監視と謀略の狭間で
王が倒れ、魔導観測部は活動の一時停止を余儀なくされた。
ノアは王城の地下、魔力を封じる特別居室に“保護”という名目で軟禁されていた。
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「……これが、俺の部屋か」
白い壁、石畳の床。飾り気のないベッドと机。
貼られているのは、御札のようなもの。
それが、空間の魔力を抑えるために使われていた。
「こんなので防げるなら……最初からいろんな所に貼っとけば、こんなことにはならなかったんじゃ……」
ぼやきながら、ノアは壁に貼られた御札を眺めた。
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その時、不意に後ろから声がした。
「そんな物でもないと安心できない臆病者もいるのよ」
聞き覚えのある声。振り返れば、そこにはフィーネが立っていた。
「私がなんとかするから。……お願い、早まったことはしないで」
それだけを言い残して、彼女は静かにその場を去っていった。
(こんな状況じゃなきゃ、“フィーネさんのデレきたー!”って叫んでるとこだけど……)
嬉しさを抑え、ノアはただ感謝の思いでいっぱいだった。
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フィーネは王妃との面会に成功していた。
「ノアは犯人ではありません。そんなこと、貴女が一番理解しているはずです」
王妃・セリーヌは静かに目を閉じ、答えた。
「分かっておる。あの子が、王を害するような者でないことなど……な」
「では、なぜ……」
「反対派の貴族どもを抑えるには、“形”が必要なのだ。あれは“象徴”として閉じ込められておる。
我らの国を二つに割らぬための、最小限の犠牲だと、理解してくれ」
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数日が経っても事態は動かず、ノアはただ静かに“時間”という鎖に縛られていた。
(……このままじゃ、排除される)
国王の死により、改革の推進力は失われた。
反対派の貴族たちを止めるすべは、今の王妃にも残されていない。
(なら……俺が、動くしかない)
ノアは、そっと監視の目を盗みながら、机に紙を広げた。
その手には震えはなかった。
彼は——新たな計画のために、何かを書き始めた。




