2.バスにて1
ありがとうございます。
以前に投稿していた物語です。途中だったので、ずっと気になってました。
楽しんでいただけるといいな……。
2話目から、直しています。
短いのでできるだけ毎日投稿したいと思っています。
お付き合いいただけると嬉しいな。
2人の副将のうち、右奥の窓側に座った弦巻先輩が、大きく伸びをした。
「やっぱ1番後ろは、前の座席との間隔が広え」
長距離用のバスだから、ゆったりしているみたいで。
あたしはというと、さっきから、身体の右半分が、敏感になっている。
右は、絶対、向かない。うん、向けない。
態度に出たら、大変なことになっちゃうからっていうのは言い訳で。照れ臭いからっていうのが、たぶん、本当。だって、恥ずかしいんだもの。それに、急な至近距離で、わけがわかんなくって。
隣って。隣って……!!
白のシャツごしに伝わってくるせんぱいのぬくもりが、あたしから、落ち着きを奪うことを。
この人は、知ってる?分かってる?
今、何考えてるの?
この状況じゃ、わかんない。
動き出したばかりのバスの中は、とても賑やかだ。
せんぱいも、副将達としゃべり始めた。
あたしも時々、弦巻先輩達に、
「ねえ、ねえ」
と、話を振られ……。
変な相槌になってるのは、どぎまぎしてるからっていうのもあるけど。
あたしに話が振られるたび。
腕が。
肩が。
膝が。
こちらを向こうとせんぱいが動くたび、自然と軽く触れ合ったりするから、そのたびに、わたしの鼓動はとくんとくんから、どきんどきんに変わる。
この状況で、せんぱいと目が合うのは、非常に、危険だと思います。
自然にしたいけど、もう、どうするのが自然なのか、完全に、燦然と、全然歴然、不明です!
絶っっっ対に、見れな~い!
せんぱいのせいだよ……。
それに、この列、あたし以外全員が2年生なのもあって、あたしは、カチンコチンだった。2年生の中に1年一人だよ。
「真ん中の席、疲れないか?」
弦巻先輩が、黙りこんでしまったせんぱいに聞く。
うん、あたしもまだ自分の頭の中がこんがらがってるけど、せんぱいのその席はこれからの長い時間を考えると、疲れないかなあって、思ってた。
せんぱいの前は、通路だから……。
「これから先、ずっと座っているんだぞ。
他の席に移れば?」
気遣わしげな、弦巻先輩。
「うん……」
ぎくっとした。
動いちゃ、やだ!
あたしの中は、とたんにざわざわしはじめた。
やだよ。せっかくこんなに近くになれたのに。しかも、みんながいる中で、堂々と。
でも、せんぱいが疲れるのは、かわいそうだよね。
……がまんしよう。
あたしは、せんぱいが何と答えるか、顔を見ようとした。
その時。
空気のかたまりが一気に動いたかと思ったら、ザッとせんぱいが立ち上がったので。
あたしはびっくりして、見上げた。
するとなんと、せんぱいは、あたしを見た。見下ろしていた。
せんぱいは、あたしを見たまま、少し、目を細める。
?
せんぱいは急に、2人きりの時のあの目で、あたしを見つめて来た。
みんなが、いるのに。うろたえながらも、あたしは視線を外すことが、出来なかった。
次の瞬間。
おもむろにせんぱいの手があたしの方に伸びて来た。