ギルバートが笑った2
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その兄王子は猫かぶりだったのか、一度本性を表すと戻る気がないようで、早くもあの従順だった頃が懐かしい。
一日中、弟の世話をやいているようで、私が公務の間をぬって彼らが住まう離宮へ行くといつも共にいた。私を何だと思っているのか、アランは私を見るとなり、サンを隅の部屋へと下がらせる。
「おい、私に対して少し警戒が強すぎるのではないか」
「どうか、お気になさらずに」
「このように隠されると、見たくなる。どれ、見せろ。サンを呼べ」
「私にとって弟は宝。宝は、奥に隠しておきたいのです。サンは呼びませぬ」
「ふん、宝か。そのような戯言を垂れるまでに弟を気にかけるとは、お前はまるで世話係のよう・・・。
なるほど、お前は偽物の王子であるか?本物の王子はサン一人であるのか?
そうであるならば、偽物には用はない。サンを出せ」
畳み掛ける私の言葉に兄王子は、頬を引きつらせた。
「なんたる無礼、なんたる無礼・・・!私は、ジネ王国の直系王子だ」
と顔を真っ赤にして言った。
「そうか。では嘘偽りなきアラン王子に今夜も私の相手をしてもらおうか」
今宵の月は非常に美しい。
屈辱に震え、暴力的に喚くアランを褥に縫い止めて、月を眺めるのも一興だ。