10.キックオフとその夜11
今日も読んでくださってありがとうございます(#^.^#)
キックオフ……最後です。
夜空には無数の星々が、さやさやと瞬いていた。
花火の時に、一緒にコンビニへ行った時も、星が出てたっけ。
星ってこんなにたくさんあるってことを、普段は忘れちゃっている。時々都会から離れると、その数の多さに、圧倒されそうになる。
この星達は、見られてなくても、遠い昔から、確実に存在し続け、輝き続けているんだ。あたしも、誰が見ていても、見ていなくても、自分らしく自分を輝かせていけるといい。
地味な裏方だけれども、チームが勝つために、また新しい気持ちになって、次のスタートをしていきたいな。大阪に帰っても、がんばっていこうっと!
せんぱいが手招きし、あたしたちは運転席側のドアにもたれて手をつないだ。この星空をせんぱいと見ることができて、すごく、すっごくうれしい。
「帰ったら、夏休みの課題が山のように待ってるな」
せんぱいは、溜め息をついた。
「あたしは、ちょっとだけだよ」
「なんでだよ、結構部活で忙しかったのに」
せんぱいは、うらめしそうな顔をした。
「家に帰ってから、コツコツと進めてたもの。
でも、高校ってすごいね。あんなに大量に出されるなんて思わなかったもん」
会話をしていると、せんぱいの携帯が鳴り出した。ジャージのズボンのポケットからせんぱいが取り出すと、カラフルにピカピカと光っている。
「弦巻からメールだ」
いないことを訝っているのかもしれない。
「ああ、なんだ。
あず、そろそろ出番みたいだぞ」
「出番? 」
聞き捨てならない発言に、あたしは聞き返した。とたんに嫌な予感がし出した。
「的場光輝と、一緒に手品に出られるよう、かわりにエントリーしておいたから」
さらりと、せんぱいは言った。
「はいいい? 」
せんぱいは、ぱちんと携帯を閉じた。
「さあ、戻るぞ」
「ちょおっと、待って。そんなそんな」
外れてほしい悪い予感は、なかなか外れないもので。
「何でっ、勝手にそんなことそんなこと」
あたしは、あたふたとするばかりで、次の言葉が続かない。
「まあ、これも、夏合宿の醍醐味だろ、1年は芸出しの洗礼を受けるもんなんだって」
小さな子をさとすように、せんぱいは言った。言い方が、もうもうっ憎たらしい!
「出なきゃならないなら、最初から言ってよ~っ。今から何したらいいのか……」
「それじゃ、俺がおもしろくないだろ。
あずなら大丈夫だって。にこにことほほ笑んでいるだけで最高にかわいいんだからさ」
晴れやかな顔でそう言うと、天使みたいにね、と茶目っけたっぷりにわざとらしいウィンクまでして見せた。
もおおおおっ。人ごとだと思って!
また、してやられちゃった!
せんぱいを置いて、あたしは旅館の方へ、ずんずん歩いた。早く弦巻先輩に出ませんって言わなきゃ。
いつもいつも、こおゆうパターンなんだもの。
なんとか、あの忌々しいせんぱいを『ぎゃふん』と言わせられないものかしら。
悔しい~!
いつか絶対に、何かの形で。
一発逆転。
してみたい!
せんぱいを慌てさせて、振り回しちゃうんだからっ。
風は、秋の気配を感じさせた。
明日から、最終章です。
バスでの帰り道です(*^_^*)