6.苛烈4
せんぱいは、やさしく笑いかけながら言った。
「俺としては、練習熱心な後輩がいるのは頼もしいよ。他の奴らにも刺激になる」
遠矢、嬉しそう。
「どうしたら、もっとサッカーが上手くなるでしょうか」
遠矢のまなざしが、救いを求めるように、せんぱいへ向けられた。思いつめた声だった。
せんぱいは、そんな遠矢をまっすぐに見た。
沈黙……。
ああ、あたしには、入り込めない世界だな。男同士の世界ってこういうのなんだろうね。邪魔にならないよう、黙って二人のやりとりを見ていた。
「こいつ、すげえなって奴は、人の2倍は練習してる。
その上を行くためには、さらにがんばらないと、絶対無理だ。
すぐには結果が出なくても、腐らず、努力をし続ければ、いつか必ず力が付いてくる。自信も付いてくる。
妥協したり、あきらめたりしたら、後悔するぞ」
「2倍以上、ですか」
「そ、3倍ってこと。
サッカーだけに限らず、何でもそうなんじゃないかって最近思うよ」
遠矢の目に力が戻ってきたように見えた。遠矢は、ぐっと歯を食いしばるようにして、よし、と気合を入れてから、立ち上った。
「あざーした! 」
「おいおい声でかいなあ、まだ無理するなよ」
遠矢は、がぜん元気が出てきたみたいで、あたし達に背を向け、荷物置き場の方へ歩いて行った。
せんぱいの気持ちが通じたみたい。みんな、いろんな思いをしながら、それでも目標に向かって、今を全力で生きようとしてるんだ。
せんぱいの顔はまだ赤かった。あれからきついトレーニングが続いたんだろうな。『ひでーごーもん』って言ってたしね。
せんぱいの、苦しげに歪められた眉や。
荒々しく繰り返されていた呼吸が。
そして。
全身から発せられる、炎のような気迫が思い出され……。
隣であたしは、急に心臓がドキドキし始めるのを感じ、こっそり下を向いた。
何、考えてんの~っ!
自分で自分に言い聞かせる。すぐ横に座ってるから、なんか意識しちゃったのです。
それより何より、今は、遠矢、遠矢!
遠矢が練習に戻れるくらいに回復したのはほんとに良かったけど、まだ心配だよ。大丈夫なのかなあ?
遠矢は、背を向けたまましゃがみこみ、バッグをごそごそやり始めた。
その様子を見守って、いたのに。
あたしの右手にさっとせんぱいの左手が伸びて。
驚いて、反射的に見上げた時には。
ゆっくりと顔が近づいて来て。やさしく、温かく。
ふわっ。
あたしの唇に、おりた。
瞬く間の出来事で。
あたしは何が起こったか……。
驚きで固まっていると、せんぱいは、さっと離れて立ち上がった。
遠矢も同じく、新しいタオルを取り出して、立ち上がった。
せんぱいを見上げたとたん、唇が目に入り。
ききき、キスっ!!
あたしは、ぼっと火のように赤くなる。
せんぱいの、
「よし、行くぞ」
の声に、遠矢も、
「はい!! 」
と力強く答え、二人で意気揚々と部屋から出て行き、後には、カッと赤くなってしまった、あたしだけ取り残された。
後輩を心配して、様子を見に来たんじゃなかったの?
理解不能。
ふざけてるの?
真剣なの!?
昨日は時間があったので、かえってぼんやり過ごしてしまいました……あはっ!
そんな日もあるさ!と今日からまたがんまりまっす♪
今日も、開いてくださってありがとうございます!
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