6.苛烈3
「遠矢、大丈夫かよ? 」
休憩に、入ったんだ。
声を掛けたのは、村中くんだった。心配そうな顔をしている。
遠矢は腕を下ろし、みんなに目をやった。大丈夫って笑いながらも、笑顔には力がなく、表情は沈んでいた。
「具合が悪いなんて、隣にいても全然分からなかった」
「俺も自分で分かってなかったのに、弓削先輩に何で分かったんだろ」
遠矢は、村中くんにそう答えながら、ゆっくりと起き上がった。
「だよなー。
そうそう、あの後、レギュラーだけ残されて、もっとすげえ拷問が始まったんだぜ」
他のみんなも、あれはきつそうだった、と口々に言い出した。
「でもやっぱ、先輩達すげえよ」
「特に、弓削先輩と弦巻先輩は、はんぱねー」
頷いてから、光輝が言った。
「でも俺、あの中に入りてえ。
ひでーごーもんだったけど、うらやましすぎっ! 」
みんなが黙った。みんなも、光輝と同じ事を思っているのかな。
遠矢一人だけ、表情が冴えない。
「起きて大丈夫?
着替えた方がいいんじゃない? あたし、冷たいもの持ってこようか?」
あたしがそう言った時。
「大丈夫か、遠矢」
ドアをノックする音と共に、颯爽と入って来たひとがいた。
「弓削先輩! 」
遠矢もみんなもあたしも、びっくりした。
遠矢は、体を起し、背筋を伸ばした。
せんぱいは、遠矢のすぐ側で顔を覗き込んだ。
「よし、大丈夫そうだな」
よく通る声が響く。穏やかな笑みを浮かべ、あたしの隣に座り込んだ。そして光輝達を見た。
「おまえら、弦巻と八尾先輩が探してたぞ」
八尾先輩は、OBの先輩だった。さっきまではいなかったから、到着したばかりなんだろう。
言われた光輝達は、飛び上がらんばかりに驚いて、慌てて部屋から出て行った。
その様子がおかしかったのか、せんぱいは、閉じられた扉の方を見て、また楽しそうに笑った。
残ったのは、3人。
賑やかな光輝達がいなくなると、急にしん、とした。
「さっきは、すみませんでした」
遠矢が、少し悔しそうに頭を下げた。
あたしの横のせんぱいは、後輩の前では、やさしいお兄さんみたいなほほ笑みも浮かべる。
「遠矢、まだサッカーを始めてから期間もそれ程経ってないんだろ? 焦るなよ」
「はい……」
遠矢は、まだ少し硬い表情をしていた。
「遠矢は努力家だな。部活以外でも、自主練を積極的にやってるんだろ。
続けてけば、必ず上手くなれるぞ。
この合宿でも、一部練のランニング、段々順位が上がって来てるだろ」
「はい! 見てくれてたっすか!? 」
遠矢は驚きの声を上げた。
せんぱいは、笑顔で頷いた。
「大阪に帰ったら、練習付き合うよ。土曜の練習後でもいいし、朝練のない日でもいい」
「本当ですか? 」
遠矢の顔が、ぱっと輝いた。
「ああ」
今日は仕事が休みで、夜まで予定もないので、思う存分物語を考えられそうです。
しばらく忙しかったので、やっと時間が取れて、とってもうれしいです!!
朝起きたら、あたり一面が真っ白でした!知らない間に雪が降り積もっていたらしく、世界が一変していて、驚きました。たま~にしか積もらない所なので。
冬でも青空と太陽の多い場所でありがたいです(#^.^#)