星空
三題噺もどき―ごひゃくろくじゅう。
視界一面に星が広がっていた。
私ごときの狭い小さな視界では、収まりきらないほどの。
どこまでも、どこまでも続く星空が。
頭上に、広がっていた。
「……」
頭上にとはいったが、私自身は寝転がっているので正しい表現ではないかもしれない。
眼前にと言えばいいのかと言えば、そうでもない気がするけど。
まぁ、そんな些細なことはどうでもいいか。
「……」
こんな星空、プラネタリウムでしか見たことがない。
いや、本物を偽物と比べるのがまずおかしいのか。
プラネタリウムは確かに本物に限りなく寄せた偽物ではあるが、こうも壮観な景色を見た後に見てしまうと、あれが偽物だと分かってしまう。
本当の星空は、こんなものじゃない。と。
「……」
まだ幼い頃は、しょっちゅうプラネタリウムに連れられて居たので、星座はそれなりに知っていたはずなのだが。
こうも星しか見えないとなると、何が何やら分からないな。
一際輝く星は確かにあるけれど、それを囲むように広がる小さな光があまりにも多すぎて。
「……」
なんとなく、あれとあれで、あの星座だろうかというのを考えては見るモノの。
たいして意味はないと思ってしまう。
広がる星に、形と物語を与えたのは人であって、彼らはそんなつもりもなく並んでいるだけなんだから。そのままを見て、そのままを味わえばいい。
この広く、どこまでも続く星空を。
見るままに見て、感じるままに感じたらいい。
「……」
ただひたすらに、心を奪われ、言葉も漏れぬほどに見惚れていた星空に。
「……」
突如。
「……」
一筋の光が。
「……!」
初めて見た。
流れ星だった。
「……」
願い事も何もないままに消えたけれど。
これは見れただけでも感動ものだなぁ。
「……」
なんて、思っていたのに。
「……!」
視界の隅で、もう一度星が落ち。
反対側でも星が落ち。
次々と、星が。
「――!」
雨が降るように、星が降る。
空一面に広がっていた星が。
地面に次々と堕ちてくる。
「――」
そう。
堕ちて。
「―――」
暗闇に浮かんでいたはずの星は。
地上に堕ちてくる。
名もない星から、名のある星まで。
「―――――」
ひとつ、ひとつと。
堕ちた星たちは、どこへともなく消えていく。
「――――――」
星一つなくなった空は。
真っ黒で。
ひたすらに黒くて。
暗闇で。
恐ろしくて。
浮かぶはずの月すらいつの間にか堕ちていて。
「――――」
そういえば私は。
どうしてこんな所にいるのだろうと、気づいて。
Pipipipipipipip―――――――――――
「…………」
隣の部屋のアラームで目が覚めた。
どんな音量で鳴らしているんだ……そんなにしないと起きれないのか。
「……」
なんだか、嫌な夢を見た気がする。
気持ちが悪いと言うか、どこか少し、寂しいと言うか。
何かの、据わりが悪い。
「……」
しんと、冷えた空気に体が震える。
どうせ今日も何も出来ないのだから。
寝直してしまおう。
お題:雨・堕ちる・プラネタリウム