3.せんぱい3
読んでくださって、ありがとうございます。
今日2回目の投稿です。
せんぱいは、親しみやすい所もあるけど、こういう時には、貫禄があって、堂々と見える。
光輝達なんかは、せんぱいに憧れてて。
あたしは、あたしのことじゃないけど、嬉しくって、照れ臭さくって、そして、誇りに思っている。
せんぱいは、背筋をぴっと伸ばして、颯爽とあたしの近くを通り抜け、3番目に上位の席へ座った。
直後、監督と副監督も入って来て、一斉に2年生達も、ざっと立ち上がり、広間中で
「こんばんは!」
が、響いた。
室内に響く、男の人達の大きて太い声。圧倒されてしまう。
しんとした室内で、監督達が席に座ると、緊張感を破るように
「全員、座れ」
と、あの人のよく通る大きな声が飛んだ。やっぱやっぱ、かっこいいな。
この声、好きだな……。
全員が正座するのを待って、やっと、
「いただきます!」
と食事が始まった。
始まれば、あとは、緊張の糸も緩み、あちこちで、話の花が咲いた。
最初はトーンを落とし気味だったけど、次第に笑い声や話し声が大きく、賑やかになっていく。
みんなが和気あいあいと食事する中、せんぱいは、お気の毒に……。上座だけは、静か~だなあ。せんぱいが、すごく良い姿勢で、緊張しながら食べてるのが、ここからでも分かる。弦巻先輩も、いつもは冗談ばかり言ってるのに、無言。もくもくと食べている。
あたし達の席は、とても気楽。光輝や真弓先輩達の話で、会話は弾んでいた。
「生まれて初めて、富士山見たぜ」
光輝は、込み上げて来る嬉しさを噛み締めているみたいだ。きらきらと瞳が輝いている。
「前に新幹線で東京に行ったことがあったけど、その日は雲ってたから」
あたしも、今日見た富士山を思い出した。
何回か見たことはあったけど、今日は、空がきりっと晴れていて、とてもはっきりとした雄姿が窓の外にあった。何かいいことありそう!
「やっぱ、日本人に生まれたからには、一度は生で見てみたいってもんでしょ」
サービスエリアからも、よく富士山が見えて、あたしも、光輝と一緒に大感動だった。夏なので、雪が筋のようにしか残ってなかったのはしょうがないけど、綿帽子を被った時の富士山を、光輝に見せてあげたい。やっぱり雪のある富士の山はまた、優美で全然違うから。
「晴れてて、本当に良かったよねー」
真弓先輩も、にこにこだ。
「はい、何かいいことありそっすよ」
「ね、富士山てさー、私の中では最近まで、のほほんとしたイメージだったんだよねー」
「のほほん、ですか?」
あたしは、首を傾げた。
「うん、穏やかで、何事もなく、当たり前のように日々存在してると思ってたの。
登ったこともないし、考えたこともなかったからなんだけど。
でもね、富士山て、頂上付近は、いつも風がものすごく強いんだってー。
冠雪したら、吹雪だよ。
前に富士宮だったかな、近くに行った時、目を凝らして見たら、煙ってるように見えてさ、きっと、ものすごい風が吹いてて、ごうごうと雪が舞ってたんだと思うの。
それを見て、衝撃だったよ。
全然イメージと違ったから。
ああ、でも富士山も、戦ってるんだな、自然界の厳しさの中で、風と戦っていて、でもそんな苦労を少しも表に出さないで、どっしり構えてるんだなあって思ったらさー、気持ち、奮い立ったよ」
せんぱい、一応登場しました。
でも、二人のラブラブな感じの所は、まだもうちょっと先になってしまいます。
よろしかったら、明日もお付き合いください♪