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視線の正体

それは、僕の嫌いな授業である体育の時間で起きたことだ。


よくあることだと思うのだが、1人に対して複数人でいじる集団がいて、そいつらは「じゃれているだけ」なのか「いじめ」ているのか分からない。

そのひとりの方もわざわざそうして貰えるように動いている所がある。彼が何を思っているかは知らないが。


どちらもwin、winというやつだと思うのでで誰も注意しないし、僕自身彼らがそれでいいならわざわざ邪魔する必要も無いだろう。いつもそう考えてきた。

でも、その1人の方が今日は休みらしく、複数人の方がなんとなくつまんなさそうにしている。

お前らは恋人か?などと勝手に考えて顔には出さずに笑うが、嫌な予感が急にしてきた。


今日はグループになって何かをする授業らしく、いつもの如く周りを見て合わせようとした時だ。


僕が入るグループには上記した集団の中心っぽいやつとそいつに媚びへつらうような奴らだけがいる構成だった。


「おい、根暗。」


彼らの話し声が聞こえ、ふと考える。

スポーツ少年ばっかりいるようなあの集団に、根暗と言われるような人はいただろうか…?

それより何をするかを周りから見なければ。


どうやらボールを持ってきて6、7人のうち4人はその他の人を囲むようにして、ボールをその4人でキャッチボールのように投げ合い、残りの2、3人がそのボールを取ろうとする。といった鳥かごとでも言いそうな練習をするそうだ。


「何無視してんだよ」


どういうことだろうか?自分をグループの他の人らが見ている。


ああ、そういうことか。そういう自覚はなかったな。


「いきなり根暗って言われても誰もわかりゃしないだろうに…何?」


どうやら僕のことを根暗と言っているようだった。

精神的に初対面の奴をそういう呼び方するのはどうなのか。


「ボール取ってこいよボール。やっぱ根暗キモオタだからそんなことも出来ないんでちゅかー?はい十、九、八」


はぁ、全く、こいつらは自分から動こうともしないし、人に物事を頼む態度ってやつがあるだろう。

それに赤ちゃん言葉とか余計に馬鹿っぽく見えるぞ。

それにキモ()タじゃなくてキモ()タな。これだからネットのにわかは。

それになんで急に数字数え始めてんだ。

頭が悪いからそうやって数字を言わないと忘れちゃうのか?可哀想に、」


あ、いつの間にか口が動いて声帯を震わせていたようだ。

どうせだし数字の復習がいっぱいできるように時間かけて仕方なく、取りに行ってあげよう。


するとズボンに入れてた手が急に動いてリレーのバトンを受け取るように動いた。

僕は困惑している。がそんなことはお構いなしに今度はつかむ動作をした。その後思いっきり腕を上にあげた。何故か感覚が消えている。何が起きたんだ?


そこで手が自由になると同時に魔力の感知を知らせるアラームの音が鳴り、感覚が戻った手にかかる重さから手を離してしまい、後ろで転んだような音がした。


「いってぇ!」


「…え?」


唖然とする周囲が振り返ると見え、アラームを聞きつけたのだろうスポーツ系の熱い先生がやってくる。


「…何が起こったんだ?」


皆、普段は魔法を使える。でも、ここでは使えないようになっているはずで、有り得ないことが起きている。


「澤木、教頭先生を呼んで来てくれ。」


澤木と呼ばれた女生徒は、見学していたらしく、木陰から急いで昇降口へと走っていった。


ちょっとふらついてる気がするのだが…

他人の心配より自分の心配をした方が良さそうだ。


「…」


こんな問題を起こすとは思わなかったな。

勉強もテストは平均点を取れてたし、実技もそれなりにして、生活態度はいつも交友関係以外いい感じだったのにここで成績はガタ落ちするのか?


「ほかのグループは練習を続けてろ!

…このグループは全員生徒指導室に行くぞ。」


仕方ないよね。もう、うん。

成績ダウン→受験失敗→将来は闇より黒い(・・)会社で泣き(cry)ながら仕事をするのか。お先真っ()だぜ。


軽い傷害だけでちょっと大げさだし、うまくもないな。30点!

「…うわっマジでないわー、あいつらが勝手にやったことじゃん。マジ意味わかんねー。」


「それなー。あのふたりはともかくなんで俺達も行かなきゃなんねーの?」


周りのノイズがうるさい。というか媚を売ってた相手がちょっと問題起こすとテノヒラクルーか。不安定なまとまりっていうのは怖いな。

これが現代社会の若者達である。なんちゃって。


そんなこんなで生徒指導室へドナドナされてる途中で教頭先生と遭遇。

ちょっと厳つい見た目の実は面白い系の先生だ。しかもかなり強いらしい。半端じゃねぇぜ。


呼びに行った澤…木さんも一緒に来る。第三者の意見としてクラス委員をやらされている彼女も同席するってなんか申し訳ないな。


さて、狭く、薄暗い生徒指導室にある席は8個だ。

僕のチームは6人で、先生が2人で8人。そこに澤木さんで9人。


誰だよこの人呼んだの。先生ですね知ってます。


実は初めての生徒指導室で頭の中がスーパーパニック。訳もわからず自分を攻撃しないか心配だよ。


「…澤木さんは調子悪そうだし、俺は当事者だし、先生は当然だとして、彼らのうち誰かが立てばいいだろう。」


僕はそーっと席を引っ張り座る。

もうどうにでもなれ。と諦めが入ってきた僕は

立つのが疲れそうだな。という本音を隠しつつ先に座った。


澤木さんもさり気なく座っている。おー、そこで変に気を使わない所が評価アップだな。


チラって見られた気がした。が、そんなの気のせいだろう。僕は先生たちがどう動くかがちょっと気になるんだ。


「…取り敢えず座れるやつは座れ。」


スポーツ先生が動いた。彼らはどうする?


知ってた。まぁ、当然のように元リーダー格のやつ以外が座るよね。当事者で見た感じ足が怪我してるのに誰にも席を譲ってもらえない。ははは。NDKNDK


「…まぁいい。問題は魔力の感知がされたことだ。これは人の生死にも関わってくるからこれから教頭先生が聞くことにしっかり答えろよ。教頭先生、お願いします。」


いつにもなく真面目な声でそんなことをスポーツ先生が言っている。


「まず一つ目、魔力感知がされた人は誰だ?」


僕のだけが何故か感知されたんだよね。

「僕です。」


「他にはいないのか?」


…誰もいないなー。どうして僕だけなのか?


まずここで着けることを強要されているのが魔力感知機と呼ばれる指輪型の機械だ。

魔法は魔素を使って何かを引き起こす魔力として変換して、発動する。

要は石油が魔素、ガソリンとか重油とかが魔力、

石油からガソリンとかを作り出し、それで何かを動かしたりするまでが魔法だ。

で、魔力感知は一定距離で魔素が変換された時にアラームが鳴るようになっている。

その感知をする時には、完全に密封されたところの魔力は感知出来なくなっている。電波や音のように、接するほど近ければ別だが。


そして感知されたのは僕だけ。つまり…僕の体内で?

いやいやいや有り得ない。もしも身体の中で爆発を起こす魔力が作られたり、金属でも生成する魔力が作られてたらいつ殺されるかわからないな。そんなことはないと信じたいよ。うん。


「つまり、彼の中で作られた可能性が高いな。」


そそそそんなわけないジャマイカ。

「ただの故障ってことはないのですか?」


「いや、ありえん。」

嘘だといってよバーニィ、それってもう体ん中に爆弾が埋め込まれた可能性もあるじゃねぇか。死にたくねぇ。死にたくねぇよ。まさかチェリーなまま死ぬのか?

その幻想をぶち壊す!とかしたいけど生憎僕はそんなチートも持っていません。もういいや、終わりィ、閉廷!


「ただ、もうその魔力は残っていないみたいだ。

爆破魔法だったとしてももう大丈夫だな。」


勝った!第3部、完!

生存ルート突入だぜおい、なんて嬉しさなんだ。


「次に、」


え?


「彼が何故スキルを使えたか、が問題だ。スキルの中にも魔力が必要なものがあるというのはみんなわかると思うが、この学校内では魔力を作れなくなっている。

そして、スキルが体術系なら、さっき言った魔力も恐らく彼自身が作り出したということが言えるな。」


「僕は体術系のスキルを持ってなかったと思います。」


そうだ。僕のスキルは確か演技と話術ぐらいだったと思う。あと付与魔法、

それにスキルを使おうとは思っていなかった。

普通、勝手に発動するスキルはない筈だ。


「ああ、君の記録にはないが、突然習得する物もある。だから澤木さんに協力してもらうんだ。彼女はスキルを見ることが出来るからね。」


なるほど、彼女はスキルを見ることができるそうだ。発動したところを見るとその名前が頭に出てくる。といったスキルを持っているのだろう。

なぜそこまでわかるかって?学校の授業に将来の事の作文があって、そこで彼女の作文には

「スキルの名前がわかるこのスキルを活かせる警察の仕事がしたい。」

と綺麗な文字で書かれていたからだ。

別に僕はストーカーじゃあ無い。評論会みたいなものがあって、他人の作文にコメントをつける時があった。

彼女の作文にはコメントが付いていなかったので「自分の能力を把握して、危ない仕事に就こうとする勇気がすごいと思いました。」って書いた。

その時のことがふっと頭に浮かんできただけだ。

え?僕の?「しっかり休みが取れる会社で働いて親孝行したい。」って書いた。当然誰も見てなかったと思うし、コメントなんてつかなかったよ。


ま、そんなことは置いといて、


「って事はここでそのスキルを使うのですか?」


今の事に気を向けよう。

無自覚で使ったスキルなんて使えるわけないし、

この魔力が出来ないここで僕のはまず無理だし彼女のスキルもできないのでは?


「大丈夫だ。この部屋は頑丈だし実はここだけ魔力が使えるようになっているからな。」


そうですか。

「でも、今できるかわかりませんよ?なんか勝手に発動したような感じで。」


「…そうか。取り敢えずやってみるぞ。大丈夫だ。怪我をしない程度にやるから。」


えー、怖い。どうか発動しますように、神様仏様どうかあの炎を纏ったヤクザキックからこの身をお守り下さい。お願いします、何でもしますからぁ、


「いくぞ、…!!」


ヒィィ!蹴りが来た!目を瞑ったのも仕方ないよね!


「うおっとっと、どうだった澤木さん。」


おーよかった。どうやらしっかり発動してくれたみたいで腹に向かってきた足を左にそらしたっぽい。

手も火傷してない!安心した。


「カウンターと…?あと何かあった気がしましたけどハッキリ見えたのはそれだけですね。」


僕はカウンターを手に入れた!


「そうか。なるほどな、カウンターということはさっき言っていた「彼がいきなり転ばせてきた。」というのは嘘だったんだな。それに本来のカウンターは更に攻撃を加える物だから彼が攻撃の意志なんて持っていなかったということも分かるな。貴島、反論はないな。」


なっいつの間にそんなことを言っていたんだ!

これだから最近の若者は…自業自得ってやつだな。


「っ…でも、」


でもなんだよ。ちょっと怒ってるぞ僕。


「お前は今日残って反省文を書いてもらう。」


全く、やれやれだぜ。


ため息を吐いて、ジャージの襟に手を滑り込ませ首を揉む。


「今回は僕からは何も言いませんけど根暗とか呼ばれたのを忘れていませんからね。関係ないっていう人達。」


「…」


言ってやったぜ。キモヲタに逆襲されてNDK(2回目)

ははは。勝ったな。


ふぅ。さて、もうそろそろ解放してほしいな。


「じゃあ澤木さんと彼だけ残して授業に戻りなさい。倉田先生も。」


僕は残るの?ていうかあのスポーツ先生は倉田って言うのか、知らなかったなー。


皆黙って生徒指導室から出ていく中、また視線を感じる。

ごく一般的な黒髪で一般的な髪型をし、肌は普通に黒過ぎず、白すぎない色をする、大してイケメンでもないし寧ろ下の方かもしれない顔面。

背は少し高めで、太ってはいないけれどそこまで細い訳でもない。

そんな一般的な学生Aを見るというのはどういう理由だろうか。

1、ゴミがついている。

2、何か感情を持って見ている。(憎悪、好意など)

3、ただの気のせい


どーれだ?1、ならばこの部屋の鏡でも使ってさり気なく確認しよう。2、だったら…


「それじゃあ残ってもらった理由を話そう。」


教頭先生の声がしたので考察を止める。


「魔法学園の方へ転入しないか?」


「え?」「はい?」


僕と澤木さんから疑問の声が漏れる。


「理由を言うと、まず、魔法学園にはスキルを磨く授業もある。君たちのそのスキルを育ててみないか?

澤木さんのそのスキルは実はスキルの発動を見なくても何を持っているかは分かるんだ。でも、一日に何回も出来ない。そこだけ伸ばしていけたら警察の役目である事件の防止にもなる。

そして君だが、カウンターというスキルは強いスキルだ。しかし、今の状況では本来のカウンターを使えない。それは宝の持ち腐れだ。それに君はスキルが増えたり消えたりするのが多すぎる。そこら辺も向こうで調べた方がいいだろう。」


色々驚く事があるが、スキルの増減が激しい、っていうのは初めて聞いたぞ?

これは一体…


「質問していいですか?

スキルが増えたり消えたりするのはよくあるのですか?そして、

誰が見ていたのですか?」


正直後者の質問は誰だかわかっている。

隣に座っている彼女だろう。しかし、スキルのことはどういうことだろうか?


「1個ずつ答えていくぞ。

スキルの増減についてだが、一般人はまず消えることは無い。そして増えたとしても一年に2、3個ぐらいだ。しかし君の場合、1週間おきに消えたり、2日で4個増えたりした。


次の質問だが毎日観察してもらっている。といえば誰かは確定しただろう。そう、澤木さんだ。

これでいいかな。」


「はい。ありがとうございます。」


やっぱりか。観たものは朝のクラス委員の集会みたいなもので伝えていたっぽいな。もしかしてよく視線を感じるのも…

さり気なく制服の着方などの指導に使うであろう鏡を見るとこちらをじっと見つめる澤木さんがいる。

ということで正解は4、スキルを見るためでしたー。


でも今見る必要はあったのか?まさか秒単位で変わったり?

…今考えなくてもいっか。


「続けるが二つ目の理由に非常に言い難いことだが…交友関係のことが上がっている。。

澤木さんはいじめの被害にあっているし、そのことを誰かに言おうとしない。それに

彼は今日そうなりかけたし、2人はいるらしいが、友人を作らないと来た。そこまでここの連中が嫌いなら向こうでやり直してみないか?」


へー、澤木さんいじめにあってたんだ。まぁ、

成績は優秀、容姿は悪くなくいい方、おまけにクラス委員だ。確かに嫉妬の嵐の中にいそうだな。


で、友人を作らない。か。一応いるけど…確かに言われた通り2人ぐらいしかいないか。それにこれも言われたことだけど友人になりたいって人が少なすぎる。

相手にわざわざ合わせて作る友人よりいつの間にか合っていた友人の方がいい。

現に合わせていたために亀裂が入り、砕けた所をこの目で数分前にみた。


ただ、向こうに行って変わるか、って言うと微妙だよな。ま、マシな人材がいることを望むだけだ。


「さて、理由として大きな物はこれぐらいだが、どうだ?」


これは勿論、決まっている。

「行きたいです。」

と僕ははっきりと言った。


すると彼女は、「私も行きたいのですが幾つか質問していいですか?」


「ああ、いいぞ。」


「クラス委員はどうなりますか?それと…費用の方は、どうなりますか?あと、なぜこのタイミングで?」


「これから言おうと思っていたが、

クラス委員は再選出する。それで、費用の方は教材費、魔素税の増加分などは学校側で負担しよう。

タイミングは、内密にしてほしいのだが双子が転入することになったからだ。その子らはこの学校の大きなスポンサーの所のでな。だからこの待遇だ。」


いい事を聞いてくれたな。

これであのクラスからおさらば出来るのなら多少費用を負担しても良かったけどね。


でも魔法学園って言ったら妹が居るよな。

能力値的に同じクラスにはならないと思うけど、

なんか一緒の時間に出るっていうのが変な雰囲気になりそうだな。


「取り敢えず明日もう一度聞くから家族とよく相談してこいよ…戻ってよし。」


そうか、親の負担が軽くなるな。自分のことしか考えれてなかったけれど来年の教材費は払わなくていいからね。


生徒指導室を出て、校庭に向かおうとしたところチャイムがなった。わざわざ蒸し暑い外に出るほど倉田先生の顔を拝みたいわけはなく、しっかり運動靴へ履き替えている澤木さんを横目に上履きの音を静かな廊下に響かせながら1階にある教室へと向かっていった。

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