5.夏空の青の先3
日付が変わる数分前でしたが、ぎりぎりで投稿間に合いました!!(←今、誤変換で投稿マニアいましたになってました。ウケル! )
今日も読んでくださって、心から感謝です(*^_^*)
それからあたし達は、この便利そうな文明社会の雰囲気が名残惜しくて、自動販売機で飲み物を買い、ベンチでゆっくり味わった。
ほんとは、喫茶店に入れれば良かったんだけど。
この合宿が始まって、あたしはお菓子や飲み物などに、かなりのお金を浪費していた。
コンビニに行った時には、いつもなら買ったこともないのに、変なおまけ付きのお菓子をついつい買っちゃったり。
さらに今日ここでもお金を使ちゃったら、本当にやばい。
高校生で持ち歩けるお金なんて、そんなにないもの。お父さんが、もし困ったら使いなさいって、1万円渡してくれたけど、あれは使わないようにしなきゃ。困った時用のだもん。1万円は、封筒に入ったまま、旅行バッグの一番底にしまってある。
光輝のお財布事情も、あたしとさして変わらないようだった。
「さあ、帰ろう。あともうちょっとだ。
明日からまた、練習をがんばんないとな! 」
光輝は練習で疲れきっているはずなのに、今日はエネルギッシュでやけに張り切っていた。いいことがあった顔をしてる。
「光輝、何かあったでしょ。さっきからすごく元気だもん」
「おう、梓! 聞いてくれるか! 最終日、他の学校と練習試合あるだろ。
まだわかんないけど、あれに選んでもらえるかもしれないんだ」
光輝は、誇らし気だった。
「すごいよ、それ、本当!? 」
2年の先輩もたくさんいるんだから!
「本当も本当! 気合い入るぜ!
でも、まだ決まったわけじゃないから、明日からの練習が大事」
光輝の顔は生き生きとしていた。
それからやる気満々の光輝と、サッカーの話をして、あたし達はきらびやかで、近代的な建物を後にした。
サヨナラ、文明。
あたしはまた、規律の厳しい山奥へ荒行に戻ります……。でも、光輝の話を聞いて、俄然やる気が湧いて来た。
応援しようっ! 光輝のこと!! よ~し、あたしも元気わけてもらったよ!
監督に認めてもらえるといいな。
帰りのバスを降りたら、16時になっていた。
夜になったらまた夕食の準備がやってくる。
夏の染みるような青い空はまだまだ明るい。のどかな景色が辺り一面に広がっていた。
ここは、大阪の、あたしの住む町と比べると、涼しくて、過ごしやすい。
空気をたくさん吸い込むと、大阪よりも軽いような気がした。あんまりよく分かんないけど、これがおいしいってことなのかな。
大阪の空は、広い。
空気は悪いけど、空が広い大阪。空気はいいけど、空が狭いここ。
長くここで生きている人には、この空が普通で当たり前なんだろうな。圧迫感なんて、感じないんだろう。
空を見上げた時に、どんなことを思うのかな。
想像、つかない。
この空の下で生活する人達は、どんな未来を描くんだろう。緑豊かなここだから、あたしなんかの思いも寄らない思考や発想で、虹のようにいろんな気持ちが湧いてきそうに感じる。
それから、あたしは、自分の将来を、ふと考えた。
あたしの未来って。
どう描く?
まず、大学には行く?
仕事は何したい?
漠々とする自分の中で、感情の欠片のようなものが、ふわりふわりと浮かんでは消えて行く。
あたしがぼんやり歩いていると。
光輝がぽつり、と。
「あ、飛行機だ」
見上げると、頭上を小さな白い飛行機がまっすぐに走りぬけていく所だった。
「見ろ、飛行機雲だ」
真っ白な飛行機雲は、青い空にぐんぐん伸びていく。
振り向くとあたし達の背後から、目指す方角へ向かって、飛行機雲は白く細く、そして長く、一直線に走っていた。背後の空の向こうの端の方は、白の線が淡くたなびいている。
伸びていく線を目で追いながら、光輝は言った。
「梓、俺さ、A大を目指してるんだ。
今の成績じゃ無理だから、部活だけじゃなくて、勉強も、もっとがんばんなきゃな」
おんなじようなこと、思ってた? 昨日の自販機の所で、せんぱいと同じ事を考えていた事を思い出した。
あたしは光輝の発言に、とてもびっくりしたけれど。
納得。
この染みるような青い空は、きっとそういうことを考えさせるんだ。
「A大合格したい。
ずっといいなって思ってたんだ。
数学と英語がもっともっと出来るようになるといいんだけど」
真面目に語ったのが恥ずかしかったのか、光輝は、へへっと、照れたように笑った。
そっか、光輝も考えているんだね。
あたしはどうだろう。
あたしの進路。
あたしの将来。
あたしの未来。
あたしの人生。
正直、まだ進路はぼんやりとしてるけど。
思い浮かべてしまう、あのひとの顔を……。