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指導者からの目線【1】(ヒゲ殿、虎之助を評価する)

槍とは、形状から突く事が目的であると思われがちであるが、戦場でポイントになるのが、相手を突く状況にどう誘導していくかである。


突く時には、一撃必殺を狙って突くが、相手も必死に抵抗をしてくる。その為、容易に突くと思わぬ反撃を被る可能性がある。


一撃必殺を繰り出す前に、相手をどれだけ自分の思い通りに動かすか、それを研究し体系化し(かた)にしたのが、槍術である。


戦場は、1秒が生死を分ける世界である。頭で考える間に、攻撃が来た場合を想定して、体が瞬時に反応するように、体に染み込ませるのである。


染み込むぐらい、同じ練習を何度も、何度も繰り返すのである。


戦を経験した者は、一瞬の生死を分ける世界を体験している。


その者は、稽古中も、戦場を想定し、将来の自分の生存率をより高める為、死に物狂いになって体に型が染み込むような練習をする。


初陣を経験していない者は、それが理解できない。彼らは、同じ動作を繰り返しながらも別世界で生きているからだ。


しかし、初めての模擬戦で虎之助は逃げずに失神するまで自分を追い込めた。長頼は、虎之助を失神させた後、流石(さすが)は、羽柴秀吉が見込むだけはあると少し感心したのである。


練習では、失敗してもやり直せる。戦場では失敗したら2度目は無い。その簡単な現実を、3人の若武者にどう教えようか、髭殿は苦労していた。


長頼から見て、3人のうち、虎之助だけが、初日から失神するまで自分を追い込んだ。参ったとは言わず、最後まで戦おうとして、失神したのである。他の二人は、自分が殺気を込めて打とうとした矢先、降参したのである。


自分の力量を知っている事は悪い事ではない。ただ、人とは自分の力量を自分自身で過少評価してしまう生き物である。


兎角(とかく)若い時は、その傾向がある。指導者となる者が、弟子の限界を見極め、限界ぎりぎり迄、追い込む、但し、追い込み過ぎて潰してしまったら意味が無い。その匙加減(さじかげん)ができる者が指導者である。若い人の可能性を潰してしまう指導者は指導者と名乗る資格は無いのである。


長頼の任務は、加藤虎之助を鍛える事である。


ただ、将来虎之助を支える役目である二人が、前田利家を支えている自分と重なり、彼らを育てる事も自分の責任だとも考えていた。


長頼は、虎之助と槍を交える時に意識するのが主君利家である。


虎之助と同じように6尺を越える(あるじ)が槍を持つと、いや持つだけで威圧感を感じ、体の小さき者は、懐に入るしかないのだが、利家の長い腕が持つ槍は、自分の何倍も有るかのように長く感じられ、懐に入る前に刺されるという恐怖にかられる。


実際、懐に入ろうとすると、槍を横に払われ胴を強打されるのである。


又、時には自分の頭よりも高い位置から、槍を振り落とされ、頭を強打する。


槍で上から叩く事で相手に脳震盪をおこさせ、相手がよろめいているところに槍を突き刺して止めを刺すのが利家得意の殺法であった。


虎之助が振り落とす槍の威力は、利家以上を思わせる時が有り、虎之助の身体能力の高さが(うかが)わせた。


巨漢の槍使いが、高い位置から槍を打ち付けると、相手が無防備でうけた場合、1檄で相手の息の根を止める事も珍しい事では無かった。


槍は、体が小さき者のハンデを克服する武器でもあるが、体が大きい者が使用すると、更に強い武器になるというのが長頼の実感であった。


しかし、弱点もある。体が大きいという事は(まと)が大きいのと同じである。攻撃を仕掛けた後等、その大きい体が仇となり、反撃を受けやすいのである。長可が使用する十文字槍は、正に小さき者が大きな者と戦う為に開発されたような武器であった。


『突けば槍 ()げば薙刀(なぎなた) 引けば鎌』と言うように、先に槍を突きだしてきて、横に逃げようとすると、横に振り回し横についている刃先で切りつける。


薙刀としての攻撃を防いだとしても、槍を引いて、鎌として槍を持っている腕を刈るのである。3つの連続攻撃を受けて、無傷で切り抜けるのは正に至難の業であった。巨漢の虎之助にとって、相性が悪い武器と言わざるを得ないと長頼は冷静に分析していた


2カ月の鍛錬の結果、虎之助の動きが見違える様に俊敏になり、研ぎ澄まされていく事は長頼も日々感じていた。


最初の頃は受けてばかりであった虎之助が、最近は反撃をしてくるようになり、またその反撃も一撃一撃とだんだん早くなって来ていたのである。


長頼が課した筋力トレーニングも少しづつ実を結びつつある兆候でもあり、踏み込みの速さが少しづつ早くなって来ていたのである。


『あの御仁が来て下されば・・・。』と長頼は、虎之助の修業の最終試練には必要不可欠の人物の動向を考えていた。

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