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会いたくて、会いたくて。アイタイの  作者: 結芽月
第二章[相容れない二つ]
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第二章[相容れない二つ]その5

「こいつを仲間に!?冗談は休み休み……いいえ、一切言わないでよ!あの背中腕だけって話だったでしょ!仲間にするのは」

「まぁ、そうだけども」

 叫ぶ花枝に、少々困った様子の上総。

「それに連中は基本、こいつが仕切ってたんでしょ。なら仲間にするなんて選択肢は一切存在しないわ」

「それは私もそうだな。何故こんな奴と一緒にならなきゃならん。そもそも……私は討論などしないぞ」

 アソシアードは特に花枝に対して敵意をむき出しにしてそう言う。

 彼らがいるのは、例の宿の中にある、特に大きな一室だった。人とそれ以外系八名が足って話すぐらいにはちょうどいい、一軒家のリビングぐらいの大きさがある。

 壁は土壁で、枠や柱などの部分は木で出来ており、結構しゃれたデザインをしている。

 両陣営は、部屋の小さなガラス窓付きの扉から管理人が出ていってからというもの、部屋の中心に置かれた大きな木のテーブルをはさみ、互いににらみを利かせている。

「……想定外だったのだ。御枝ちゃんは、どうもほとんどの理性が吹っ飛んでいると考えられる。会う、と言うこと以外にほとんど何も理解できていない。だから、利用されて当然だ。……だからこそ彼女はどうしてもこちらで保護したままにしておきたい…」

 上総は花枝に囁く。

「…………それで?」

 花枝はアソシアードに敵意剥き出しの視線を向けつつ、ちらりと上総の方を見、続きを促す。

「だが………彼女はこのままだと、宇沙側に戻る可能性がある。そこの彼とかと会えなくなることを嫌がっているみたいだから………」

「そりゃ、私は会いたくなかったし、今も、これからも会いたくないわよ」

「……だろう?会う事は、一切なくなってしまう。それを拒んだ彼女は戻りかねない。また宇沙に利用されかねない。だからこそ、彼を論破し、こちらの主張の正しさを認めさせ、仲間にして欲しい」

「……まぁ、分からないでもないわ」

 花枝は上総から宇沙が自然界の過激派であろう、という話を御枝と同じように聞いている。だから、花枝は人を守るという目的に合致する以上、それを拒む理由は特になかった。むしろやってもいいと考えていた。同様の理由で、御枝の奪取にも賛成していた。

「……私としては、背中腕の娘以外、ただの許せない敵なんだけど……それ以上でも、それ以下でもないけど………」

 もはや、とても人とは言えない元人や、何故か自我を持つ機械は、別に宇沙に利用されていようが、花枝が否定する思想に染まっている以上、倒すべき敵でしかなかった、ということだ。

「仕方ないわね。論破してあげるわよ。……ただ気になるのは、堂々としてるそこの黒幕!」

「なんだい?」

 宇沙はいつもの微笑と共に答える。

「アンタ大人しく討論何てさせる気………」

「あるよ?どうぞどうぞ。してくれちゃって」

「……え、え?」

 黒幕と考える宇沙の返答に、拍子抜けした様子の花枝。

「……多分、面白がってるだけだろう。大丈夫だと、高を括っているのかもしれない。普段からなんでも下に見てバカにしているように見えるし。……だから君は、その油断が命取りと教えてやればいい」

「……そうね。分かったわ。………アンタ、聞きなさい」

「……何だ、うるさいぞ。いつになったら御枝を返す……」

 アソシアードは花枝に鋭い視線を寄越す。ちなみに、彼は今まで詩やアーフに、御枝を返せとひたすら主張していた。

「……私が今からアンタを論破する。アンタは大人しく討論して負けなさい」

 花枝はアソシアードに人差し指を突きつけて言う。

「……さっきも言ったろ。私はそんなことはしない。お前らは御枝を返せばそれで…」

 そんな彼の発言を、彼女は遮って言う。

「アンタがくだらない考えを改め、今までやってきた行動を二度としない…つまりは私たちの仲間になれば、いつでも背中腕の娘に会えるわよ」

「………まだ、馬鹿にするか」

 アソシアードは怒りを露わにした。

「ええ。私達の方が正しいの。アンタ達の方が悪い。圧倒的な悪よ。分からせてあげるわ。私たちの正しさを」

 自信が花枝の全身からあふれ出ているのではないかと感じるぐらい、その言葉は誇らしげで、力強かった。

「……いいだろう。むしろ私が、お前らを論破してやる。そしたら御枝を返してもらうぞ」

「ふん。出来るわけないわね、そんなこと。あり得ないことだけど、まぁ、できたら好きにすれば?」

 煽るように花枝は言う。

「…何故君はそこまで敵意を向けるんだ。……一応相手がリーダー格になるからかな…」

 アソシアードに対し、いつも当たりの強い感じの花枝に対し、上総が半ば呆れている中、討論……と言う名の、相手を論破し、従わせるための主張の仕合が始まった。


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