第23話 1コ上の彼
久々の投稿です。
どんどんグロくなるので注意してください!
……血が舞った。
視界は真っ赤に染められて、音を立ててアレが落ちる。
生首。
苦痛にゆがんた表情で、どこか遠くを見つめたまま……。
首のない体もどさりと落ちる。…その隣には、首がちゃんと付いた体も倒れていた。
ふたつの体から、じわじわと血があふれだし、止まらない。
――――彼女は見たのだ。
見知った少年二人が倒れていて…。
傍には血で汚れた刀を持つ少年が、無表情で立っているのを。
「うわあああああああぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁっっ!!」
彼女は手を伸ばし、叫んだ。
伸ばした手はすぐ、一人の少年が握りしめる。
「コウリン!?」
「……っ!!」
コウリンは我に返り、少年、和也の方を見つめた。
コウリンの頬は真っ青になっており、体中ががたがたと震えていた。…先ほどの夢が、あまりにもリアルで、怖すぎたから。
――倒れていたのは、エンブとランブという双子だった。
一体何があったのかは分からないけれど、2人がなぜか倒れて…、死んでいたのだ。
思いだし、また震えだすコウリンの方に体を乗り出し、和也はう〜んと眉をひそめる。
「どうしたんだコウリン。…大丈夫なのか?」
彼女がいきなり叫ぶなんて初めてだ。それだけ辛い夢でも見たのだろうか…?和也は何もわからず、ただコウリンの顔を見つめることしか出来ずにいた。
そして、顔を見つめて聞くだけじゃ、何もならないのである。
「だ、大丈夫だ…。なんでもない…」
彼女は青い顔のまま、そう答えただけだった。
ああ、やっぱり自分は無力だ。
――――双子が色々あって、コウリンが叫んでから1ヶ月。
双子とも、コウリンとも、そしてジュンガとも、なんだか気まずい感じになってしまった。
ジュンガにビンタされ、和也は思わず叫んでしまった。
『なんなんだよぉ…っ!!』
つい、自分の心の内が出てしまった。そして、伝え方が最も最悪な伝え方だった。まるで八つ当たり、否、八つ当たりをしてしまった。自分が無力で、自分じゃ分からなくなって、助けようとした人に向かって、このむしゃくしゃした気持ちをぶつけてしまった。
すべて自分が悪いのだ。
そして今、学校でジュンガと並んで歩いていたのだが、さすがに気まずくなってきたので足を速めたところだった。
そして、考え事をしていたからか、ぼーっとしていたらしい。
「和也!!」
急にジュンガに呼びとめられて、和也はビクンとはねて前を見た。
視界には人の影が……。
ドンッ。
ふらっと和也は衝撃で倒れかけた…が、自分の手を引っ張るものがいたので、危うく尻もちは避けられた。
手を掴み、「大丈夫?」と自分に向けられた優しい声。
その主を見て、和也は目を丸くした。
その人は、4人目の束縛者の時に、束縛者のところまで連れて行ってくれた彼だった。
和也は、声を出す間もなく、強制移動させられた。
本の世界。
制服ではなく、久しぶりに着た本の中での服。最初はこちらへ来ても制服のままだったが、いつの間にか自動的に着替えているようになった。…なぜかは分からないが、面倒が減ったのでよしとする。
そして、彼と、もう1人もいた。
彼は先ほど助けてくれた少年だが、もう1人は今、初めて見る。幽霊みたいに体が透けていて、どこがジュンガに似ているような雰囲気……。
「リョウ、大丈夫ですか」
訂正。
…外見だけで、中身は全く似ていない(耳がないのが不思議だけど)。
彼らの名前は、緑川 涼と緑川 雷牙。
現実世界では生徒会長と書記。しかも従兄弟で1コ上の先輩。
でもって本の世界じゃ《相棒》もち。
……ツッコむ気にもなれん。
『やすらぎの宿』に行くと、リンカ一家は快く受け入れてくれた。涼もニコリとスマイルを浮かべてあいさつし、ライガも礼儀というものを知っているのでぺこりと頭を下げた。…どっかの化身とは大違いだ。
ジュンガはちょっと不機嫌そうな表情でどこかへと行き、コウリンは無表情だが和也の傍にいた。…なんだか、色々と知っている人たちには評判が悪いみたいだった。
特に評判が悪かったのは双子だ。
エンブとランブ、特にエンブはむす〜〜〜とした表情で彼ら2人を睨みつけていた。…本人は気にせずにニコニコしていたが。
「どうしたのさ」
「何か…ね」
和也にそっけなく答えると、エンブはプイとそっぽを向いた。
するといきなり、涼は思い出したように言いだした。
「ああ、君らか〜。『超危険人物』って言う2人は」
エンブの表情が、凍りついた。
「てめぇ!!ふざけんなよ!?」
「エンブ!!」
拳を握ったエンブを一言で止めたのは、ランブだった。ランブは苦笑いをしながら続ける。
「もう終わったんだし。和也のおかげでね。だから別に、怒る必要なんかないんだよ」
そんなランブを見て、涼はうっすらと笑みを浮かべてまた話し始めた。
ゆっくりで、へにゃんとした感じで。
「あー、今はさ、『暗殺者』が騒ぎを起こしてるって」
一瞬、何かが止まった。
「殺して殺して殺して殺して殺して殺して。プレゼントは死体の人形と血の海。まるで小さな子が喜ぶようなプレゼントだよね?」
一部の言葉をなくせばだが。
涼は無表情に近い笑みで、どこからか写真を取り出して見せた。
「そして《10人の束縛者》」
写真には、少年が写っていた。歳は同じぐらいだろうか。
血まみれで顔が汚れていたが、確かに少年の頬には印がついていた。
すごく、冷たい目。
そしてその彼の姿に、絶叫する者がいた。
「ぎゃああああああぁぁぁっぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁっぁぁぁぁっっ!!!!」
ランブは、狂いだした。