11.永遠普遍1
読んでくださってありがとうございます。
今日から最後の章です。
とろん、とした空気漂うバスの中。
誰が見てるのか見てないのか、運転手さんが釣りバカ日誌のDVDを流してくれていた。
釣りバカ日誌と、寅さんしかないみたいで。う~ん……なんで?
ハリーポッターとか、ジブリがあったら良かったのにな。
あたしも見るとはなしにぼーっとしてたけど、いつのまにかまどろんでしまったらしかった。
でも急に、身体の右側に重みを感じて、あたしは意識を取り戻した。
あたしの右肩には、せんぱいの頭。
ど、どうしよう。
あたし達の合宿は、大成功に終わった。
打ち上げの後も、2年の先輩達とトランプをやったりして、笑ったり、負けた人が罰ゲームしたり、すごく楽しかった。
そして、ちょっとの間、たまたま遠矢と二人になった時に言われた。
「昨日、3部練の後、俺と主将が話してる時、テラスにいたでしょ」
も、もしかして、気付かれてたの?
「ごめん、聞く気はなかったの。でも、本当にごめん」
「いいよ、あんな所でしゃべってた俺が悪いし」
「でも、話は聞かなかったよ、すぐ部屋に戻ったから」
「うん、ありがとう」
あたしは、首を振った。ごめんね、遠矢。
「あの時さ、練習もきついし、遅れてばっかりだし、倒れてみっともないしで、主将に当たっちゃったんだよ。先輩に当たるなんて、俺ぐらいだよね」
遠矢は、ははっと照れたように笑った。
「俺、まだまだだよなあ……。
あの時、どうせ俺なんて、センスもないし、体力もないし……みたいなことを、いらついて、ぶつぶつ言っちゃったんだ。
主将にそんなこというなんて、今考えたら信じられないけど。なんか、当たっちゃったんだよ。
そしたらさ『腐るなよ』って。『卑屈になって、自分を貶めるな。遠矢が自分で自分を信じられなくても、俺はお前を信じる。絶対信じてるから』って……」
そうなんだ……。そう言われたら、きっとすごくうれしい。
「それで、なんか吹っ切れた……。
で、今日、監督が、試合にも出してくれて。光輝と違って実力じゃないのは分かってる。
朝のランニングに手を抜かなかった事を、見てくれてたらしくて」
朝練のランニングでは、遠矢は段々順番が上がっていたんだもんね。
みんな、体を馴らす走り方の中、遠矢は全力疾走だった。
そういうがんばりを、監督は評価してくれて、他のみんなにも地道にがんばるようにって伝えたかったのかもしれない。
「試合でて、もっと続けたいって思ったよ。
主将と一緒のチームで正メンバーとして戦いたい」
闘志盛んな遠矢の心の炎は、試合の経験から、ますますめらめらと燃えている事だろう。
頼もしいよ、遠矢。
前向きに努力してる人の心って、伝染する。わたしも、遠矢から、エネルギーを分けてもらったみたい。あたしも負けない!
寝不足気味のまま、今は帰りの1号車のバスの中だった。
うれしいことに、最後列は、行きと同じ席順だった。
起こさないように、そっと目だけで、せんぱいを見る。
眠ってる。
泥のように。
ね。
2号車の光輝は、一人だけ、上下とも学校指定のネーム入りの緑ジャージなのだった。白のラインが3本入っているジャージ。
さっきのサービスエリアでは、みんな制服を着ている中にたった一人、その恥ずかしい恰好で所在なげにもじもじしていた。
みんなから。
「ダセ―な、学校ジャージ」
「バスで吐いて汚しちゃったの? 」
「汚したって、もしかして、昨日おねしょしたの? 」
「ちがーう! 」
なんと、制服を洋服ダンスのハンガーに掛けっ放しのまま忘れて、置いて来てしまったのだ。
光輝らしいといえば、光輝らしかった。出発の時は、ジャージとか上着を着てるメンバーもいたから、半分寝ボケてて、自分だけ服装が違うことに気がつかなかったみたい。監督に、ものすごく怒られて、さすがに反省している様子が伺えた。
「それとも、バスでおもらし? 」
「違う~!! 」
光輝は、真っ赤になって一生懸命、全否定。
みんな、忘れて来たって知ってるのに。いじられキャラだなあ。
「さすが、トイレ王子ねー。前代未聞よー」
真弓先輩は、心底感心したように言っていた。
「勘弁して下さいよ」
(*^_^*)(*^_^*)
2月に入ってから投稿し始めたので、1か月以上過ぎてるなんて……早い!!
特に3月に入ってからは、1日1日がものすごく早く感じられます。最初のほうから毎日のように読みに来てくださっている方もいらして、ありがたいです(#^.^#)嬉しいです!(^^)!
最近はパソコンを開くのが、すっごく楽しいんですよ。