10.キックオフとその夜8
しゃべり方も、おネエ言葉で、薄気味悪いよ!
「そうかしら、わたしはやっぱり弦巻先輩がかっこいいと思うわ。だって、少年のようじゃない。
笑った時の顔なんか、最高よう~」
「ぎゃー! そうようね、分かるわああああ~」
二人は、くねくねしながら話すので、スカートが揺れて、足が見えるのが、なんて汚いの!!おもしろいから見たいけど、汚いから見たくない気もする。
「おえ~」
たまりかねて、弦巻先輩は、立ち上がった。
「まあ、こんな所に弦巻先輩がいるわあああ」
「ぎゃー! 本当!!
やっぱりかっこいいわね。もっと近くで見ちゃいましょう」
二人は、弦巻先輩の方へすり寄っていった。
「おい、来るなってば、その顔で。こえーよ」
先輩は逃げようとしたけど、二人は風のように先輩を両側から捕まえてしまった。
「近寄るんじゃねえ! 」
「弦巻、逃げるなよ! 」
OBの先輩が言う。
「やっぱりい、近くで見ると、なんてきめ細やかなお肌」
「ぎゃー! すてきいいいい! あたしもう我慢できなああいいいい」
そういうと、なんと二人は、両側から。
ぶっちゅゆううう! と、弦巻先輩のほっぺにキスをした。
「うわああああああ!」
先輩は、ジタバタ暴れようとしていたけれど、両側からがっちりと腕を掴まれていて、なすすべもなかった。
二人が離れると、先輩のほっぺには、くっきりと真っ赤なキスマークが付いていた。
もちろんみんなは、大爆笑で。
手を叩いたり、お腹を抱えたりしながら、苦しがって笑っていた。なんて気持ち悪い物を見てしまったんだろうと思うけど、弦巻先輩のあの悲劇的な顔は、忘れられそうもない。
弦巻先輩は、魂が抜けたように呆けていたのは短い時間で、すぐに反撃を開始した。
「お前らなあああ! 」
飛びかかって、一人を捕まえて、押し倒した。
「女子を外へ出せ。女子には見せられねえ」
「いやーん、脱がさないでえええ」
みんな、わあわあ騒いでいる。
「ちょっと、そういう訳だから、出ててもらっていい? 」
2年の先輩が寄ってきた。あたしは、言われるまでもなく、あたふたと立ち上がって入り口に向かう。
「あたしもー? いいところなのにー」
真弓先輩は、動こうとしなかったけど、男子の先輩に追い立てられて、しぶしぶ廊下へ出て来た。
中からは、笑い声や掛け声などが、ひっきりなしに聞こえる。
なんか、すごいことになってるな。出てきて良かった。
「あずちゃん、私、今日やるドラマを見たいと思ってたの。
むさ苦しいし、もう飽きちゃったから、しばらく部屋に行っててもいい?
あたし、弦巻に今日の出し物が書いてある紙を見せてもらったけど、裸芸系いっぱいあったんだよね。
あたしは、いいんだけど、男子って気にするみたいで。なんか、うちの男子ってすぐに脱ぎたがるし、脱がせたがるのよねー」
そ、そうなんですか……。