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DANDY〜笑顔〜  作者: kagari
10/18

タイトル未定2025/11/21 21:01

 カウンター席にいた男性客が、精算をして店を出て行った。

 店の中は、ちはると馬場のふたりだけになった。

 マスターが厨房に入って行くと、厨房はサンプルのチョコの甘い香りがしていた。

「マスター、よくできていますよ!」

 言いながら料理人のたきこが、サンプルのチョコをマスターに差し出した。

 マスターはサンプルのチョコをつまんだ。

「よく研究されていますね。これなら、店でも出したいです。後は、チョコのデザインですね。お洒落なチョコなら、女性にも受けますね」

 サンプルのチョコと言うことで、ただの黒い塊だった。

「ありがとうございます。今後の参考にさせていただきます」

 亮は礼を言った。

「たきさん、オーダーお願いします」

 マスターはメニューをたきこに見せ、料理名を指さした。

「かしこまりました」

 たきこは、冷蔵庫に向かった。

 マスターは亮と若菜に言った。

「お疲れ様でした。ゆっくりしていってください」

「私も良いの?」

 驚き顔で、若菜が言った。

「北神さんもいるし、十時まで良いですよ」

「やったぁ!」

 若菜は笑顔で声をあげた。

 亮が厨房を出て行くと、若菜はマスターを振り返った。

「あの……」

「ん?」

 久しぶりに見るマスターのやさしい表情に、いつになく若菜は舞い上がっていた。

「あの……パパ……父からのお土産、迷惑でしたよね?すみません」

「いえ、そんなことないですよ」

 笑顔で言うマスターを、若菜はじっとみつめた。


 先に厨房を出た亮は、カウンター席に座っていた。

 少し遅れて、若菜は亮の隣に座った。

 若菜がカウンター席に座った頃、マスターはカウンターの中に入った。

 亮と若菜はマスターからメニューをもらい、カクテルとオレンジジュースと料理をオーダーした。

 マスターが厨房に入って行くと、若菜は亮に切り出した。

「料理人のたきさん、初めて見たわね」

「私も、初めてです」

「知人の紹介」

「そう言って、いましたね」

「知人って、どんな人なんだろ?」

「さぁ……親類とか近所の方とか?」

「本当に、謎の人よね!」

 若菜がため息交じりに言うと、若菜の背後からちはるの声がした。

「ねぇ、料理人ってどんな人だった?」

 言いながらちはるは、若菜の隣に座った。馬場は、亮の隣に座った。

「どんなって、六十代くらいの小柄で華奢な人だったよ」

 若菜の言葉に、ちはるは吹きだした。

「誰よ、料理人がマスターの彼女だ、奥さんだって言ったのは!」

「俺だよ!」

 馬場は、ふてくされて言った。

「たきさんが、マスターの彼女?奥さん?そんなわけないじゃん!」

 若菜は、笑いながら言った。

「でも、もしかしたら……」

 尚も引き下がらない馬場に、ちはると若菜は笑い続けた。

 厨房から戻って来たマスターはカクテルを手際よく作り、オレンジジュースを出した。

「マスター、席こっちに移動したから!」

「はい」

 マスターは、ちはるたちがいたテーブル席の片づけを始めた。

「ぱっつんは、何か成果あった?」

「成果?」

 ちはるの問いが、亮にはわからなかった。

「ボケ?マスターとの成果に、決まっているじゃない!」

「マスターの心の鍵は、硬いです」

 亮の代わりに、若菜が答えた。

「やっぱりね」

 ちはるは、軽いため息をついた。

「女がいるから、硬いんだよマスターは」

「まだ、言っているよ!」

 馬場の悪態にちはるは、ぴしゃりと言った。

 ……子供がいるから、マスターは何も行動しないんだわ……。

 マスターと一緒にいた子供を、偶然流花と見てしまった若菜は、胸の中でそうつぶやいた。

「お待たせしました」

 マスターが厨房から亮と若菜の料理を運んできて、亮と若菜はちはると馬場と話をしながら料理を食べた。マスターはカウンターの隅でグラスを磨いていた。

 店の入り口のドアについている鐘が鳴り、客が入って来た。

 ちはると若菜は、何気なくそっと振り返った。客は、二十代前半の女性二人組だった。

 女性客はきちんと化粧をして、綺麗に着飾っていた。

 グラスを磨いているマスターの前のカウンター席に座ったとたん、甘えるように言った。。

「マスター会いたかった~」

「私も~」

「お待ちしていましたよ」

 グラスを磨きながらマスターが言うと、女性たちはキャーキャー歓声を上げ、カクテルをオーダーした。

 カクテル作りの準備をしているマスターに、女性たちは話しかけてきた。

「マスター。店が終わったら、遊びに行こう!」

 マスターは黙ったまま、カクテルを作りだした。

 目の前でシェイカーを振る姿を、女性客はうっとりみつめていた。

 やがてカクテルが出来上がり、マスターはカクテルを差し出した。

「お待たせしました」

 女性客たちは、カクテルを飲みながら切り出した。

「ねぇ、マスター遊びに行こうよ!」

「何処に、遊びに行くんですか?」

「知ってるくせに~遅い時間に行くとこって言ったら、ひとつしかないでしょ」

「う~ん……一晩に二人は、体がもちませんね」

「じゃあさ、一人ずつだったら良いの?」

「試してみますか?」

 マスターは、ニヤリとした。

「も~マスターのエッチぃ~」

 女性たちは、嬉しそうに声を上げた。

 亮たちは、信じられない光景を目の当たりにしたと言うように、マスターたちのやりとりを眺めていた。

「若菜さん、そろそろ時間です。行きましょう」

 亮の声に、若菜は我に返った。

「おい、俺たちもそろそろ行こうか」

 馬場の声に、ちはるは顔を上げた。


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