眠る前
再掲載です!
電子書籍を引き上げましたので、こちらにもう一度連載します。おまけを入れるようにしますね。よろしくお願いします。
格好いい生き方をするつもりはないけど、他人に話せる人生を送りたいと、何気に高校の頃誰かに話したことがある。
その人は大笑いして「そんな複雑な人生はいらない」と言っていた。
……そうなのかな。
私は普通のOL生活を送り、その人は夢を実現して、ある私塾を経営、子供たちの未来を創るお手伝いをしている。そういうものだろう、人生って。何だかな。
私、田中紀恵は、帰りのバスでしみじみ思う。なぜこんなに感傷的なのかというと、同僚に最近子供が出来て、彼女も夢をかなえた形で、幸せいっぱいだったからだ。
同僚、田中咲子もう三年も同じチームでOLをやっているけど、彼女は何をやってもうまく出来て、苗字が被るだけに、私としては少々辛い。
咲子は、「母娘って、仲良し関係なのが憧れなの。女の子が欲しい」と言い続けていた。
「お洋服借りたりとか?」
私が冗談交じりに言うと、咲子は真っ直ぐに私の顔を見つめ、
「うん。紀恵もそう思わない?」
と生真面目に聞く。
私はまっぴらごめんだったので、
「いやあ、結婚してないから、想像しずらいなあ」と逃げたけど。いいお嫁さんだよ、咲子は。