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夢で生きる  作者: 中田あえみ
第九章
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つ づ き 3 (ビビアン視点)

王族に外国人が入るのは今までにあったけど、日本人というのは紀恵が初めてだろう。

紀恵の英語力はそこそこだが、ブルテリア語は単なる幼稚園レベル。フランス語も出来ないし、これから大変なんだろうな。


私は紀恵の同僚、同じチームで隣の机。そしてテリーは日本留学経験者とのことで、ケビンに呼び出されている。勿論、彼ら(ニール、マンチェクさん、紀恵)には内緒なので、職場と違う階にある喫茶店でのミーティングだ。


ケビンがかなりの本音だと思うけど、憂鬱な顔で

「ウチの社員を王族へ差し上げるのは大変光栄だが、あれほどの英語が出来る日本人をホーンで探すのは本当に大変だったんだ。勘弁してくれ」

テリーがお説ごもっとも、とうなずき、

「イギリスやアメリカなど、英語圏なら紀恵の英語は大したことないでしょうが、非英語圏で、あれだけ出来るのは、日本人では紀恵以外ないでしょうね。咲子も出来ますが、いかんせん他の知識が乏しすぎる」

ケビンは頭を抱えて、

「何で殿下は紀恵なんかを……。ゴホン、ゴホン、あ、いや、つまり……そのう……」

私は助け舟を出したつもり。

「あの二人の馴れ初めですね。何でもジョギングして馬が合ったとか」

「プロジェクトにも関わっていなかったのに、益々わからない。紀恵自身はさほど嬉しそうでもないのに、マンチェク殿下は浮かれきってる」

「それも謎です」

とテリー。

仕方なく私は、

「女性の方が現実的なんですよ、ケビン。結婚となると色々考えなきゃいけないのは女性ですから。紀恵もマンチェクさんとの婚約を喜んでます。ただ、仕事や将来に関して、考えているだけなんです」

男はほんと基本のーてんきだ。私はまだ独身だが、今の彼氏も「そろそろ俺たち結婚……」とかほざくので、「マンション買ってからに決まってるでしょ!頭金は貯まったの?」と活を入れたばかり。結婚はいいが、それから家庭を持つなら、将来の子供たちを立派に育てるための準備をするべきではないのか。


テリーはまあ同意した。

「確かに奥さんの方が、結構現実的で、何か僕も夢を壊された気がするよ。頭金いくら貯まった?ってデートのたびに聞いてくるんだから。その点、紀恵は大人しいと思う」

ケビンもうなずき、

「お金の話をされると、愛はどこへ行ったって気分だよな。ウチの奥さんもそうだった、愛してはいるけど、結局はお金。何なんだろうなあ」

私はきっぱりと言い放った。

「愛があるなら、お金があって当然でしょう。奥さんや子供たちを、ぼろアパートに住まわせて塾にも行かせられず、それでも我慢しろと?」

「ブルテリア女性は、現実的すぎるよ。そりゃあお金は必要だろうけど、ちょっとは相手を信用してほしいね。愛があれば、今は貯金はなくても、奥さんや将来の子供の為に、頑張れるって事だよ」

テリーの話は戯言にしか聞こえない。何てこと、こんな人が既婚者だなんて。奥さんも相当苦労されてるのでは。赤ちゃんがいるはずだし。

「本当に家族の事を思っていれば、今すぐ頑張れるはずじゃないですか。お言葉ですが、年々ホーンのマンション価格は高騰しており、例えば今二十八平方メートルの超小型ワンルームを買うとして、ローンの利息抜きで計算し、ブルテリアの平均年収全額払だとしても十七年かかって完済なんですよ。幸せって言うのはそういうものです、分かりませんか?全く男性ってのは忌々しい」

妙な空白の後で、ケビンが遠い眼をしつつ、

「分かった……なぜマンチェク殿下が紀恵を選んだのか……」

テリーも

「ええ、完全にはっきり理解できました」

私だって分かってますとも。二人は愛し合ってるんでしょ!?



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