10.キックオフとその夜10
遅い時間になってしまいました(>_<)
朝投稿出来ませんでした((+_+))
せんぱいに、やさしく触れられたところが、気持ちよくて、うっとりとした気分になる。
自然と、せんぱいの手の甲に、自分の右手を重ねていた。ずっと、このまま離れないで、この優しい眼差しを見ていたい……。
今、この時間に、言葉は必要なかった。
語らなくても、繋がっていると実感できる。
何度も思う事だけど。心って、なんてなんて不思議なの?
こんなに満たされた気持ちでいっぱいになってしまえるなんて。
この手があたしを支えてくれるから、あたしはいつも勇気が湧いてきて、ここまでこれたんだよ。いつも計り知れない力をくれる、ものすごいパワーの源。あたしだけのエネルギー源。
どのくらいそうしていたのか、せんぱいは、すっと手を抜いて、あたしの右手の上に重ね、ぎゅっと握った。
それから、あたしを引き寄せ、強く抱きしめた。あたしも広い背中に腕を回し、せんぱいを抱きしめる。せんぱいの手が、あたしの背を、肩を、腕を、足を、なでた。
「あずって、やっぱ、やらかい……」
最後にもう一度頭をなでて、せんぱいは体を起こした。
あたしのあごにそっとふれ、上向かせる。すぐ近くにせんぱいの熱烈な黒い眼が煌めいていて、まっすぐにあたしを見ていた。
今日は、優しい目だと思っていたのに、やっぱり、せんぱいの目の奥には、とんでもないたくらみが隠されているみたいだった。
いつもの、情熱的で不敵なまなざし。
自信満々で、余裕たっぷりのまなざし。
見続けたら、絡めとられる。たくらみに引き込まれてしまいそう。
せんぱいが近付いて来るのがわかって、そっと目を閉じた……。
唇が触れ合うと、せんぱいのキスは、段々熱く。激しくなって。炎のよう……。
自分を見失ってしまうんじゃないかと思うくらいの激しさに。
びっくりして、離れようとしたら、力強く抱き寄られせ、頭を抱えられ、せんぱいは放すのを拒んだ。
強引なせんぱいのくちづけに、あたしは翻弄され……。
自分の本能が、暴れ出しそうになる。
攻めるようなせんぱいに、あたしは何度も何度もさいなまれ、体が火照ってくるのを感じた。吐息が、熱く熱くなってゆく。
心も、体も、溶けて溢れ出してしまいそうだった。息が上がって、喘ぎそうになって、必死でしがみついてこらえた。
「お、し、ま、い」
せんぱいは、冗談ぽく言って。あたしから離れた。せんぱいは、いじわるにもあたしの反応を楽しむように眺めまわした。
「あず、ちょっと顔が赤くなってない? 」
いたずらっぽい眼差しで、楽しそうにあたしを見ていた。
「なって、ないです」
「そうかなあ」
観察するように、あたしを見ているせんぱいから逃れるために、助手席の背もたれに自分の背を預ける。ばれないように、息をついて、自分を落ち着かせようとした。
どうしてこうせんぱいに翻弄されちゃうんだろう。あたしは両頬に手を当てた。さっきの強引なキスを思い出すと、自分が恥ずかしくなってしまう。
せんぱいが、笑った。
「あずに癒されるなあ」
頭の後ろで手を組んで、シートに凭れたせんぱいは、リラックスした楽しげな表情。せんぱい、いい顔をしていた。主将の顔じゃない、くつろいだせんぱいの顔もまた、あたしのお気に入りだった。
「暑くなってきたから、ちょっと出よう」
日が暮れて、涼しい時間とはいえ、夏の密閉された狭い車。車内の温度は段々高くなっていた。あまり長くいると、蒸し暑く不快な空間になりそうだった。
車を降りたせんぱいは、空を見上げた。
「月が明るいけど、星がよく見える。少し建物から離れるだけで、全然違うな」
読んでくださって本当にありがとうございます!
明日でキックオフと・・・は終わります。
それぞれにとって思い出深い合宿になっていると思います(#^.^#)