10.キックオフとその夜5
「全員気合い入れろ! 1年に負けるなよ。
相手もバテてくる。焦らないで、チャンスを見つけろ。
一瞬の隙を見逃さずに、狙え」
そして、せんぱいは、全員を見渡した。
「行くぞ! 」
みんな、気合いが入ってる。負けたままじゃいられない。
まだまだ1点だもん。返していけるよ。
メンバーがピッチへ向かった。
「村中くん、さっき、なんだった? 」
「忘れてくれ」
「忘れる? 」
村中くんは続けた。
「うん、俺、間違ってた。
まずは、サッカーを、とことん極める! 1つをやり遂げれば、他の事はほおっておいても必ず付いてくるし、結果に結び付く」
自分に言い聞かせるようにそう言った。う~ん、分かるような分からないような。村中君て、自己完結の人なんだね、きっと。
仲のいい光輝と遠矢が選ばれたんだもの。
村中くんも、刺激受けてるんだろうな。そうだよね、それにきっと、他の1年も!
そして後半も、激しい攻防が続いた。相手のゴールが決まりそうで、何度かハラハラする場面もあった。
光輝も前半に続き、果敢にシュートを狙いに行った。
惜しくも点にはならなかったけど、光輝は、ボールコントロールが上手く、存在感を残した。これで点が入っていたらなあ。惜しい。
そして、存在感と言えば、何と言っても遠矢だった。
遠矢!
遠矢のプレーは、火の玉のようだった。真っ直ぐに相手に立ち向かっていき、一歩も引かない。そして、ひたむきにボールを追いかけてゆく。全力プレーだった。
遠矢の投入で、勢いのついたうちのチームは、後半の早い時間に、せんぱいがシュート! 1点を返した。
でも、遠矢は予想通り体力不足が響き、途中からどうしても足が動かなくなってしまった。そこで、交代のコール。
課題は体力。そしてやはり、華奢な体つき。1対1では、相手に吹っ飛ばされていた。
悔しかったと思うけど、きっと見えて来た事も多いと思う。
そしてそして、なんとせんぱいは、終了間際に更にシュートを決めて、試合は、2-1で終了。せんぱいは、やっぱり頼りになる。かっこいい!
そしてみんなも、お疲れさまでした!!
そういえば、村中くん、何か言ってたけど、なんだったっけ? 結局分からなかった。