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市役所職員、毒の力で異世界を生き残る

作者:でんつめ
俺は、森田 楓、三十四歳。市役所の土木課に勤める職員だ。
 道路の補修、橋梁の点検、河川の氾濫対策。誰に褒められることもなく、時に「遅い」「雑だ」と苦情ばかり浴びる仕事だったが、市民の生活を守るために不可欠な仕事だった。

 そんな彼には、守るべき家族がいた。
 妻と、小学五年生の長男、三年生の次男
 「おかえり!」と迎えてくれる声と、温かい食卓。それが楓の心を支えていた。

 ――だから、あの日も。
 夜遅く、陥没しかけた道路を確認に行ったのは、そこが子供たちの通学路に近かったからだ。

 しかし突然、足元が崩れ、楓は闇の中に飲み込まれた。

 目を開けると、そこは湿った洞窟だった。
 岩壁は水気を帯び、天井から水滴がぽたりと落ちてくる。光源はなく、かすかに輝く紫色の苔が闇を照らすだけ。

「……ここは……どこだ?」

 呆然とした視界に、突如光の文字が浮かび上がった。

【固有能力:毒操術】

 その瞬間、手のひらから紫色の液体が滲み出し、岩肌に落ちると、じくじくと泡立ちながら腐食していった。
 不気味な力に息を呑みつつも、楓は唇を噛みしめる。

「……帰らなきゃ。絶対に」

 妻をひとりにしてはいけない。
 幼い子供たちを残してはいけない。

 どんな世界だろうと、生き延び、この力を利用し、必ず元の世界へ戻る。
 その決意だけが、心を奮い立たせた。

 楓は洞窟の闇を見据え、深く息を吐いた。

「まずは……生き延びるための環境整備からだ」

 市役所土木課職員、森田 楓。
 毒を操る異世界サバイバルが、今始まる。
 唯一の目的は、愛する家族のもとへ帰還することだった。
エピソード1
2025/08/25 12:35
エピソード2
2025/08/25 19:56
エピソード3
2025/08/26 12:24
エピソード5
2025/08/27 09:50
エピソード6
2025/08/27 20:31
エピソード7
2025/08/28 19:40
エピソード8
2025/08/29 12:00
エピソード9
2025/08/29 21:32
エピソード10
2025/08/31 11:51
エピソード11
2025/08/31 19:02
エピソード12
2025/09/03 23:28
エピソード13
2025/09/05 12:33
エピソード14
2025/09/08 12:43
エピソード15
2025/09/10 12:29
エピソード16
2025/09/10 12:48
エピソード17
2025/09/10 17:12
エピソード18
2025/09/10 17:55
エピソード19
2025/09/10 21:33
エピソード20
2025/09/10 22:42
エピソード21
2025/09/13 16:51
エピソード22
2025/09/13 21:25
エピソード23
2025/09/15 09:38
エピソード24
2025/09/17 12:48
エピソード25
2025/09/20 21:41
エピソード26
2025/09/22 12:22
エピソード27
2025/09/24 12:44
エピソード28
2025/09/24 20:50
エピソード29
2025/09/24 21:16
エピソード30
2025/09/25 08:07
エピソード31
2025/09/25 18:34
エピソード32
2025/09/26 07:39
エピソード33
2025/09/26 12:25
エピソード34
2025/09/29 12:48
エピソード35
2025/10/09 12:47
エピソード36
2025/10/10 12:13
エピソード37
2025/10/15 12:20
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