裏話 その時彼らは
本編とちょっと関係ある
短い裏話です。
良かった良かった。
笑顔で帰っていく姉弟を見ながら、刻はニコニコしながら見送っていた。
これで俺がやらなきゃいけないことは、ちゃんとやったかな?
すれ違い続けた彼らが、再び出会ったのは彼の存在があったから。彼という存在で、彼らの運命は大きく変わったと言っていいかもしれない。
刻はフッと笑った。
俺がいたから、かぁ……。
もしかしたら、…――だったのにねぇ……?
心の中で呟いて、刻は後ろをふと向いた。
そこには一人の青年が立っている。
「話をするのは、初めてかな?」
「そうですね…。顔は見たことありますしね、生徒会長さん」
ニコリと笑う2人の男。
刻の目の前にいるものは、彼らの通う高校の生徒会長である、緑川涼だった。涼しい笑みを浮かべているが、どうも刻と同じような種類の人間で、眼が笑っていないようで嘘臭い。
刻の近くで揺れるブランコへと座ると、涼は彼を見つめて笑う。
「彼はどう?」
彼とは、あいつしかいない。
「和也、すごくいい子でしょう?智世さんの話を聞いた後も、自分が悪いんだと反省して、ちゃんと謝ったしね。…まぁ、それが彼の弱点なんだけども」
「そうだね。彼は素直すぎて困るよ。その分仲間たちがしっかりしているからいいんだけども、純牙や紅燐とか。でも彼らも彼らで凄く脆いんだけど」
高校生2人がブランコで揺れながら話す。
いつの間にか、彼らの表情は真剣なものになっていた。
「やっていけそうかな、彼は?」
刻が聞く。
涼は笑った。
「さあ?結末はどうなるかなんて、ただ1人しか知らないでしょうが」
それを聞いて、刻はため息まじりに笑って……。
「もう違うんですよ、元祖とは」
それだけを話して、涼は満足そうに頷いて去っていった。
刻はその背中を見送る。
和也。
君の16年間の悩みは、全て解決されただろう?
自分だけでいいのかい?
君の回りには、まだ悩みを抱いている者がいるだろう?
じゃぁ、助けてあげなきゃ。
「だって君は」
――――主人公なんだろう?
風が吹いた。
一瞬の間に、刻の表情は切なそうに歪んだ。
けれど、笑っていた。
はてさて。
刻に和也は何も話してないですよね?
なのになぜ彼は知ってるんでしょうか。
彼の存在を。
そして涼との関係も複雑なようで、案外大したことなかったりして。
次からまた本編を更新していきます!
大きく物語が動くので、よろしければお見逃しなく!