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呼出(律儀で優しい又従弟)

新郎新婦の心情とは、関係なく二人の祝言は粛々(しゅくしゅく)と進行され、両家の当主が祝辞を述べ最後に二人が約束の盃の酒を飲み干すという段階まで進みつつあった。


山崎家は、新婦の父であり当主である片家が、加藤家は、後見人代理として秀吉の異父弟(おとうと)である秀長が祝辞を述べた。


虎之助にとって、常に戦場を飛び回っていた秀吉よりも、もう一人の又従弟である秀長の方が親交が多かった。


又従弟()といっても、秀長は、虎之助よりも22歳年上であり、幼い時に父を失った虎之助にとっては、母子家庭の加藤家を気にかけ、よく食べ物を届けてくれる秀長は、頼れる親戚のおじさんだった。


虎之助の幼少期、当時小一郎という名であった秀長は、父親のいない虎之助を不憫に思ったのか、虎之助に一つの約束(宣言)をした。


『トラ、ワシはお前の父親代わりじゃ、お前の元服する日まで、これからお前の誕生日には必ず土産(みやげ)を持って顔を見に来る。』


『そん時は、必ず、この家の軒先から、庭の木まで(約10m)お前をおんぶして、お前がどれだけ大きくなったかを確かめるからな、モヤシの様に軽かったら、怒るからな。』


『マンマ(ごはん)腹一杯食って早く大きくなれよ! まあ、ワシは背は高くは無いが、力士のように力持ちじゃから、お前がどんなに大きくなっても、持ち上げるけどな、』と、最後に『ドスコイ』と大きな声をあげ、小一郎はお腹を叩いてみせたのである。


当時の秀長は、割腹が良く、顎を引くと顎周りにうっすら2重線ができるほど、すこし太っており、小兵力士の印象があり、その様子をみて加藤家は一同どっと笑ったものである。


その宣言どおり、このやさしい律儀な又従弟は、毎年虎之助の誕生日には加藤家に必ず来てくれた。


そして約束の木までの距離を虎之助をおんぶし、最後に、『大きくなったなあ、トラ、ワシはうれしいぞ!来年又来るぞ、ドスコイ』というのが加藤家と秀長の毎年の挨拶(儀式)になっていた。


同じく、優しく素直な虎之助は、又従弟(はとこ)との約束を守るように健やかに成長した。


予想外だったのは、虎之助の成長だった。10歳になる頃には秀長と同じ身長(5尺約151Cm)になり、それからは毎年竹の子のように、そう正に破竹の勢いで虎之助の体がどんどん大きくなっていったのである。


それに反比例して、秀長の『ドスコイ』の掛け声は低くなっていったのである・・・。


虎之助が12歳の誕生日には、庭の木に辿りつく前に、数秒立ち止まり暫く動けなくなってしまった秀長が、『ドスコイィ』と気合を入れ、汗を滴らせ、木までやっとの事で到着した。


気合を入れた時の秀長の鬼の様な形相、ゴールした時の疲れ切った秀長の顔、申し訳なさそうな虎之助の顔を見ていたイトは、虎之助の身体がこれ以上大きくならない様に、毎朝仏さまにお祈りをするようになったほどである。


元服前の最後の誕生日の日、庭の木にタッチした後、秀長が流した涙は、『虎之助の成長がうれしいから』と秀長本人は説明していたが、最後まで約束を破らなかった自分への涙だという事は秀長が言わずとも、当然二人にはわかっていた。


説明が長くなってしまったが、イトと虎之助は、決して弱音を吐く事のない優しい秀長という又従弟が大好きだった。


祝言が終わり、参加者の大半が帰りの支度をはじめた頃、秀長が片家、イト、虎之助夫妻の4人の傍にきて、秀吉からの伝言を伝えた。


『本日は、大変おめでとうございます。お疲れの処大変申し訳ございませんが、片家様、叔母上様、虎之助夫婦は、これより私と共に長浜城へ来るようにと、兄者から申し付けられました。』


『大事な話があるとの事でした。宜しくお願い致します!』

『面白かった!』


『続きが気になる、読みたい!』


『今後はどうなるの!!』


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