運命
出すって言ってたヒロインが一行しか出なくて笑った。
あのじいさん。ただ者じゃなかったな。観察眼にも驚いたけど何て言うか……覇気があったな。
「レオン兄ちゃん。遊ぼうぜ!」
ん?後ろを振り向くと十二才くらいだろうか?三人組の男の子達がいた。
「どうしたんだよ!レオン兄ちゃん!」
さてどうしようか。適当にごまかしてもいいんだがちょっとかわいそうだな。てかレオンこんな子供にも親しまれていいやつだな。
「よし!今日は何して遊ぶか!」
「何言ってんだよ!今日はみんなに秘密で村の外に連れて行ってくれるんだろ!なあ、マキム!ライアン!」
「まさか約束破んないよねー。」
「そうそう。あのお兄ちゃんが!」
何でこいつらこんなに説明口調なんだ?滅茶苦茶有り難いけど。お陰で分かったことがいくつかあるしな。
てか、秘密で外に連れて行くって……本当にレオン悪ガキだな。
「当たり前だろ!レオン兄ちゃんが約束破るわけない!」
「そうだよね!にっしっし。」
「でも、あんまり遠くには連れていけないからな。」
「えー!いいじゃん、ケチー!」
イラッ♪
「俺はお前たちのことを考えて言ってるんだぞ。外は危ないんだ。魔獣だっているし、迷子になったら、見つけてあげられないしな。 」
「僕らがそんなヘマするわけないじゃん。最近剣術だって上達してきたし、一人だってへっちゃらさ!な!」
「うんうん。」
「僕も弓上手く使えるもんねー。」
この子達逞しいな!そっか。世界が違うんだもんな。生活の隣には危険が潜んでる世界なんだ。子供の頃から危機管理くらいできるのかもな。
でも、お前らに甘くはせん!
「ダメだ。何でお前達が家に出ちゃいけないのか、分からないようじゃあ、まだまだお前達は子供だ。子供に危ないことさせるわけにはいかないだろ。そんなことさせたら村長に怒られちまうからな。」
「いつもはそんなこと気にしないのにー。」
ほんとレオン悪ガキだな!でもダメなものはダメだからな。
「言うこと聞かないと連れていかないぞ。」
「ごめん、ごめん。じゃあ、準備してくるから村の裏口で待っててよ!」
「分かった。分かった。」
子供達が走り去っていく。
「あれ?裏口って何処だ?」
「お兄ちゃん、何で僕らよりおそいんだよー。待ったじゃんかー。」
あの後、いろんな人に尋ねながら裏口をなんとか探した。いつもと違うことを何人かに怪しまれたが、既にジョートが話をしてくれていたのか、多くの人が親切に教えてくれた。いい村だな。此処は。
「すまん、すまん。俺にだって色々準備があったんだ。」
何も持ってきてないが。正直何の力もない俺に戦う力はない。当たり前だ。特にあっちの世界で武術を習っていたわけではない。
でも、暇なときに体を鍛えてたから、人並みの体力はあるだろう。それに危ないと判断するくらいなら出来る。
「よし、急がないと暗くなるし早速行くか!」
「「「おー!」」」
「なあレオン兄ちゃん。また同じ場所に来てるよ。何回同じ場所をぐるぐるすればいいのー。」
「森の景色は似てるからな。勘違いしてるんだよ。結構遠くまで来てるぞ。」
まあ嘘だ。さっきからずっと村の位置が見えるようにしている。
今この場所にいる四人は全員土地勘がない。そんな状況で道に迷ったら目も当てられないし、万が一の事があったとしても、すぐに村に駆け込める。
因みに村の近くは森が広がっていて、景色が似ているというところはあながち嘘ではないかもしれない。
とにかく俺がしなければならないのは、この子達の保護者として安全に送り届けることだ。まあ、村の外にだしてる時点で安全も何もないかもしれないが。
「もう暗くなるからそろそろ村に戻るぞー。」
「まだ遊びたいよー!」
「ダメだ。お母さんやお父さんも心配するだろ?」
そう言って歩き出す。
「ライアンは何て言って家から出てきたんだ?」
「僕はアルムとこに行くって言ったよ。アルムは?」
「僕は何も言わずに出てきちゃったんだよね。」
「それ、ヤバイんじゃない?」
何とか無事に乗りきる事が出来た。正直俺も楽しんでたと思う。地球では見たこともないような植物や動物を見ることができたし、ちょっと小高い位置から見た景色はあっちの世界で見たことがない景色だった。でも、基本的な部分は同じて殆どの植物が緑色だったし、空は青色から赤色へと変わっていった。
一度だけ遠くから魔獣を見ることがあった。遠くだったからよくは見えなかったが、ヤギみたいなやつだった。最初は普通のヤギかな?と思ったが余りにもデカイ。象くらいあったのではないだろうか。子供達が気づく前に、俺が気づいたのでさりげなく別の方に向かったのだが、もし気づいていたらあそこに行きたいといっていたかもしれないな。
俺はさっき勝手に 魔獣と呼んだが、基準ってなんなんだろ?もしかしたらあんなにデカイやつだったが、 魔獣ではなかったかもしれないな。
にしても、俺も浅はかだったな。どう考えても子供を連れていくべきでは無かったし、まず俺自身が勝手にどっかに行くべきではなかった。もしかしたら、ジョートや梨花が俺のことを探してるかもしれないし、カナンちゃん?という妹に挨拶をするべきだ。
もしかしたら、俺自身が何処かに行ってリフレッシュしたかったのかもな。いきなり、別の世界にとばされるわ、神とか言うやつには世界を救うように頼まれるし、そう言えば未来石とやらの効果の確認もしてなかったし、俺の元々のステータスも全然知らないんだよなこの世界のことなんて何も知らないんだ。ここにいる小さな子供よりも知らないだろう。もっと慎重に動かないとダメだな。
村が見える位置までたどり着いた時、それは聞こえた。
「ちょっと!こっちに来ないで!誰か助けて!」
不味い!何かしら事件が起きているようだ。
「三人とも!今から村に戻って助けを呼んでくれ!」
「レオン兄ちゃんはどうするの!」
「俺は声のする方向に向かってみる!」
助けられるかなんて分からない。でも!やらないで後悔するより、やって後悔したいんだ!
「誰かいないの!」
かなり切羽詰まった状況らしいしな。
「お兄ちゃん。気を付けてね。」
「おう!任せろ!」
俺は走り出しながら音に集中する。少しでも小さな音を聞き逃さないように……
「!?聞こえた!」
女性の息づかいと何かのうめき声だ。ここから約250mだ!
「頼む!間に合ってくれ!」
俺が着いたときに目にした光景は、豚みたいな人に襲われている女性の姿だった。
今回は今までで一番いい出来だったと思います。
次回は私がとても書きたかったシーンです!
楽しみに待ってくださいね!
読んでいただき有り難う御座いました!
評価等よろしくお願いします!