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11 ……──三日間。


 どこに消えた……? 


 まさか俺は……置き去りにされたのか……?


 置き去りにするべき俺が、置き去りに……?


 ──脳裏を過るのは最悪のシナリオ。



 いいや。ありえない。なぜならこのタイミングで俺を置き去りにしても面白くないからだ。


 あいつは純情を弄び至福を肥やす悪魔だ。

 そんな悪魔にとって、今はベストなタイミングとは言えない。


 俺には嫌ってほどわかる。お前を置き去りにするために、こんなところにまでついて来た俺にはな!


 なんせこの後には、ちゃぷちゃぷを控えている。

 散々匂わせるだけ匂わせて期待させまくっているのだから、俺のマヌケ面が見たくて仕方がないはずだ。


 もし仮に、置き去りブーメランを食らってしまうのであれば、それはちゃぷちゃぷの最中だ。


 だからここで、俺を置き去りにしてエンディングを迎えることなど、絶対にありえない──。


 と、なれば。

 どこに行ったんだ?


 とりあえず、電話してみるか。


 ……いやだめだ。ついさっき『くっつき虫』と馬鹿にされたばかりだろ。居なくなったからってすぐに連絡をしてしまっては、あいつをますます調子づかせることになる。


 ……ん。待てよ。まさか……! いや、もうそうとしか考えれない!


 くそっ。あの女、味を占めやがったな!


 これはわざとだ。きっと物陰から俺の動向を観察しているに違いない。

 頃合いを見計らって、適当になにか言い訳をつけて戻って来るんだ。そうして俺をまた『くっつき虫』に陥れようとしているんだ。


 あぁ、あんときのあいつは「いいよぉいいよぉ! もっと花純ちゃんにくっつきなさーい!」とか言って、すっげえ嬉しそうな顔をしていたからな。


 あぁ、そうだよ。あの悪魔ならこれくらいのこと、朝起きて洗面所で顔を洗うように、歯磨きをするように──朝飯前にやってみせる。良心の呵責もない悪魔なら、やれてしまうんだ……!


 くっ。ならば耐えるんだ。ここでおどけて、あたりをキョロキョロしたり、急いでトイレに逃げようものなら、あいつの思うツボだ。


 般若心経を唱え、明鏡止水へ──。雑念を取り払え!


 「んふぅ♡ やっ、激しっ。マー君……♡」

 「やれやれ。わがままな唇はさらに蓋をしてしまおうね」


 (般若心経般若心経般若心経般若心経般若心経)


 大丈夫。……大丈夫。


 「やっぱもう我慢できねえよ。あと何分待ちゃいいんだよ」

 「これ以上、駄々をこねるならさっきの話はなかったことにするよ?」


 雑念を取り払え。


 (般若心経般若心経般若心経般若心経般若心経)


 「ちっ。お前は本当にずるい女だな。こっちは今すぐ逆膝枕で半脱ぎパンストとパンティの間にサンドイッチしたいってのによ。ったく。イライラさせやがる」

 「……もぉ。怒らないの。……本当はサプライズにしたかったんだけど、仕方ないから教えてあげる♡ 実はね今履いているパンスト、三日間履きっぱなしなの♡」

 「……は? おいおい? まじかよ?! それまじで言ってるのかよ!! んなもん聞かされちまったら従うしかねえだろうが! お前の三日間を無駄にさせるわけにはいかねえだろうがよ!」


 

 ………………あかん。 




 もういい。花純にどう思われようと構わない!


 直ちにこの場所から、離脱する!





 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 心の中で般若心経を唱えながらスマートな足取りで向かう先。

 それはもちろん男子トイレ。男子にのみ立ち入ることが許された、男子だけの花園。


 愛ラブ無法地帯といえども、ここだけは法の下に守られる。らぶらぶちゅっちゅカップル絶対不可侵領域──安息の地。



 の、はずだった。





 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


 ──地獄を見た。


 この世の、終わりを見た──。


 「しっ。人が来たから静かに」

 「だって、そんなのぉ……無理ぃ♡」



 絶対不可侵領域さえも──。愛に侵されていたんだ。

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