 自分だけが幸せに、なっちゃダメだよね?


 立ち上がった涼に、和也は何も声をかけれなかった。


 ―――――――――――――――


 誰か。

 誰か、誰か。

 おれって。

 ――おれってさぁ……。


 強い?


「――――――っっ!!!!」

 ガバッとベットから飛び起きたのはジュンガだった。いつのまにか寝ていたようだ。寝汗が酷い、なんて自分でもすぐ分かった。額がビトッとしていて、そこに前髪がくっついている。

 心も体も、ぐちゃぐちゃしていて気持ち悪い……。

 ジュンガはベットから降りると、今何時か時計を読みようと思った。辺りは暗い。もうそんな時間だろうか?

 …………そして、ジュンガは首をかしげた。


 時刻は午前10時。


 外は真っ暗だ。

 すぐさまジュンガは不審に思って部屋から飛び出した。

「おい、カズヤ!!コウリン!!…ってお前らも寝てんのか!?早く起きろ、外がおかしいぞ!!」

 2人の体を揺さぶってジュンガが叫ぶように呼びかけると、うう、と唸りながら2人は身を捩った。

 最初に目が覚めたのは和也で、「そとぉ?」とかぶつぶつ言いながら窓から外を見た。

 そして言葉を失った。

「今、何時?」

「午前10時だ」

 外は本当に真っ暗で明かりもない。

 まるで。


「太陽がないみたいだ」


 光が、ない。

 その時。


「――――っっくぅっ!?!?」


 ジュンガが身を捩った。

 どくどくと胸が鳴る。それと当時にぞわぞわと寒気が体中を走ったり、ぐらぐらとめまいがした。よく分からない。でも、ジュンガは今怖かった。

 怖い。


 この感情は何?

 この感情は恐怖。

 なぜ恐怖を感じる?

 思いだしたくないことを思い出してしまいそうだから。


 ねぇ。

 おれって…――――。


「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」


 ジュンガは床に倒れて、暴れだした。コウリンは眠っている。和也は訳が分からず、ジュンガの体をぎゅっと包み込むように抱え込む。それでもジュンガは暴れることをやめようとせず、我を忘れたかのように叫び声を上げた。

「ジュンガ!!おい、ジュンガ、ジュンガっ!!!!」

 呼び続けると、彼は。


 涙を流した。


「クライ、コワイ、ヨワイ、ツヨイ、……シニタイ」


 その瞬間。

 和也の意識はぷつんと切れた。

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