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DANDY〜笑顔〜  作者: kagari
12/18

タイトル未定2025/11/22 20:39

 日曜日の午後、繁華街は人々で溢れていた。

 待ち合わせ場所で有名な場所で、赤井は既に若菜を待っていた。

 真っ赤なコートを着た若菜は、小走りに赤井の側に駆け寄った。

「遅れてごめんなさい!」

 若菜はぺこりと頭を下げた。

 長いツインテールの髪が揺れる。

「俺が、早く来すぎたんだよ」

 顔を元に戻すと、笑顔の赤井がいた。

「じゃあ、行こうか!」

「はい。あの、何処へ行くんですか?」

 赤井は何も答えず歩きだし、若菜は慌てて赤井の隣を歩いた。

 赤井が若菜を連れて行った場所は、ショッピングセンター内のゲームコーナーだった。

 いろんなゲームがあり、既に大勢の客で賑わっていた。

 赤井と若菜は、ユーフォーキャッチャーのコーナーを、練り歩いた。

「若菜ちゃん、好きなキャラとかある?」

「う~ん……あっ、あれ可愛い!」

 若菜は、有名なキャラのぬいぐるみを指さした。

「あっ、アレね!任せて!」

 幸いゲーム機の前に客はいなく、すぐに遊ぶことができた。

 赤井は財布からコインを投入口に入れ、慣れた手つきでレバーを操作した。クレーンがゆっくり動き、若菜のお目当てのぬいぐるみを、簡単に取ることができた。

「はい、若菜ちゃん!」

 ゲーム機の備え付のビニール袋にぬいぐるみを入れた赤井は、得意げに若菜に渡した。

「わぁ、ありがとう」

 声を上げながら、若菜は受け取った。

 赤井は、周囲をきょろきょろ見渡しながら言った。

「次は、そうだなぁ、よ~し。あれ、いってみよう!」

 若菜の腕を掴んだ赤井は、目に留まったゲーム機に向かって、歩きだした。

 若菜を連れて行ったゲーム機は、大きなお菓子を取るユーフォーキャッチャーだった。

「さすがに、これは無理でしょ」

 笑いながら言う若菜をじろりと見た赤井は、無言のままコインを投入口に入れた。

 慎重にレバーを動かす赤井を、若菜は息を飲んでじっくりみつめた。

 少し危ないところもあったが、お目当てのお菓子を取ることができた。

 赤井は、立て続けにもうひとつお菓子を取った。

「若菜ちゃんは、ゲームやったりしないの?」

「たまにやったりするけど、全然ダメ!」

「そっか。あっ、次はアレ!」

 赤井は若菜の腕を持ちながら、レーシーングカーのゲームコーナーに行った。

「負けた人が、今夜の夕飯おごりね!」

「え~!」

 赤井は素早く座席に座り、渋々ながら若菜も隣の座席に座った。



 ゲームコーナーでひとしきり遊んだ若菜と赤井は、同じショッピングセンターの中にある服屋の店舗を見て歩いた。

 意外にも赤井はお洒落でファッションセンスがあり、若菜の好みを見抜くと、若菜の服のコーディネートをして若菜の服を選んだ。

 赤井が選んだ服に、若菜はすっかり満足して服を一着購入した。

「本当に、この服で良かった?」

 不安気に聞く赤井に、若菜は満面の笑みで答えた。

「凄い気に入った!短大の入学式の服を買う時、赤井さんにつきあってもらおうかな?」

「えっ、良いの?」

「もちろん!」

「やったぁ~」

 赤井は人目を気にせず、大きな声を張り上げた。



 夜になっても繁華街は明るかったが、赤井が若菜を連れて行った場所は薄暗い場所だった。

 隠れ家的でレトロ調な家の前に立つと、若菜は赤井に聞いた。

「本当に此処が洋食屋?」

「うん、そうだよ。さぁ、行こう」

 赤井は若菜の背中を押しながら、店の中に入って行った。

 洋食屋は暖炉が灯っていて、店の中は暖かだった。

 数人の客が、声を潜めて談笑していた。

智 (さとし)君、いらっしゃいませ」

「こんばんは」

「可愛い彼女さんですね。智君、隅に置けないなぁ」

 店のオーナーは笑いながら言い、メニューを赤井と若菜に手渡した。

「赤井さん、常連さん?」

「この店は、父親の友人の店なんだ」

「それで、こんな素敵なお店を知っていたのね!」

 若菜は、ため息交じりに言った。

 メニューを見た若菜は、値段に少しひるんだ。  

 高校生には、荷が重い値段だ。

「あの、赤井さん……」

「えっ?」

「ゲームに負けたから、私がおごるんですよね?」

「あっ、ああ!あんなの、冗談だよ!」

「冗談?」

「ああやって言えば、本気になるでしょ。俺が払うから、遠慮しないで好きなの食べて」

「いえ、自分の分は払います!」

「いいよ、そんなの」

「ダメです!」

「……じゃあさ、俺の誕生日の時、ご馳走してよ。それで良い?」

「……はい」

「俺、大食いだからね。安くて、腹一杯になる店をリサーチしといた方が良いよ」

 赤井の言葉に、若菜は思わず笑ってしまった。

「遠慮しないで、好きなの選んでね」

 赤井は、メニューを広げながら言ったのだった。



 食事が終わり食後のコーヒーを飲んでいると、店のオーナーが若菜と赤井の目の前にムースを差し出した。

「サービスです。どうぞ」

「ありがとうございます!」

 若菜と赤井は、揃ってお礼を言った。

 ムースは、小ぶりながらもしっかりした味だった。

「美味しい!」

 若菜は思わず声を上げた。

 そんな若菜を見た赤井はそっと微笑み、若菜に切り出した。

「若菜ちゃんを初めて見た時可愛いなぁ、こんな可愛い子が彼女だったらなぁって、思ったんだ」

 若菜はスプーンを手にしたまま、赤井をみつめた。

「若菜ちゃんが、マスターを好きなことは知っている。でも、諦めきれないんだ。マスターが好きでも良いよ。今日みたいに、また会ってほしい」

 若菜は、持っていたスプーンをゆっくり置いた。

「マスターは私の気持ちを知っているのに、いつも微笑むだけ。昨日北神さんとマスターの店に行ったんだけど、そこに常連客の女二人がいて、マスターは女性客の会話に合わせていた。私の扱いと同じだった。どんなにマスターを想っていても、マスターには届かない。凄く自分が惨めに思えた」

「マスターを、諦める?」

「……わからない」

 そう言った若菜に、笑顔はなかった。



 店を出るとオーナーが若菜と赤井を見送ってくれた。

 赤井は振り返ると、オーナーに言った。

「美味しかったです」

「智君、また来てください。お父さんによろしく」

「はい」

「ごちそうさま、おやすみなさい」

 若菜は、頭を下げながら言った。



 黙り込んだまま歩いていた若菜は、そっと切り出した。

「今日は、楽しかった」

「本当に?」

 赤井は、嬉しそうに言った。

「こんなに楽しい日曜日を過ごしたのは初めて!」

「俺も楽しかったよ」

「マスターとは、こんなに楽しく過ごせないと思う」

「また、誘っても良い?」

「もちろん!」

 赤井は思わず、ガッツポーズをした。

「でも、まだマスターのことが忘れられない。こんな私でも良いの?」

「マスターのこと、好きでも良いよ。俺は、若菜ちゃんが好きなんだから!若菜ちゃん……」

 赤井は不意に立ち止まり、若菜は赤井を見上げた。若菜の肩にそっと触れた赤井は、若菜の額にそっとキスをした。

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