一章八話目、訓練初日午後~偽る翠と蒼の孤独〜おまけ
以前活動報告に挙げましたほぼ会話文の話です。
歌乃視点のお風呂の話です。
「ただいまー」
「お帰り、歌ちゃ……お姫様抱っこ、だと……確かに歌ちゃんはお姫様みたいに可愛いけども!」
「とりあえず遼は両目に治癒かけたら? フェールさん、運んで頂いてありがとうございました」
「礼には及びません。それでは失礼します」
「おやすみなさい」
「葵、歌ちゃんが冷たい……でも、それが快感になりそう……」
「歌乃ちゃんが可愛いのは同意だわ。だけど、遼は頭に治癒をかけた方がいいと思うの」
「親友二人からの辛辣な台詞! あ、ねぇねぇ、歌ちゃん! 今のはどういうこと!? なんか『ナントカのばら』みたいだったよ!」
「あれもフランスが舞台だっけ……フェールさんは、急にステータスが上がり過ぎて、力加減が分からなくて派手にコケたから送ってくれたの。お風呂どうしよう、体はなんとかなりそうだけど……髪は、髪だけは……」
「歌ちゃん伸ばしてるもんねー」
「短いのも可愛かったけど、今の長いのも可愛いわ」
「ありがとう。百合ちゃん以外に切られるのが嫌なのもあるけど、抜けたり切ったりするのが怖い。髪は貴重な資源です」
「伽羅橋さん……」
「あ。(先生は私のハゲ知ってるんだっけ)……先生、私の頭洗ってくれます?」
「え、えぇぇ……か、伽羅橋さん? あの」
「綺麗に生えてますよ、髪」
「……では洗わせてください。『見た目と違って上手い指使い』と言われたこともあるので」
「ああ……ありがとうございます」
「ずるいずるい! ミニ子ちゃんばっかずるい! 歌ちゃん、私も歌ちゃんの髪洗いたい!」
「いやでも何回も洗うと痛むし」
「そんなぁ!」
「それなら、歌乃ちゃん。背中流させてあげたら?」
「背中なら……」
「え!? わ、私が歌ちゃんの柔肌に触れてもいいんですかい?」
「遼、言い方がおっさんっぽい。別に背中なら構わないから」
「ごめんなさい! そしてありがとう!」
「では、そろそろ行きませんか? 夜も遅いですし」
「うわ、もう十一時近い……すみません、先生。行きましょう」
「歌ちゃん、抱っこは私が……あああ、葵ぃ! 何で葵が抱っこなのー!」
「私だって歌乃ちゃんをお世話する役割が欲しいの。洗髪は小森先生で、背中を流すのが遼なら運ぶのは私でいいでしょう?」
「ぐぬぬ……なんて隙のない理論武装……負けた!」
「うん、勝ち負けはいいから早く行こう? 明日も早いんだし」
「ごめんなさい」
「歌ちゃーん、力加減強くないー?」
「んー、もうちょっと強く」
「伽羅橋さん、痒い所はないですか?」
「大丈夫です……本当に頭皮マッサージ上手いですね」
「ありがとうございます」
「歌ちゃん、これくらい?」
「あ、ちょうどいい。ありがとう、遼」
まさか同時に洗われるとは思わなかった。
ロリ顔の先生の立派な大人である証拠が、私の目の前でふるふると揺れている。
思わず、ぺたぺたと自分の胸部を確認してしまう。うん、真っ平だ。
これが胸囲の格差社会という奴か。
「ふふ。歌乃ちゃん、そうしていると三姉妹みたいよ」
葵ちゃん、それは胸を見て言っているのかな?
お読み頂きありがとうございました。