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田んぼで拾った女騎士、田舎で俺の嫁だと思われている  作者: 錬金王
二章

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職場体験

マガポケにて『田んぼで拾った女騎士』のコミカライズが再開されました。しばらくは隔週での更新になりますがよろしくお願いします。

 大根と春菊の混植をし、秋ジャガイモの発芽を確認、害虫駆除、残っている夏野菜の収穫、袋詰め、出荷作業などを行っていると、あっという間に竹細工をする日になった。


「セラム、そろそろ出発するぞ」


「わかった!」


 時計の針が十四時半を過ぎたところで俺はリビングにいるセラムに声をかけた。


「おはぎ、悪いが私が相手をしてあげられるのはここまでだ」


 セラムが申し訳なさそうに言うと、おはぎはやっと解放されたと言わんばかりにひょいっと腕から脱出した。


「また帰ってきたら相手をしてやるからな?」


「にゃあご」


 未練がましそうにする声をかけるセラムに対し、おはぎは「いらん」というような素っ気ない声を漏らした。


 どう考えても相手してくれたのはおはぎの方ではないだろうか。


 飼い主とペットの間に妙な温度差がある気がする。


 出発の準備を整えて外に出ると、リビングの窓からはおはぎの後ろ姿が見えた。


 どっかりと猫用ベッドにもたれかかるおはぎの姿は一仕事を終えたサラリーマンのようだった。


 おはぎに対して妙な親近感を抱いた俺は窓から視線を外し、見なかったことにした。


 外に出ると、納屋の扉を開ける。


 そこには先日伐採したばかりの竹があった。


 茂さんの山で伐採したものの一部を持ち帰り、今回の竹細工に使用しようと保管したものだ。


 セラムと一緒に竹を担ぎ、軽トラックの荷台に載せる。


 荷台から竹が転がり落ちないようにシートをかけ、ロープで固定すると、俺たちは軽トラックに乗り込んだ。


 エンジンをかけて出発する。


 一本道を進むと、住宅街へと差し掛かる。


 住宅街すらも抜けると徐々に民家や人気がなくなっていき、竹の生えている山々が見えてくるようになってきた。


 やたらと道幅の広い道をぐるぐると駆け上がっていくと、山の麓にポツリと佇む建物があった。


「ここが竹細工の工房なのだな! 大きいな!」


 軽トラを駐車場に停めると、セラムが建物を見上げながら言った。


 建物の形状は工場や倉庫をそのまま改良したようなものだった。


 セメントと繊維を混ぜ合わせたもので、それを波の形に加圧成形された波形スレートが建材として使用されている。


 竹を加工し、保管するので耐久性、耐火性、遮音性に優れた造りを採用しているのだろう。


「とりあえず、中に入るぞ」


「うむ」


 会社の理念が記された石碑を流し見すると、俺とセラムは工房の中に足を踏み入れることにした。


 工房の入口は大きな白の二枚扉が設置されており、人が出入りできるように開いていた。


 顔を覗かせると工房の入口には大量の竹が掛けられていた。


「おお、竹がいっぱいだ」


「本当だな」


 そんな当たり前の台詞が出てしまうほどに工房に大量の竹が保管されていた。


 何百、何千もの竹が保管されている光景は中々に圧巻だ。


「おお、きたか! ジン!」


 保管されている竹を見上げていると、低い男性の声が響いた。


 視線を向けると、作務衣に身を包んだ大柄な男性がいた。


「……大林か?」


「ああ、そうだ! 久しぶりだな、ジン!」


 確かめるように声をかけると、作務衣に身を包んだ男性はこちらにやってきてニカリと笑った。


 どうやらこの作務衣の男が、我が旧友である大林丈一郎らしい。


「久しぶりだな」


「高校卒業して以来だから十一年ぶりくらいか?」


「ああ、それくらいだな」


 改めて確認すると、そんなにも長く疎遠になっていたんだな。


 疎遠になっていた期間を思い出すと、若干の気まずさが蘇る。


 互いに話したいことや聞きたいことは山ほどにある。


 だけど、久しぶりに会ったのでどんな風に話せばいいのかわからないだけだ。


 まずは今回の頼み事を引き受けてくれたことに礼を言うべきか? 久しぶりの再会を喜び、昔の思い出なんかを懐かしむべきか? それとも疎遠になっていた期間について謝るべきなのだろうか?


「ジン殿! 私もご友人に挨拶をしてもいいだろうか?」


 思い悩んでいると、セラムがちょんちょんと服の裾を引っ張りながら言ってくる。


「ああ、いいぞ」


 気を遣ってくれたのか天然なのかわかりづらいが、セラムの提案は渡りに船だったので頷く。


「はじめまして、私はセラフィムという。気軽にセラムと呼んでほしい」


「セラムさんだな。了解だ。俺は大林丈一郎だ。ジンとは同い年の友人で竹細工を営んでいる」


「オオバヤシジョーイチロー?」


「ジョウイチロウな」


「ジョーイチロー?」


 訂正するようにゆっくりと名前を教えてやるが、セラムには丈一郎という名前の発音が難しいようだ。少し間の抜けた発音になってしまう。


「ハハハ、大林でいいぞ」


「では、オオバヤシ殿とお呼びする!」


 外国人のような見た目もあってかセラムがしっかりと発音できなくても大林は特に気にすることはなかった。


「早速、竹細工を教えてもらってもいいか?」


「少し待ってくれ。もうすぐ他の体験者も来るはずだ」


 他の体験者? と訝しんだが、俺たちと同じような客がいてもおかしくはないな。


「こんにちはー!」


 工房内に保管されている竹を眺めながら待っていると、入口から明るい声が響いた。


「めぐるか?」


「あれ? ジンにセラムさん?」


「……久しぶり」


「どうしてお二人がここに!?」


「いや、それはこっちの台詞だ」


 ひょっこりと入口から顔を出したのはめぐる、アリス、ことりの三人組だった。


「今日は平日なのだろう? メグル殿たちは学校があるのではないのか?」


 夏休みであればともかく、今は九月の半ばだ。とっくにめぐるたちの学校は始まっているので平日のこんな昼間に外にいるのはおかしい。


「うん、だから学校の行事だよ。授業の職場体験」


 なるほど。職場体験ならコイツらがここにいるのもおかしくはない。


 後ろではカジュアルな衣服に身を包んだ教員らしき女性と大林が挨拶を交わしていた。


 正式に学校の行事としてやってきているらしい。


「職場体験?」


 セラムの世界ではそういう学習文化がなかったのか小首を傾げていた。


「生徒が職場で働くことを通じて、職業や仕事の実際について体験する学習活動だ」


「ほお、見習い騎士が騎士団の訓練に混ざるようなものか……」


 説明すると、セラムが感心したように小声で呟いた。


 なんか違うような気はするがニュアンスとしては間違っていないので、そのままの理解でいさせよう。


「……逆にジンとセラムはなんでここに?」


「私が竹細工に興味を示してだな! やってみたいと思ったんだ!」


「大林とは古い友人だからな」


「つまり、ジンがセラムさんのためにひと肌脱いだんだ?」


「……嫁思い」


「優しいですね!」


 経緯を説明すると、めぐるがニマニマとした笑みを浮かべ、アリス、ことりが生暖かい視線を向けてくる。


 こいつらはいつもいらんことばかりを言う。きっと近所にいる噂好きのおばちゃんたちの影響を受けているに違いない。


「すまん。ちょうど学校の職業体験があったから一緒にさせてもらった」


「まあ、俺たちだけで貴重な時間を貰うのは申し訳ないからな。構わないぞ」


 少人数に何度も教えるより、一度に纏めてしまった方が大林も楽だからな。


 忙しい中、わざわざ時間を作ってもらっているので文句を言ったりはしない。


 大林から事情の説明を受けると、傍らにいた先生らしき人が小走りで駆け寄ってきた。


「竹岡分校の時任と申します。本日はよろしくお願いします。できるだけ生徒には騒がせないようにいたしますので……」


 艶やかな茶色の髪を束ねて垂らしており、淡い色のブラウスを羽織っている。


 年齢は俺よりも少し下といった。


 外部の参加者である俺たちにかなり気を遣っている様子だ。


「朱里ちゃんは二学期になって東京からやってきた先生なんだ! 二人とも仲良くしてあげてね!」


 俺たちが挨拶を交わしていると、めぐるが時任先生の背中に抱き着きながら言う。


 朱里ちゃんというのは時任先生の下の名前だろう。


 こいつは学校の先生が相手でも馴れ馴れしいらしい。


「こら! 一ノ瀬さん! 知らない方にそんなに馴れ馴れしい口の利き方をしちゃダメですよ!」


「えー? でも、ジンたちは友達だよ?」


「と、友達?」


 時任先生が戸惑いの様子を見せる中、ことりとアリスが肯定するように頷く。


「めぐるたちとは普段からよく遊ぶ仲なので、そこまで気を遣ってもらわなくても結構ですよ」


「え? そ、そうだったのですね! 失礼いたしました!」


 まさか、偶然居合わせた外部の体験者が生徒と友人とは思わないだろうな。


 東京から赴任されて、面倒を見なきゃいけない生徒がこいつらだなんて先生も大変だ。



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こちら新作になります。よろしければ下記タイトルからどうぞ↓

『異世界ではじめるキャンピングカー生活~固有スキル【車両召喚】は有用でした~』

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