それから
甘め注意。二人が仲良くなってから。
アランの1日は、弟のサンを起こすこのから始まる。
それから、ぼやぼやと身支度する弟を横目に、自国の使いに届けさせた電文に目を通す。
小国のそして今や囚われの王子ではあるが、自由はある程度あることが救いだった。
昼前に一度、ギルバートが顔を見せた。
直前まで目を通していた文は、田舎の村貴族が綴ったものだった。
アランが自国の者からの文を読んでいたことに機嫌を悪くしたようである。
ギルバートが無言でアランを見下ろした。
アランはため息をついて、文を片付ける。
「ご機嫌いかがでしょうか」
「しらじらしいな。お前のせいで良くないぞ。責任を取って、いつも以上に尽くせ」
羽織っていた着物を脱ぎ捨て、軽装になった王子が茣蓙に座り込んだ。
朝からか。
と、思ったが口にせず、困ったように部屋の隅で小さくなっていたサンを下がらせて、ギルバートに近づいた。
粗暴な王子は、自分に近づくアランを笑う。
「最近は大人しいな」
「ギルバート王子は従順な私がお嫌いですか」
「もっといじめたくなる」
「王子は駄目な人ですね」
「死刑にするぞ」
「本当に駄目な人ですね」
ギルバートが笑う。
アランは大真面目な顔をする。けれど、アランもとうとう苦笑に変わる。
アランはギルバートの隣に膝をつき、風に凪いだしだれ柳のようにギルバートの胸に収まった。
激しい抵抗を見せるアランも楽しいが、この様に静かなアランを腕の中に納めるのもなかなか楽しいものだと、ギルは思った。