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第35話 偽りの幸せ


超お久しぶりな投稿になってしまいました><

7人目完結までこの話を入れて後2話ですので

お付き合いの方、よろしくお願いしますm(__)m

 ……なんでこいつだけ。

 なんでこいつだけなんだよ。

 どうして俺は、俺は……――――!!!!


「カズヤ、お前は今、幸せって言えるの…?」

「ああ。もう昔とは違うんでね。主人公なんてオーラは自分出せてないから、誰もそんなこと気にするはずないし、もし気にしてても……」

 そう言いながら和也はジュンガの方を見る。彼はにやりと笑っていて、和也も少しつられた。

「こいつだけは、おれの中身を見てくれる」

「オレだけじゃなくて、コウリンも双子も、…とくにレントはお前を見ているよ?」

 ジュンガがレントの話題を出したので、少し驚きながらも和也はふわっと笑った。

 良かった。

 もうレントもちゃんとした仲間として認められてるんだ。

 暖かい空気が流れ、和也はこんな素敵な環境は初めてだと思った。悩みとか、そういうものを抱え込まずに、こうやって笑える日なんて、一生来ないと思っていたから。

 そして、そんな素敵な空気だからこそ、一瞬でぶち壊されて、儚く消え去ってしまうのだ。


「いつまでもこんな風でいられると思うなよ」


 ふとハルマがぼそりと一言つぶやく。その言葉で和也たちの表情がひくりと固まる。

 ハルマの表情は、まるで死神のようだった。

 笑っているけど、笑っていない。眼が死んでいる。

 完全に彼は壊れてしまっている。

「どうせお前は助けてもらうことしか出来ないんだ。自分で這い上がることもできなくて、結局誰かがいなければ弱いまま。お前は独りじゃ何もできない人間なんだ。…だからっ!!」

 ハルマは一瞬で部屋のドアの前に行くと、嗤った。


「今度は人を助けてみろよ。人生最大のトラウマに苦しむ心を、さ?」


 そう言った途端に部屋を出て行く彼を、しばらく呆然としながら2人は見送った。…しかしふと気付く。

 今動くことのできない人間は、コウリンだけだって。

「コウリンっ!!」

 彼らも部屋をバタバタと出て行く。けれどコウリンの元へ着く前に、「ぎゃああああぁぁぁあぁああぁ」と悲鳴が響きわたった。

 和也は怖くなった。なぜだろうか、ぞわぞわとして寒気が止まらない。先ほど泣いたのにまたワッとうずくまりながら泣いてしまいそうだ。

「どうしようジュンガ、おれ今すっごく怖い。怖くて死にそうだ」

 コウリンの部屋に近ずくほど、怖くて怖くて倒れそうになる。

 もしかして、おれがいつもこんな状態になった時、ジュンガもこんな不安な気持ちになったりしてるのかな…?

 って、ちょっと調子に乗ってんのかな、おれ…?

 そうこうしているうちに、コウリンの部屋へときた。ハルマは和也たちに気づいたらしく、2人の顔を見てにたりと笑った。そしてコウリンは…………。


 まるで死んだようだった。


 眼に光はなく、虚ろ。呻き声も苦しんでいる様子もなく、ただベットの上に寝ていてぴくりとも動かない。ただ、どんどん顔が青くなるだけで他に変化はなかった。

「おれの時も、だった…?」

「ああ。最初見た時は体中が動かせなくなった。…マジで怖くて死ぬかと思った、オレが」

「……」

 なのにジュンガはそんな恐怖心に負けないで、おれのところまで行って助けてくれたんだ。

 そう思うと、和也は泣きそうになりながらも、嬉しかった。

 おれだって、そんな彼の思いに負けないほど、コウリンのことを思っている。

 だからいける。

 彼女の元に。

「お前がそんなんじゃダメだろ、コウリン……?」

 和也が彼女の体に触れた途端、ハルマはにやりと笑った。


「カズヤ…?」

「コウリン、あれっ…?お前の過去は?」

 彼女の中へと来たが、そこは真っ暗闇で何もないところだった。和也みたいに幼いころの自分がいるわけでもなく、大切な人がいるわけでもなく、そもそも人や物の気配さえも感じられない。

「私は分からない。200ちょい生きてきて、もう昔のことなんて覚えていないさ。覚えているのは、大体20年前から今まで。だから、もしあの束縛者が私を苦しめようとしていても無意味なんだよ。何も覚えていないから、過去の幻なんて視ることはない」

 青ざめた顔でフッと笑い彼女の弱々しい姿を見て、和也は少し違和感を感じる。

 何も覚えていないからこそ、怖いんじゃないの?

 まぁ、特に何もない様子だったので、和也はホッと一安心して、コウリンに「帰ろ?」と言おうとした、時。

 真っ暗闇だった世界が、ぐにゃりと歪んだ。


 ――――――――。

 

 おとうさん、おかあさん!

 わたし、死にたいの!

 死んでうまれかわって、このせかいへといきたいのっ。えへへ、どう?いいかんがえだとおもわないかなぁ。

 ――え?そんなことしちゃいけない?

 ……じゃあ、だったらどうするのよっっ!!!!

 ほんきなんだから、わたし。もうこのほうほうしかないんだから、しょうがないじゃんかっ!!ほかになにかほうほうでも、あるっていうの…?

 死ぬのはこわいけど、ここへといくには、いのちをすてなきゃいけない。わたしのせかいとここのせかいは、つくりがちがうから。おんなじせかいでも、まったくちがうから。だから、もういちどいちからやりなおさなきゃいけないの、わたしが。

 だからふたりとも、わたしを殺してよぉ…。

 べつにいいでしょ?

 かわいいむすめがいってるんだからっ♪


 それに、さぁ……。


 死んでほしいんでしょ?

 わたし。


「いやあ゛゛ああああ゛あ゛あぁっぁあぁあ゛あぁあ゛ぁあああ゛っぁああ゛あっぁぁあああ゛あっっ!!!!」


 コウリンの奇声が響きわたった。

 『叫び』じゃなくて『奇声』だ。まるで、壊れたおもちゃのように止まることもなく、勢いも涙も何もかもが、自分の意思じゃないように溢れ出す。こんな風になったコウリンを見るのは初めてで、和也は手が出せない。

 覚えてない、と彼女は言った。

 けれど彼女が知らないだけで、やっぱり昔のことは覚えているんだ。中身じゃなくて外見、つまり体の方が。そして彼女は、その過去を知ることを恐れている。

 これがトラウマ。

 和也がこれまで1人で、独りで、ただ自分のことを嫌って、誰かを求めるにはその誰かを困らせなきゃいけない、そんな自分が本当に嫌いなことを、自分で自覚してしまうのが怖くて。

 そうして壊れてしまった、それと同じなのだろう。

 だから自分が助けてあげなきゃいけない。

 けれど壊れていく彼女の肩を、自分がどうやって支えてあげたらいいのだろう。

 これまでの束縛者と違うのだ。何一つ共通点が見当たらないし、まず、コウリンに何があったのかさえ分からない。


 ただ、呼びかけることしか出来ない。


「コウリン、コウリンっ!!!!なぁ、こっちに戻ってきてくれよ、コウリンっ!!おれ一体どうしたらいいか分からないんだ、コウリン!」

 肩を揺さぶり、彼女の眼を見つめて和也は叫んだ。叫んでも彼女は全く反応せず、ただ呻き声をあげている。

 どうしたらいいのか分からなくて、和也は怖くなって涙があふれだした。

 苦しいのはコウリンなのに、なんで自分が弱気になってんだよ。おれが泣いてちゃ、おれが泣いてたら、コウリンだってどうしたらいいか分からないじゃないか…っ!!


「おれは、おれはへなちょこなんだよ!!だからお前が助けてくれよ、コウリン――――っっ!!!!!!!!」


 誰かに助けてもらわないと、自分はなにも出来ないんだ。

 コウリンやジュンガや双子や、レントと一緒にいないと、自分は何もできずにただ泣くことしか出来なくなってしまう。

 だからコウリンたちを失うことが嫌だ。

 何もできなくなってしまうし、誰も頼らずに生きていくことが出来るようになるためには、彼女たちが必要だから。

 そして大切な人だから。

 みんな幸せになって、先ほどジュンガと味わったあの、暖かくて幸せで素敵な空気を、もう一度味わいたい。

 だから戻ってきてほしい。

 思いだすのが嫌なら、無理にやらなくていいんだから。

 いつか自然に思いだして、「こんなこともあったなぁ…」みたいな思いで受け止められるようになるまで、思い出さなければいいんだ。

 だから、だからだからだからだからだからだからっっ!!!!


「それまでおれを、助けてください……っ!!」


「しょうがない奴だな、お前は」


 辺りが、明るくなった。

はいっ☆←

というわけでとりあえず終わりです。

もうこのままのテンションで

続きの方も読んじゃってくださいな♪


…せっかくのいいムードも、最近キャラのセリフでぶっ壊れてる気もします(汗

ここも“王道”ってことで、ね?

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