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DANDY〜笑顔〜  作者: kagari
13/18

タイトル未定2025/11/22 20:55

 昼休み、会社近くのうどんと蕎麦をリーズナブルな値段で提供する店で、寒空の繁華街を眺めながら、ちはると馬場と赤井の三人はそれぞれうどんや蕎麦を食べていた。

「若菜ちゃんとは、どうなったんだ?」

 うどんをすすりながら、馬場が赤井に聞いてきた。

「もうバッチリ!若菜ちゃんも俺のことを、気に入ってくれたみたい」

「俺に、感謝しろよ!若菜ちゃんの携帯の番号を聞いたのは、俺なんだから」

「はい、感謝しています!」

「スイは、遂にマスターのことを諦めたかぁ」

 蕎麦をすすりながら、ちはるが言った。

「土曜日、皆でマスターの店に行きませんか?」

 赤井の提案に、ちはるは顔を曇らせた。

「皆って?」

「ちはるさんと馬場さんと俺と若菜ちゃん!」

「スイはまだ、未成年だよ」

「これだけ、保護者がいれば大丈夫!あっ、ラインだ!」

 赤井は携帯を取り出し、ラインを開いた。

 ラインは、若菜だった。

 赤井は歓喜の声を上げながら、ラインをじっくり読みだした。

「どうする?友光」

「う~ん……行けばマスターに会えるし、どうせ暇だし。行くよ」

「じゃあ、俺も行くよ。おい!赤井。土曜日、俺たちも行くぞ」

「わかりました!そのことも、ラインしよう」

 赤井は嬉しそうに、文字を打ち始めた。

「友光」

 馬場に呼ばれたちはるは、顔を上げた。

「若菜ちゃんはマスターのことを諦めたみたいだけど、友光は?」

「どうあがいても、マスターと一緒になれないことはわかっている!でもマスターのことは好き」

「ふ~ん」

「なによ?」

「少しは、素直になったなぁ。マスターが、若いお姉ちゃんと楽しそうに話をしていたのが、気に入らなかったんだな」

「気に入らないわ!私が目の前にいるのに」

「案外本当に、店が終わったら姉ちゃんたちと、遊んでいるかもよ」

「仕事が終われば、何をしてもマスターの自由でしょ」

「そりゃ、そうだ」

「ほら、昼休み終わるわよ!赤井、いつまで携帯を眺めているの!」

 そう言いながらちはるはテーブル席から立ち上がって、どんどん歩きだした。いつものちはるらしさが戻って、そっと馬場は笑ったのだった。



 土曜日の夜、bar「ジェシカ」の店内のテーブル席に若菜と赤井、ちはると馬場が向き合っていた。メニューを配りながら、マスターは少し驚いたように言った。

「珍しい組み合わせですね」

「マスター俺たち、友達になりました!」

 赤井は若菜の肩を抱きながら、自慢げにマスターに言い更に続けた。

「だから、今夜は大目に見て下さいよ!」

 チラリと若菜を見たマスターは、苦笑しながら言った。

「此処で、ダメだと言ったらボクは悪者になりますね」

 マスターの言葉に、テーブル席は笑いに包まれた。

「赤井さんに免じて、十時まで良いですよ」

「若菜ちゃん、やったね!」

 赤井が言うと、若菜は照れくさそうに笑った。



 オーダーした料理がテーブルの上に並び、若菜たちのテーブル席は、賑やかに食事を始めた。

 その時、女性客三人が店の中に入って来た。

 服装からして、三人は結婚式の帰りらしかった。

 女性客は、若菜たちの近くのテーブル席に座った。

 若菜たちは、何気なくそのテーブル席を眺めた。

 三人の中に、黒いドレスを着た客がいた。

 小柄な女性だったが、透き通るような白い肌をしていて、ハッとするほどの美少女だった。

 マスターがメニューを三人の客に配り、カウンターに戻って行った。

 女性客は楽しそうに、メニューを眺めていた。やがてオーダーする料理が決まり、黒いドレスを着た客が声を上げた。

「すみませ~ん」

 マスターはカウンターを離れ、女性客のテーブル席へ行った。

 若菜たちは、なんとなく息をひそめ、女性客のテーブル席の様子を伺っていた。

 女性客のオーダーが終わり、マスターはカウンターに戻り、三人分のカクテルを作り始めた。

 ほどなくしてカクテルが出来上がり、マスターは女性客のテーブル席にカクテルを運んだ。

「ごゆっくりどうぞ」

 軽く頭を下げたマスターが、テーブル席を離れようとした時だった。

 驚きの声が上がったのは。

「七海……七海でしょ!」

 声を上げたのは、黒いドレスを着た女だった。 

 マスターの顔に驚きの表情が広がったが、マスターは呼吸を整えると、いつもと変わらない声で言った。

「お久しぶりです」

「久しぶり!元気だった?」

「はい。失礼いたします」

 軽く頭を下げると、マスターはテーブル席を離れて行った。

 若菜たちは、それぞれ顔を見合わせていた。

 切り出したのは、ちはるだった。

「マスターの名前、七海って言うんだ!」

 若菜も興奮したように言った。

「七海さんかぁ。どんな字なんだろ?」

 腕組みをした馬場は、低い声で言った。

「あの可愛いこちゃん、マスターのことを呼び捨てに呼んでいたぞ!マスターは、自然に受け止めていたし。あのふたり、どんな関係なんだ?」

 皆黙り込んで静まり返った時、爆弾を落とすように、赤井が静かに言った。

「……恋人?」

 若菜とちはるは、思わずみつめあった。

 そんな時だった。

 女性三人のテーブル席から話声が聞こえ、若菜たちは思わず耳を傾けた。

「マスターと知り合い?」

「まぁね」

「もしかして、元カレ?」

 黒いドレスの女は、何も言わず静かに微笑むだけだった。

 ちはるは、小さな声で言った。

「あの女、何も言わなかったわ」

「ってことは、肯定をしたも同然って、ことか」

 馬場も小さな声で言った。

 若菜は、黒いドレスの女をそっと眺めた。

 化粧をしてドレス姿のせいか、年齢がわからない。

 笑った顔はあどけなくて幼く見えたが、話を聞き入っている表情は凛としていて、同性の若菜でも綺麗だと思えた。



 女性客たちは、若菜たちより先に店を出て行った。

 マスターが店のドアを開け、女性客たちを見送る。

 閉じられたドアから、マスターはなかなか戻ってこなかった。

 ……何を、話しているのかなぁ……。

 若菜が胸の中で、そうつぶやいた時だった。

 若菜の胸の内を察するかのように、赤井が若菜に言った。

「気になる?」

「えっ?ううん、全然!」

 若菜が、慌てて首を横に振った時だった。

 マスターが店に戻って来た。

 マスターは、真っ直ぐ若菜たちのテーブルにやってきた。

「水田さん」

「はい?」

 突然マスターに呼ばれ、若菜は少し顔を赤くしながら返事をした。

「すみませんが、少しよろしいでしょうか?」

「はぁ」

 わけがわからないまま、若菜はテーブル席に立ち、マスターの背後を歩いた。

 マスターは若菜をカウンター席に座らせると、自分はカウンターの中に入った。

 若菜と向かい合わせになると、マスターは少しの間黙り込んだ。

「あの、マスター」

 若菜の声に顔を上げたマスターは、意を決したように切り出した。

「……白田さんの連絡先を、教えてほしいのですが」


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