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第37話 嫌な予感


お久しぶりです。

今までのお話の中で、一番暖かくなる予定。

そんな今回のお話です。

 7人目の束縛者についても、一件落着。

 そしてまた強制的になのだが、元の現実の世界の方へと帰ることになった。

 久しぶりに帰れるので、和也はゆっくりしたいなぁなんて思っているのだが、なぜかレントの表情は重く、暗い。

「どうしたんだ、レント。みんなもうお前のことを仲間だと思っているし、安心しろよ。おれを守るとか言ってるけど、あっちじゃそんな危ないことは起こらないからさ。むしろこっちの方が危ないから気をつけろよ?…すぐ帰ってくるし――」

「嫌な予感がする」

「……え?」

 和也の言葉をさえぎって、レントはじっと彼の眼を見つめていった。

 彼の眼は真剣だ。

「どうして俺はそっちへ行けないのか。この本のルールを恨む…」

 吐き捨てるように言う彼の姿を見て、和也はちょっとだけ不安になる。彼は帰ろうと思えば帰ることが出来るはず。彼が和也たちと一緒に強制的に帰れないのは、本が帰る必要がないと思っているから。つまり彼は、和也をこのまま守りたいのなら、本の中にいなければいけないのだ。

 もどかしい。

 本から出れるのに、出ることが出来ない。

「オレも、ちょっと嫌な予感がする」

 レントが悩んでいる時に、ジュンガが一言言ってきた。彼には獣にとっては重要な、野生のカンが備わっている。彼がそういうのなら、もしかしたら本当に嫌なことが起きるかもしれない。

「でも大丈夫だ。オレとコウリンがしっかり和也を守るし。向こうでも和也の味方はちゃんといるからさ!レントはここ最近、オレらのために動いてくれたから、ゆっくり休んどけ!!」

 二カッと笑うジュンガ。レントは、自分のせいで怪我を負った仲間のためにたくさん動いていた。怪我の方はみんな治ってきているので問題はないが、レントが今度倒れてしまったら意味がない。

「でも……」

「安心しろ。いざという時はジュンガが体をはる」

「コウリンっ!!!!オレはいつの間にそういう扱いに…っ!!」

 ニヤニヤしながらコウリンが言う。それにジュンガがぎゃんぎゃん騒ぎ、和也はコウリンの味方になって遊ぶ。

 こんな風景を見ていたら、嫌な予感が当たっても大丈夫かもしれない。

 レントはそこでやっと笑えた。


 そして彼らを見送った。


 久々の家。

 涼たちは帰ったとたんにどこかへと姿を消した。まぁ、彼なりにをやりたいことはあるだろうし、和也は笑って見送った。

 そして和也は玄関のドアを開けた。

 もともと戻ってきたときの場所は学校。始めて涼の姿をしっかりと見た時の場所だった。その時は学校はもう終わっていたのですぐに帰ってこれた。

 で、帰ってきて家の中が騒がしい。

 学校に言っていた時に、何かあったのだろうか。

 笑い声に、和也はうんざりとなる。

「ただいま」

 そう一言言って自分の部屋へと行こうとした、時だ。


「待って、和也」


 何故か姉である、智世に呼びとめられた。彼女に腕を掴まれてリビングへと連行される。

 リビングへはいると、両親と一緒に見知らぬ青年がいた。

 そう言えば、玄関に知らない靴があった気もしたが……。

 両親の表情は明るくて、青年の表情は少し硬いが、笑っていた。和也の後ろにいる、純牙(ジュンガ)紅燐(コウリン)の表情は、後ろを向ける状況じゃないので分からない。ただ、動揺はしている感じではあった。

「和也、聞いてね」

 静かな声で、でも震えた声で智世は言った。


「私、この人と結婚するの」


 もうすぐ20歳になるし、私。

 そう、彼女は言った。

 言ったのだ。

 ……結婚(・・)、いきなりそんなことを。

 和也は息を呑んで、声が出なかった。それは純牙と紅燐も同じ様子で。

 視界がぐらぐらした。

 これが、レントと純牙が感じた嫌な予感の正体…?

 こんなのさぁ、守れるわけないじゃんか。

 おれを。

「はぁ?あんた刻のファンじゃないの?」

「いつまでも刻くんのファンな訳ないでしょ。だし、ファンと好きの感情は違うのよ…?」

 知らねぇよ。

 知らない知らない知らない知らない。


「――――何でもかんでも勝手に決めやがって。いつもおれを無視して、おれは追いつけねぇよ。いや、追いつきたくもないね!!こんなの、もううんざりなんだよ。コロコロ気持ちが変わっていくような女が、最後まで幸せになれるわけないじゃんか。…いい加減にしろよ!!!!いい加減、おれの気持ち考えて行動しろよ!!………この、自己中女!!!!!!!」


 何10年の恨みや悲しみや怒りを込めた、そんな一言だった。

 勝手なんだよ、あいつは。

 勝手すぎて、おれは彼女に対してどんな感情を抱けばいいのか分からなくなった。

 分からないから、彼女を嫌いになった。

 嫌い。大っ嫌い。

 一生恨んでやる、おれの人生をめちゃくちゃにした彼女を。

 いいや。


 あの家族を、一生、金輪際!!!!


 バタバタと和也は家を飛び出した。

 純牙と紅燐はただ彼の後姿を見送ることしか出来ない。…彼らだけじゃなく、その場にいた全員が。

 智世もその一人だ。

 彼女はがくんと、ひざから崩れ落ちた。

 俯き、震え、自分の弟のことを考える。

 自分のせい。それは分かっているんだ。

「――――っっ!!!!」

 だから涙が溢れ出す。


 自分じゃダメだから。

 今は()に頼るしかない。


 苦しい時は、ここにおいでよ。

 そう言って、あいつは自分を受け入れてくれた。

 おれにとって特別な人。

 彼がいたからこそ、俺はここにいる。


「和也。やっぱり来たんだ…」


 公園。

 ブランコに腰をかけて、和也の方を見て優しく笑う彼。

 昔自分に手を伸ばした最初の人物で。

 弱い自分が傷つけてしまっても。

 笑って仲間へと入れてくれた。

 今までずっと一緒にいて。

 自分がここの世界で唯一信用できる。

 だから下の名前で呼べる。

 そんな彼。


「……刻、お前なんでここに来るって…?」

「約束したじゃん。苦しい時はおいでって、昔ね」


 笑う彼、刻は。

 やっぱり昔から変わらない。

今のところ暖かくないのですが。

とりあえず、次回、刻と智代と和也の関係が明らかになり、和也の過去完結、となります。

愛情、そんな感情を和也はどう思うんでしょう?

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